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米国税法改正下院案「Tax Cuts and Jobs Act」(5)「輸入に対する20%ペナルティー課税(続き2)」

Max Hata
前回、前々回、20%ペナルティー課税(Excise Tax)を武器に外国法人にみなしPE課税申告させる下院法案に関して触れた。この下院案が発表された後、月曜日夜に歳入委員会の委員長であるKevin Bradyによるマークアップ(修正案)が提出され可決された。この中に20%ペナルティー課税にかかわる重要な変更があったので簡単にまとめておきたい。

まず一番大きな変更はみなしPE課税に基づく米国税負担を算定する際、オリジナル下院案では認められないとされていた外国税額控除が認められることになった点。これは大きい。ただし、この税額控除は特定支出に対する実際の外国税金を基に算定するのではなく、みなし費用同様に、International Financial Reporting Group (IFRG)全体の外国法人税の実効税率に基づいて計算する。具体的にはIFRGが米国外で認識する外国法人税額を基に財務諸表上の実効税率を算定し、その半分または税率20%のいずれか低い方をみなし外国税金として控除を認めるというもの。みなしPE課税時の米国税率は下院案だと20%なので、財務諸表上の外国税金実効税率が40%以上であれば、外国税額控除でみなしPE課税全額が相殺されることになる。仮に財務諸表上の外国税金実効税率が30%だと、その半分の15%が20%より低いので、15%相当の外国税額控除が認められ、結果としてみなしPE課税は20%から15%を差し引いて5%となる。

もうひとつ面白い変更は「みなし費用」に基づく費用控除額。以前のポスティングで触れた通り、みなしPE課税算定時には実際に特定支出に基づく費用計上は認められない。代わりにIFRGの連結財務諸表上の該当プロダクトラインの利子・税引前の利益率を基にみなし費用を算定すると規定されていた。今回の修正案では、みなし費用の算定時に、米国オペレーションは除外して算定するようになっている。書き方は複雑で、IFRGの米国以外の法人が非関連者および米国グループ法人との取引から認識する利益率を基にすることと規定されている。そもそもプロダクトライン毎のPLなんてないじゃん、っていうのは以前に触れた点だけど、更に外国と米国を分けたりとか実務的には対応が益々困難になっている感じ。

さらに、前述の方法で算定したみなし費用に「104%+短期AFR」を乗じて費用総額としてよろしいとなっている。趣旨としてはRoutine Returnには課税しないということなんだろうけど、現時点の短期AFRは1.27%だからみなし費用が5.27%増えることとなる。となるともしプロダクトラインの利益率が5%とかだとネットで赤字になってしまう?ネットで損失だと1120FでNOLが生まれ、新法に基づき永遠に繰越できて本当にPEとかからフローアップしてくる所得と相殺できたりするんだろうか?それともみなしPE課税は基本的に関連者間取引から発生している損失なので、認識は認められずNOLにはならないのだろうか?良く分からない感じ。

でもFTC認めたり、費用に5%上乗せしたりした結果、結局元は$150B以上あると言われていた歳入もほとんどなくなってしまうようだ。であればそこまでしてこんな変な税法を入れる理由も余りなくなるんではないだろうか?

この20%ペナルティー課税規定はInbound企業ばかりでなく米国多国籍企業を直撃するので反対意見も多く出てくるだろう。既に共和党内で大きな影響力を持つFreedom Caucusの支持団体の一つとなるKoch Brothersが当規定に反対表明している。下院での可決可能性はかなり怪しいと言わざるを得ない。

テクニカルにもみなしPE課税の算定の際にBranch Profits Taxをどうするのか不明だし、どのような迂回取引がAnti-Abuseに抵触するのかという判断も難しいだろう。現時点のグッドニュースとしては外国税額控除が認められることになれば仮に20%ペナルティー課税が法制化されたとしても実際に支払う米国税金の面からのコストは結構低くなりそう、という点だろう。

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