前回のポスティングでは、キラー通りとキラークイーンの話を中心に、じゃなくて、留保所得一括課税にかかわる外国税額控除を計算する際に対象となる外国法人税の金額に触れた。僕たちが長年、慣れ親しんできた「Tax Pool」という概念は今後は消滅するけど、留保所得一括課税は消滅直前の話しとなることから、1987年以降の外国法人税全額(Tax Pool)を出発点に、そこから留保所得のうち低税率適用を理由に課税対象となっていない部分、すなわちApplicable %を減額した外国法人税が対象税額となる。
で、若干順序は前後する感じもするけど、前回のポスティング「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(9) 留保所得一括課税」で、どの外国法人税を留保所得にかかわる外国法人税という位置づけとするのか、という肝心の点が法文および立法趣旨を見ても必ずしも明確なかった点に触れた。規則案では、この点に関して、まず、留保所得一括課税はSubpart F所得として合算課税されているので、従来のSubpart F規定に基づくみなし分配間接税額控除対象規定に基づき、課税対象留保所得に対応すると取り扱われるTax Pool、すなわち1987年以降の外国法人税Poolは対象としている。当然と言えばそれまでなんだけど、実際の配当に対する間接税額控除が税制改正により撤廃となる中、留保所得一括課税は廃案直前の課税年度に発生するため、ここは依然、旧法の規定で考えるという頭の体操が必要。「みなし」配当にかかわる間接税額控除規定は今後も残り、重要性を増すけど、実際の配当にかかわる間接税額控除撤廃の関係で、条文が再整理されてて、同じ内容の規定でも条文番号が異なったりしているので、留保所得一括課税の外国税額控除の規定は、旧法の条文番号を参照しないと正しく理解できないという実務的な面倒さが発生している。
Tax Pool系の外国法人税にかかわる確認事項として、規則案は、他の特定外国法人のマイナスで減額されたプラス留保所得に対応するTax Poolは外国税額控除の対象ではない、と明記している。また、Subpart F目的では別の一人の納税者扱いとなる米国パススルーが認識する外国法人税も、各パートナーに配賦されてパートナーが自己の外国法人税ポジションと合算して処理できるとしている。
更に、留保所得一括課税に基づき課税済みとなった所得を分配する際に徴収される外国の源泉税も留保所得にかかわる外国法人税と位置付けている。ここで言う課税済所得は、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(5) 留保所得一括課税」で触れた通り、他の特定外国法人のマイナスで減額された部分も含まれる。
源泉税にかかわるこの規定の意味するところは、特定外国法人側で留保所得一括課税に基づいて課税済所得となっている金額の分配に課される源泉税は、米国で外国税額控除の対象にはなるけど、元々、米国株主側で低税率で課税された所得を原資とするものなので、留保所得課税時に適用されたApplicable %分、減額して取り込まないといけないということ。
となると、今後は同じ課税済所得でも、どんな理由で課税済みになったのかっていうトラッキングが重要となる。Subpart F、GILTIに基づいて課税済所得になってるんだったら、分配時に別の考え方が適用されるし。更に、今後蓄積されるCFC側の「QBAI x 10%(マイナス特定の支払利息)」(GILTI合算上、Tested Incomeがプラスの場合)を原資とすると考えられる留保所得部分はGILTIからシェルターされる所得なので、そこの部分だけは課税済所得とならず、分配時には米国側で100%控除が取れる代わりに、外国税額控除も所得控除も一切認められない。この通常の配当(そんなものが存在すればだけど)との比較において、留保所得課税で課税済所得の分配に対して、限定的とは言え源泉税が外国税額控除の対象となるのは、ならないよりはベターとは言える。これら諸々のことから、CFC側の留保所得の内訳を常に整理しておかないと分配時の課税処理自体が不可能という従来では考えられない大惨事が想定される。まさにWhole New Word!
また、同じ課税済所得でもその発生理由でその後の取り扱いが異なるってことは、納税者側でトラッキングが必要となるだけでなく、分配の際に課税済所得のどの部分が分配されたとみなすのかっていう、課税済所得「内」に眠るサブセットカテゴリーの分配優先順位を規定してもらわないといけなくなる。これはおそらく、冬までに公表されるであろう課税済所得の規則案パッケージでカバーされるんだろう。ちなみに、以前にも触れたけど、課税済所得に関しては、従来のSubpart Fとの関係で、以前から規則案が公表されてて、現時点でも最終化されることなくそのままになっている。税制改正で課税済所得の在り方が根本から変わってしまったのだから、規則を大幅に見直す必要に迫られており、既存の規則案は大幅に加筆修正される形で、再プロポーズとなるだろう。
さらに、留保所得一括課税の対象となった所得を原資とする将来の分配は、外国税額控除システムが一新された後に起こるケースも多いので、そこの現行の扱いとの整合性も新しい条文下で手当しないといけない。さすがに財務省も疲れたのか、この部分は今後の規則策定パッケージで対応するとして、現時点では「Reserved」とのみ規定されている。
留保所得にかかわる外国法人税として考えられる、もう一つの追加のカテゴリーとして、特定外国法人が別の特定外国法人を保有する場合、下層に位置する特定外国法人が上層の特定外国法人に分配を行う際に課される源泉税がある。上層の特定外国法人が下層から受け取った分配を原資に、米国株主に分配する際、米国株主側では、当源泉税を留保所得に対応する外国法人税と取り扱うこととなる。これは、課税済所得が最終的に米国株主に分配されてくる際、過去にみなし分配に対応する外国法人税として加味されていない外国法人税となることからこうなる。この部分も、他のカテゴリー同様にApplicable %にかかわる減額後の金額を外国税額控除の対象となると規定されている。
実際に外国税額控除の計算をする際には、課税所得となる留保所得はみなし配当扱いし、従来からの間接税額控除規定を適用する。留保所得が個別の特別バスケットに属する訳ではないので、Look-throughを含む従来からの規定でバスケットを決め、後は米国株主側の費用配賦も従来通り適用した上で計算をすることになる。費用配賦時には、留保所得は低税率で課税されたとは言え、特定外国法人の株式の一部が非課税所得を生み出す資産と取り扱われることもない点、確認されている。
ということで何とか留保所得一括課税の外国税額控除に関して、大枠、最後に漕ぎつけることができた。今後、外国税額控除にかかわる別の規則案パッケージが秋に公表される際には、またその時点で明らかとされる考え方に触れてみたい。留保所得一括課税にかかわる規則案には、他にもNOLを使用しない選択法、一括課税にかかわる税金の8年間の分割払い、連結納税グループの扱い、等、限りなく細かい規定が記載されているが、興味深い主たるテクニカル面はカバーしたので、次回からはGILTIに関して、GILTI財務省規則案が出たタイミングで。
で、若干順序は前後する感じもするけど、前回のポスティング「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(9) 留保所得一括課税」で、どの外国法人税を留保所得にかかわる外国法人税という位置づけとするのか、という肝心の点が法文および立法趣旨を見ても必ずしも明確なかった点に触れた。規則案では、この点に関して、まず、留保所得一括課税はSubpart F所得として合算課税されているので、従来のSubpart F規定に基づくみなし分配間接税額控除対象規定に基づき、課税対象留保所得に対応すると取り扱われるTax Pool、すなわち1987年以降の外国法人税Poolは対象としている。当然と言えばそれまでなんだけど、実際の配当に対する間接税額控除が税制改正により撤廃となる中、留保所得一括課税は廃案直前の課税年度に発生するため、ここは依然、旧法の規定で考えるという頭の体操が必要。「みなし」配当にかかわる間接税額控除規定は今後も残り、重要性を増すけど、実際の配当にかかわる間接税額控除撤廃の関係で、条文が再整理されてて、同じ内容の規定でも条文番号が異なったりしているので、留保所得一括課税の外国税額控除の規定は、旧法の条文番号を参照しないと正しく理解できないという実務的な面倒さが発生している。
Tax Pool系の外国法人税にかかわる確認事項として、規則案は、他の特定外国法人のマイナスで減額されたプラス留保所得に対応するTax Poolは外国税額控除の対象ではない、と明記している。また、Subpart F目的では別の一人の納税者扱いとなる米国パススルーが認識する外国法人税も、各パートナーに配賦されてパートナーが自己の外国法人税ポジションと合算して処理できるとしている。
更に、留保所得一括課税に基づき課税済みとなった所得を分配する際に徴収される外国の源泉税も留保所得にかかわる外国法人税と位置付けている。ここで言う課税済所得は、「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(2) – 国際課税(5) 留保所得一括課税」で触れた通り、他の特定外国法人のマイナスで減額された部分も含まれる。
源泉税にかかわるこの規定の意味するところは、特定外国法人側で留保所得一括課税に基づいて課税済所得となっている金額の分配に課される源泉税は、米国で外国税額控除の対象にはなるけど、元々、米国株主側で低税率で課税された所得を原資とするものなので、留保所得課税時に適用されたApplicable %分、減額して取り込まないといけないということ。
となると、今後は同じ課税済所得でも、どんな理由で課税済みになったのかっていうトラッキングが重要となる。Subpart F、GILTIに基づいて課税済所得になってるんだったら、分配時に別の考え方が適用されるし。更に、今後蓄積されるCFC側の「QBAI x 10%(マイナス特定の支払利息)」(GILTI合算上、Tested Incomeがプラスの場合)を原資とすると考えられる留保所得部分はGILTIからシェルターされる所得なので、そこの部分だけは課税済所得とならず、分配時には米国側で100%控除が取れる代わりに、外国税額控除も所得控除も一切認められない。この通常の配当(そんなものが存在すればだけど)との比較において、留保所得課税で課税済所得の分配に対して、限定的とは言え源泉税が外国税額控除の対象となるのは、ならないよりはベターとは言える。これら諸々のことから、CFC側の留保所得の内訳を常に整理しておかないと分配時の課税処理自体が不可能という従来では考えられない大惨事が想定される。まさにWhole New Word!
また、同じ課税済所得でもその発生理由でその後の取り扱いが異なるってことは、納税者側でトラッキングが必要となるだけでなく、分配の際に課税済所得のどの部分が分配されたとみなすのかっていう、課税済所得「内」に眠るサブセットカテゴリーの分配優先順位を規定してもらわないといけなくなる。これはおそらく、冬までに公表されるであろう課税済所得の規則案パッケージでカバーされるんだろう。ちなみに、以前にも触れたけど、課税済所得に関しては、従来のSubpart Fとの関係で、以前から規則案が公表されてて、現時点でも最終化されることなくそのままになっている。税制改正で課税済所得の在り方が根本から変わってしまったのだから、規則を大幅に見直す必要に迫られており、既存の規則案は大幅に加筆修正される形で、再プロポーズとなるだろう。
さらに、留保所得一括課税の対象となった所得を原資とする将来の分配は、外国税額控除システムが一新された後に起こるケースも多いので、そこの現行の扱いとの整合性も新しい条文下で手当しないといけない。さすがに財務省も疲れたのか、この部分は今後の規則策定パッケージで対応するとして、現時点では「Reserved」とのみ規定されている。
留保所得にかかわる外国法人税として考えられる、もう一つの追加のカテゴリーとして、特定外国法人が別の特定外国法人を保有する場合、下層に位置する特定外国法人が上層の特定外国法人に分配を行う際に課される源泉税がある。上層の特定外国法人が下層から受け取った分配を原資に、米国株主に分配する際、米国株主側では、当源泉税を留保所得に対応する外国法人税と取り扱うこととなる。これは、課税済所得が最終的に米国株主に分配されてくる際、過去にみなし分配に対応する外国法人税として加味されていない外国法人税となることからこうなる。この部分も、他のカテゴリー同様にApplicable %にかかわる減額後の金額を外国税額控除の対象となると規定されている。
実際に外国税額控除の計算をする際には、課税所得となる留保所得はみなし配当扱いし、従来からの間接税額控除規定を適用する。留保所得が個別の特別バスケットに属する訳ではないので、Look-throughを含む従来からの規定でバスケットを決め、後は米国株主側の費用配賦も従来通り適用した上で計算をすることになる。費用配賦時には、留保所得は低税率で課税されたとは言え、特定外国法人の株式の一部が非課税所得を生み出す資産と取り扱われることもない点、確認されている。
ということで何とか留保所得一括課税の外国税額控除に関して、大枠、最後に漕ぎつけることができた。今後、外国税額控除にかかわる別の規則案パッケージが秋に公表される際には、またその時点で明らかとされる考え方に触れてみたい。留保所得一括課税にかかわる規則案には、他にもNOLを使用しない選択法、一括課税にかかわる税金の8年間の分割払い、連結納税グループの扱い、等、限りなく細かい規定が記載されているが、興味深い主たるテクニカル面はカバーしたので、次回からはGILTIに関して、GILTI財務省規則案が出たタイミングで。
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