メインコンテンツに移動

米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (6)

Max Hata
何とか今回でGILTIの最初の財務省規則案にかかわるポスティングを終わらせて、次の大型規則案に間に合わせることができそう。何と言っても、Section 163(j)の支払利息の損金算入制限にかかわる財務省規則案が今週にも公表されるのでは、と戦々恐々としていたんだけど、結局、東海岸は既に金曜日の夜。となると、規則案の公表は来週明けの感謝祭直前を急襲、というパターンなんだろうか。Section 163(j)って、ATIの30%を超える事業活動関連のネット支払利息は損金算入繰延っていう、一見、実に人畜無害な規定だけど、規則案は500ページにも及ぶと噂されている。しかも、パススルー主体のパートナーシップに、事業主体レベルで損金算入制限を適用するという前代未聞のEntityアプローチを採択していることから、この部分にかかわるガイダンスが複雑怪奇となることが想定されるけど、この部分はナンと後日、別のパッケージでカバーされると言われている。もし本当にパートナーシップに対する取り扱い抜きで、500ページに及んでるんだったら凄い。Section 163(j)は連結納税グループ単位で適用されることが前回のNoticeで明らかにされてるけど、その際、損金算入制限額、またその繰越額をどうやって個社への配賦するのか、連結納税グループに後から参加してくる法人が持ち込む繰越額に対してSRLY同様の制限が規定されるのか、損金制限に抵触する場合の連結納税グループ内株主側の子会社株式簿価をどうやって調整するか、連結納税グループ内に不動産事業、農業、公共ユーティリティとかSection 163(j)適用免除事業が存在する場合どのように取り扱いのか、とかが盛沢山に規定されてんのかもしれない。

まあ、未だ公表されてないSection 163(j)の規則案の内容を詮索して今から心配し始めるのも、Bar Examで開始と同時に全問目を通した結果、最後に方に「Evidence」の問題があるのを知って「ヤバい」ってドキドキして、最初の「Community Property」系の比較的簡単な問題までもミスしちゃう、みたいな間抜けな展開なんで、さっさとGILTIに戻りたいけど、Section 163(j)の関係では、実はGILTIの算定基となるCFC側のTested Income (Loss)を算定する際に、CFCにSection 163(j)の適用があるのかないのかっていう点は未だに不明。Section 163(j)の財務省規則案で触れられる可能性大なので、この点はGILTIにも影響大だ。

で、今回は、GILTI財務省規則案の特筆すべき規定の中で、過去のポスティングで未だ触れてない項目いくつかに関して。

米国株主側でGILTI合算額を算定する際、Tested Incomeを計上しているCFCの有形償却資産(QBAI)の簿価総額に10%を掛けるっていうステップがある点は以前の「米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(3) – GILTI (4)」触れてるけど、この「簿価」っていうのは、通常のMACRSより償却期間が長い定額法となる米国税法に規定される「Alternative Depreciation System (ADS)」っていう償却法で算定する必要がある。ADSは、E&P、その昔AMTのサブセットだったACE、主に国外で使用される資産、その他、非課税団体へのリース資産とか、特別な目的で登場してくるMACRSと比べて不利な償却法だ。また、NOLの使用タイミングその他の理由で、MACRSみたいな加速度償却を取りたくない場合には、納税者側の選択で通常の資産にもADSを適用することが認められる。

で、このADSを適用して、全CFCの簿価を算定することになるけど、そんな計算今までしたことないケースも多いだろう。その場合、財務省規則案は、個々の資産の取得時点に遡って正確な簿価算定をするよう規定している。大変な作業だ。しかも、この簿価は四半期毎の平均と規定されているので、四半期毎に各資産のADSベースの簿価を算定することが求められる。四半期毎の平均って言われて、Section 956を連想した人は米国クロスボーダー課税の青帯(?)だ。帯の色って世界中、または各道場や流派とかでどの程度似てるのか良く知らないけど、米国の空手道場、特に子供たちの部は、白と茶と黒だけではなく、茶に至るまでのステップが細分化されていて、子供たちが半年に一回、道場でテストを受けて昇格し易くできてる。モチベーションが高まるし、道場で昇格試験を受ける時は、毎月の「お月謝」に加え、「受験費用」が掛かるところが多いので、経営する側としても好ましいのかな、っていう側面もある。白、黄色、オレンジ、グリーン、青、とか道場によって順番が異なってたりパープルが入ってたりすることもあるみたいだけど、プログレスしていく。同じ色の中にもソリッド、すなわち一色の帯に加えて、黒の線が入ったストライプと呼ばれる格があり、同じ色であればストライプが入っている帯の方が格上となる。例えば「オレンジ・ストライプ」は、オレンジより上、グリーンより下、に位置する格付け、みたいな感じ。なんで、青帯は結構上位。

チョッと、QBAIの平均とSection 956の数字の取り方の整合性で脱線したけど、気を取り直して、QBAIの話しに戻ると、CFCが12月未満の短期課税年度となる場合、法文だけを読むと12カ月のフルの課税年度と同様に、QBAI全額に10%掛けるようにも読めるが、規則案では短期課税年度の場合には期間に準じて低減したQBAIを基にNet DTIRを算定するように、と釘を刺している。まあ、それはそうだよね。米国株主の変更に伴う課税年度適合要件などの理由で、CFCが3カ月の短期課税年度となる場合、米国株主は3カ月相当のTested Incomeだけを基に、Net Tested Income (Loss)を算定するんだから、そこから差し引くNet DTIR、すなわちみなしルーティン所得の算定を12か月ベースで行うのは算数的におかしい。

また、QBAIの算定をする際、CFCが持分を保有する米国外パートナーシップの有形償却資産は、まずパートナーシップ側でネット簿価を算定し、その額をCFCがパートナーシップの持分に準じて取り込むとされる。ただし、通常の規定通り、パートナーシップ所有の有形償却資産ネット簿価を取り込むことができるのは、あくまでプラスのTested Incomeを持つCFCのみとされる。ここはそんなこと明記しなくてもいいような気もしたんだけど、念のために明記したんだろうか。すなわち、仮にCFCが保有するパートナーシップから有形資産の残高を持分に準じて取り込んだとしても、CFC自体にTested Incomeがなければ、法文上、そこから米国株主にQBAIがフローアップしていくことはないはず。

で、いよいよGILTI規則案の話しも終盤に差し掛かり、「Getting very near the end」で「Sorry but it's time to go」となり、「Hope you have enjoyed the show」で「We'd like to thank you once again」って気持ちだけど(この辺の文言は何か分かるね?そう「Reprise」!)、最後に連結納税グループでの適用法。簡単に言うとGILTIは連結納税グループ単位で合算額を計算することになるけど、最終的には米国株主となる各法人にGILTI合算額を按分しているような考え方。このようなアプローチを、単純にGILTI合算額をグループ計算して、各法人に配賦って規定せずに、Tested Loss、有形償却資産ネット簿価(すなわちQBAI)、CFC支払利息および受取利息各項目はグループで一旦合算の上、各項目をTested Incomeを持つ法人にTested Incomeの比率で配賦して、その後、各法人がGILTIを算定というアプローチを規定している。実質的に連結納税グループでの合算ベースだけど、各法人のGILTI額が個別に決定されるため、連結納税規則に基づく子会社株式簿価の調整や、各法人が保有するCFCへのGILTIの再配賦などを同時に管理可能となる。よく考えてるよね。この部分はGILTIを規定しているSection 951A下の規則案ではなく、連結納税を規定している一連の規則に追加される形でSection 1.1502-51となる。

まだまだ、Anti-Abuse規定とか尽きないけど、週明けの500ページのSection 163(j)規則案に備えてこんなとこかな。GILTI関係では12月公表と言われるFTCパッケージで規定が期待される、Section 78のグロスアップや、従来からのLook-Through規定のバスケットの行き先がどうなるかって点は今から楽しみ。

コメントを追加

認証
半角の数字で画像に表示された番号を入力してください。