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FDII/GILTI控除財務省規則案

Max Hata
BEATに戻る!って宣言してから早一カ月。日本からの米国投資も引き続き盛んで、いろんな投資やM&A絡みの話しで24/7米国法人税と格闘しながらもそろそろBEATのポスティングでもと思い立った矢先、お雛祭りの興奮冷めやらぬ3月4日に財務省からGILTI控除とFDII控除の双方規定しているSection 250に係わる財務省規則案が公表された。今回は177ページ。最近は財務省規則が200ページ未満だと「なんだ結構短いじゃん」なんて勘違いするようになってしまった。慣れは恐ろしい。今回の財務省規則は、国外取引がどんな条件でFDIIになるかっていう議論に多くのページが割かれている。なんで、例えばFTCの規則案みたいに超テクニカルな話しではなく、どうやってカスタマーが販売した商品を米国外で使っているか、って証明するとかの話しが多く、反って読むのに苦労した。

Section 250はGILTIとFDII双方の控除を規定してる条文だけど、今回の規則案は基本的にFDIIの話しのみで構成されていると言っても過言ではない。唯一GILTI控除の話しが出てきてるのは、課税所得上限という制限枠の部分だけで後はFDII一色。それもそのはずで、GILTIに関しては既に2018年9月にGILTI課税の中心的な規定となる「GILTI合算」、また11月にはGILTIグローバルミニマム税率を13.125%とするためのキーとなる外国税額控除、に関して既に複雑かつ大量の規則草が公表されている。そんなことから今回規定されるGILTI控除はGILTIの世界ではマイナーな存在なので、規則案もそれに準じているだけの話し。決してGILTI全体が簡単ということではない。

で、Section 250はGILTI合算した金額およびGILTI外国税額控除目的でグロスアップする外国法人税に対する50%の所得控除、そして米国外への販売、ライセンス、役務提供から生じる超過所得であるFDIIに対する37.5%の所得控除を規定する条文。FDIIってForeign-Derived Intangilbe Incomeの略だけど、GILTI同様にIntangilbeの有無はその適用に問われない。GILTIがどう読んでも「ギルティ」以外に発音しようがない一方で、FDIIは当初どんな風に読むのかっていうコンセンサスが出遅れた感じ。フォディーとかって言い出す人もいたけど、いまではサウンドの心地よさから「フィディー」に落ち着いている。で、FDIIに対して37.5%の控除が認められるということは、実際には100の所得があっても62.5しか課税されないから、それに通常の法人税21%を掛けると、実効税率13.125%になるという仕組み。香港とかシンガポールレベルの迫力満点の税率だ。

GILTIはCFCの所得を毎期グローバル連結納税する規定で、FDIIは米国法人が国外から所得を得る際の恩典税率規定。一見、全く異なる2つの規定なだけに、なんでこの2つの控除を敢えて同じSection 250で規定しているんだろう、って不思議に思う人も多いと思う。っていうかそんなに深く考えてない人の方が圧倒的に多いとは思うけど。GILTI合算課税そのものはクロスボーダー系の条文が集まっている辺りのSection 951Aで規定されていて、50%の控除部分のみがFDIIの37.5%と同じ条文に収まっている。これには恐ろしい(?)訳がある。実はFDIIとGILTIは表裏一体の関係にあるからだ。

FDIIは37.5%の控除を認めることで国外販売から派生する米国法人の所得を実効税率13.125%で課税する。GILTIはCFCが国外で認識する所得に50%の控除を認めることで10.5%で課税するけど、CFCが所在国で同じ所得に対して支払う外国法人税は80%まで税額控除が認められる。ということは80%掛けて10.5%になるレベルの外国法人税、すなわち13.125%をCFCが支払っていれば「理論的」には米国側ではそれ以上持ち出しの法人税は発生しないことになる。なぜ「理論的」だけの話しかと言うと、「実際」には米国株主側のGILTI所得に対する費用配賦で、税額控除の枠にリミットが掛かり、10.5がきれいに消えないからで、この問題は以前のポスティングで散々触れている。

すなわち理論的にはGILTIは、CFCが認識する所得にグローバルミニマム税として13.125%の法人税を支払ってればよろしい、という仕組み。これは国外販売等から生じる所得を米国法人に実効税率13.125%で課税するFDIIのミラーイメージだ。OECDとかが「FDIIは不法な輸出助成金でけしからん!」というようなクレームを付けてくる場合には、「米国法人が国外から得る所得もCFCが得る所得もどちらも13.125%をミニマム税としてます」と言ってディフェンスするためだ。

このことから、GILTIとFDIIはセットだと言うことが分かる。昨今の変なノリで、各国がグローバルミニマム税を導入しようとする勢いにのって、まさか日本もGILTI日本版すなわちJILTI(ジルティー!)を導入なんてことはないとは思うけど、でもそれするんだったらシスター規定のFDIIも入れないとおかしい。日本版FDIIのJDII(ジディー!)。

って、チョッと規則案とは関係なくなってきたけど、次回はSection 250規則案の規定そのものについて。
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