前回はSection 385の不遇というかちょっと可哀想な歴史に触れた。オリジナルAbbey Roadが発売された1969年に制定されたSection 385に基づき、1980年にようやく公表された(旧)財務省規則。その11年の間にThe Beatlesは解散し、度々の再結成の噂も結局実現せず、John LennonはNYCのDakota Apartmentsの前で撃たれてしまった。ちなみにDakota Apartments(正確にはあそこの法的所有形態はCo-Op)の「Dakota」って名称だけど、その昔はマンハッタンでもDakotaのある72ndとかは最初の頃人が住んでいたLower Manhattan、今でいうFinancial District、から馬車で遠かったので、まるでDakotaのよう、という意味だったとか。あんなメインでCentral Parkに隣接している一等地がね。1980年と言えば、一方のPaul McCartneyは1月にWingsで来日したんだけど、ナンと成田空港の税関でマリワナ不法所持で逮捕され、The Beatles以来となるはずだった武道館コンサートが全てキャンセルと言う信じられない展開もあったね。全日のアリーナのチケットを持っていて大ショックだった件は以前のポスティングで触れたからもう書かないけど、あの逮捕劇はどうも、John LennonとYokoが日本で定宿としていたホテル・オークラをPaul McCartneyも使用すると知ってそれを良く思わなかったYokoが、Paulの来日前に日本政府に何か連絡をしたとかしないとか、みたいな複雑な裏話をたまたまロンドンで買ったJohn Lennonに若干批判的な伝記(?)のどこかのページで読んだ記憶がある。本を買ったMayflowerの辺の景色とか雰囲気は良く覚えてるんだけど、その話しが書いてあったページが今では探せず仕舞いで、まさか夢じゃないよね。まあ、The BeatlesもLet It Beの頃はいろいろあったみたいだからね。そんな状況でも最後にAbbey Roadみたいな完成度の高いアルバムを残せるっていうは凄い。Abbey Roadの50周年記念盤となるSuper Deluxe Editionに「The Ballad of John and Yoko」のOut-trackが収録されてて、あの曲はJohn LennonとPaul McCartneyの2人だけで録音した曲として昔から有名だけど、ドラムセットにいるPaulのことをJohnが「Ringo」って呼んでたり、それを受けてPaulがJohnを「George」って呼んでたり、和気あいあいな感じでとても最後な感じはしないけどね。あと2~3枚The Beatlesとしてアルバムを残してくれてたら、その後のソロアルバムの質から考えても相当良かっただろうにね。
で、The Beatlesが完成度の高いAbbey Roadを録音して解散してしまった一方、財務省規則の完成度はイマイチで、結局1983年に完全撤回。50周年記念のSuper Deluxe Editionとして(?)2016年の新規則を公表するも、こちらの完成度もかなりイマイチ。というか、債権が実態としてDebtなのかEquityなのか、というSection 385の本来の目的・ポリシーには一切触れず、正当にDebtと区分された債権をBase Erosion対策という別のポリシーに基づき、無理やりEquityにみなすという、どっちかっていうと旧Section 163(j)のEarnings Stripping規定に近い目的の全く別の代物に生まれ変わって登場した。Abbey Roadの50周年記念って言われて聴いてみたら、中身はYellow Submarineでした、みたいな状況だ(?)。
さらに規則の適用が実務的に不可能に近い面倒な内容になっていた。まるで「GILTI」をチョッと真似てるけど、ポリシー的に全然別物でシンプルにしようとして逆に複雑な規定になっているOECDのピラー2みたい(?)。ピラー2のConsultation Paperも公表されたので、この点は次のポスティングで触れないとね。
そんな2016年財務省規則のコアと言える規定が「Funding規定」。Funding規定が何をしようとしているのか、を理解するのにはLeveraged Distributionの話しから入るのがベスト。外国から米国に投資する際に、2016年当時の米国みたいに法人税率が高い国のOperationは可能な限りDebt Financeするべきっていうのは算数的に当たり前過ぎる初歩的な話しだけど、設立当時に間違えて、または余り深く考えずに(?)Equityを手厚くしてしまったとか、米国での業績が好調でEquityが大きくなってしまったり、とかの状況で、後から米国にDebt Pushdownする手っ取り早い手法がLeveraged Distribution。要は現金でなく親会社を債権者とする「Note(日本語だとチョッと変だけど手形?)」を分配することで、米国グループの資産を増額させることなく負債を増額させる(Equityを減額させる)取引だ。
Leveraged Distributionに最適な環境と言うのは、親会社の所在地で配当課税されず、配当に対する米国側の源泉税が条約で免除されているケース。え~もしかしてそれって日本のこと?って思った人が居たら、その通り。2009年の日本のテリトリアル課税化に伴い、日本も立派に米国からのLeveraged Distributionに好環境を提供してくれる国のひとつに仲間入りした。ただ、日本側の法人税率が米国の35%より低かったとは言え、他のOECD諸国の20%前半に比べるとチョッと高めで、Leveraged Distributionの経済効果は見劣りしてたけど。Leveraged DistributionやDebt Pushdown、更にDomestic Reverse Hybridの利用は、テリトリアル課税に移行した他国から米国への投資局面では教科書的なプラニングだったっだけど、2009年にテリトリアル課税に移行した後も、日本企業には全くCatch-onしなかった。なのにBEPSだとかピラー2だとか、Base Erosion対策のコンプライアンスばかり増えてチョッと気の毒。他国からの投資と日本企業の投資全てにアドバイスしたりして対応している米国Firmでの肌感覚から言って、日本企業の実直さというかBase Erosionに対する無頓着さと、他国からの米国投資および特に米国企業のシリアスさの差異はみんなが日本で思っている以上に激しいからね。
で、2016年の財務省規則では、Leveraged Distributionを行うために交付されるNoteは、仮に判例ベースのDebt/Equity Classification的にNoteが正当な借入と認められるとしても、「使用目的」が良くないのでEquityにすると規定していた。それまではLeveraged Distributionは認められていて、合法的だったので180度の転換。更にLeveraged Distributionと同様の効果を持ち得る取引として、米国グループ内の資産取得型適格組織再編、グループ内の株式移管をNoteを対価として実行するケースが挙げられており、これら計3つの取引が「邪な」取引として特定され、その対価として交付されるNoteは税務上は問答無用にEquityにすると断じていた。
更に、対価そのものはNoteでなくちゃんと現金で行ってても、資金をグループ内借入で調達すれば実質同じような効果が達成できる。極端な例で言えば、分配は普通に現金で行うけど、その資金を親会社または米国外関連会社から借り入れているようなケースではLeveraged Distributionと同じ結果を達成できる。Debt/Equity Classificationとは別のCommon Lawで、現金が同一プラン下で巡回するケースではCircular Flowといって、現金の動きはなかったものとして課税関係を検討する原則が存在するが、この手のプラニングを実行する者は、借入と分配は法的に同じプランではないと主張が通り得るようにするのが普通だろう。
そこで登場するのが「Funding規定」。Funding規定はその名の通り、3つの邪な取引をFundingしていると考えられる関連者借入は自動的にEquityにするというもの。ただ、お金には色がないことから、借入が邪な取引の原資となっているのか、すなわちFundingしているのか、って言う点をFacts and circumstancesで判断としてしまうと不確実性が高まると同時に、周到な事実関係を慎重に整える大手会計事務所や法律事務所が付いている大手企業にはIRSも分が悪い。そこで面倒な実態に基づく事実認定を一切不要とするため、2016年最終規則では、3つの邪な取引が実行された時点の前後3年、足掛け6年という長期間内に関連者間借入が存在している場合、特定の除外規定を充足しない限り、納税者の意図にかかわらず、邪な取引は関連者間借入を資金源としているという「反証不可能なみなし事実認定」を規定してしまった。かなり思い切りがいい。最終便でも何の躊躇もなくキャンセルする米国のエアラインのようなバッサリぶりだ。邪な取引って言っても分配とかも含まれる訳だから、常に取引の前後3年、計6年という長期間に亘り借入があるか、除外要件を充足しているか、一旦Equityにみなされる借入の返済や利払い時の取り扱いとか、そんなモニターどうやってするの~?という刺激的な規則だった。
2017年にトランプ新政権となり、オバマ時代の過剰規制から一転して規制緩和に。なんか長くなってきたのでここからは次回。
で、The Beatlesが完成度の高いAbbey Roadを録音して解散してしまった一方、財務省規則の完成度はイマイチで、結局1983年に完全撤回。50周年記念のSuper Deluxe Editionとして(?)2016年の新規則を公表するも、こちらの完成度もかなりイマイチ。というか、債権が実態としてDebtなのかEquityなのか、というSection 385の本来の目的・ポリシーには一切触れず、正当にDebtと区分された債権をBase Erosion対策という別のポリシーに基づき、無理やりEquityにみなすという、どっちかっていうと旧Section 163(j)のEarnings Stripping規定に近い目的の全く別の代物に生まれ変わって登場した。Abbey Roadの50周年記念って言われて聴いてみたら、中身はYellow Submarineでした、みたいな状況だ(?)。
さらに規則の適用が実務的に不可能に近い面倒な内容になっていた。まるで「GILTI」をチョッと真似てるけど、ポリシー的に全然別物でシンプルにしようとして逆に複雑な規定になっているOECDのピラー2みたい(?)。ピラー2のConsultation Paperも公表されたので、この点は次のポスティングで触れないとね。
そんな2016年財務省規則のコアと言える規定が「Funding規定」。Funding規定が何をしようとしているのか、を理解するのにはLeveraged Distributionの話しから入るのがベスト。外国から米国に投資する際に、2016年当時の米国みたいに法人税率が高い国のOperationは可能な限りDebt Financeするべきっていうのは算数的に当たり前過ぎる初歩的な話しだけど、設立当時に間違えて、または余り深く考えずに(?)Equityを手厚くしてしまったとか、米国での業績が好調でEquityが大きくなってしまったり、とかの状況で、後から米国にDebt Pushdownする手っ取り早い手法がLeveraged Distribution。要は現金でなく親会社を債権者とする「Note(日本語だとチョッと変だけど手形?)」を分配することで、米国グループの資産を増額させることなく負債を増額させる(Equityを減額させる)取引だ。
Leveraged Distributionに最適な環境と言うのは、親会社の所在地で配当課税されず、配当に対する米国側の源泉税が条約で免除されているケース。え~もしかしてそれって日本のこと?って思った人が居たら、その通り。2009年の日本のテリトリアル課税化に伴い、日本も立派に米国からのLeveraged Distributionに好環境を提供してくれる国のひとつに仲間入りした。ただ、日本側の法人税率が米国の35%より低かったとは言え、他のOECD諸国の20%前半に比べるとチョッと高めで、Leveraged Distributionの経済効果は見劣りしてたけど。Leveraged DistributionやDebt Pushdown、更にDomestic Reverse Hybridの利用は、テリトリアル課税に移行した他国から米国への投資局面では教科書的なプラニングだったっだけど、2009年にテリトリアル課税に移行した後も、日本企業には全くCatch-onしなかった。なのにBEPSだとかピラー2だとか、Base Erosion対策のコンプライアンスばかり増えてチョッと気の毒。他国からの投資と日本企業の投資全てにアドバイスしたりして対応している米国Firmでの肌感覚から言って、日本企業の実直さというかBase Erosionに対する無頓着さと、他国からの米国投資および特に米国企業のシリアスさの差異はみんなが日本で思っている以上に激しいからね。
で、2016年の財務省規則では、Leveraged Distributionを行うために交付されるNoteは、仮に判例ベースのDebt/Equity Classification的にNoteが正当な借入と認められるとしても、「使用目的」が良くないのでEquityにすると規定していた。それまではLeveraged Distributionは認められていて、合法的だったので180度の転換。更にLeveraged Distributionと同様の効果を持ち得る取引として、米国グループ内の資産取得型適格組織再編、グループ内の株式移管をNoteを対価として実行するケースが挙げられており、これら計3つの取引が「邪な」取引として特定され、その対価として交付されるNoteは税務上は問答無用にEquityにすると断じていた。
更に、対価そのものはNoteでなくちゃんと現金で行ってても、資金をグループ内借入で調達すれば実質同じような効果が達成できる。極端な例で言えば、分配は普通に現金で行うけど、その資金を親会社または米国外関連会社から借り入れているようなケースではLeveraged Distributionと同じ結果を達成できる。Debt/Equity Classificationとは別のCommon Lawで、現金が同一プラン下で巡回するケースではCircular Flowといって、現金の動きはなかったものとして課税関係を検討する原則が存在するが、この手のプラニングを実行する者は、借入と分配は法的に同じプランではないと主張が通り得るようにするのが普通だろう。
そこで登場するのが「Funding規定」。Funding規定はその名の通り、3つの邪な取引をFundingしていると考えられる関連者借入は自動的にEquityにするというもの。ただ、お金には色がないことから、借入が邪な取引の原資となっているのか、すなわちFundingしているのか、って言う点をFacts and circumstancesで判断としてしまうと不確実性が高まると同時に、周到な事実関係を慎重に整える大手会計事務所や法律事務所が付いている大手企業にはIRSも分が悪い。そこで面倒な実態に基づく事実認定を一切不要とするため、2016年最終規則では、3つの邪な取引が実行された時点の前後3年、足掛け6年という長期間内に関連者間借入が存在している場合、特定の除外規定を充足しない限り、納税者の意図にかかわらず、邪な取引は関連者間借入を資金源としているという「反証不可能なみなし事実認定」を規定してしまった。かなり思い切りがいい。最終便でも何の躊躇もなくキャンセルする米国のエアラインのようなバッサリぶりだ。邪な取引って言っても分配とかも含まれる訳だから、常に取引の前後3年、計6年という長期間に亘り借入があるか、除外要件を充足しているか、一旦Equityにみなされる借入の返済や利払い時の取り扱いとか、そんなモニターどうやってするの~?という刺激的な規則だった。
2017年にトランプ新政権となり、オバマ時代の過剰規制から一転して規制緩和に。なんか長くなってきたのでここからは次回。
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