西海岸、ボストン、東京と新年早々飛び回らざるを得ないはめとなり、チョッと(大分?)遅くなってしまったけど、新年明けましておめでとうございます。2020年。日本はいよいよオリンピック。米国は選挙の年だけど、米国議会はImpeachmentとIranの2つの「I」で相変わらず混沌とした状態のまま一年をキックオフしている。今は2つの「I」かもしれないけど、今から大統領選挙の11月までには、Fake Newsも含めて毎日いろんなことがありそうだから、どんな凄い事件や争点が勃発してくるのでしょうか。
で、広範な政局の話は尽きなさ過ぎるのでさておき、国際課税に関しても2020年と年の数は変わっても引き続き考えることは山積み。2017年の税制改正(「TCJA」)絡みでは、支払利息の損金算入制限を規定しているSection 163(j)やAnti-HybridのSection 267にかかわる最終規則が近々に公開されるはずだし。Section 163(j)に関しては規則案でMNCを落胆させたCFCへの適用を一転して見送ってくれるのではないか、という期待が高い。GILTIの規則案で、米国パートナーシップの取り扱いを、概念的には立派だけど実務的な対応が困難だったハイブリッドから最終規則ではPureなAggregateに簡素化してくれてウェルカムだったように、今回もSection 163(j)のCFC適用見送りの逆転ホームランがあるのではと楽観する向きがある。財務省やIRS重鎮の最近のコメントから可能性は結構あるかもね。
それにしても2年前にTCJAが可決された当時は、皆どちらかと言うと無邪気に、米国もようやくテリトリアル課税の仲間入りを果たし、ただ、その際に過度のBase Erosion が懸念されるので、その取り締まり目的でBEATやGILTIでバックストップしているという印象を受けたものだ。可決後間もなく、実はそれはとんでもない誤解で、むしろ逆に、TCJA後の米国国際課税システムは、GILTIによりDeferralなしのグローバル・パススルーというか、グローバル疑似連結納税という恐ろしい制度が基本で、肝心のテリトリアル課税が適用される海外のEarnings(「E&P」)は限りなくゼロに近いブルーという現実にハッとしてグッと来なくて、GoodではなくBadとなった(古~)。一方でFDIIも同時に導入され、海外向けの事業所得や、IPをライセンスして受け取るロイヤルティを米国で受け取っても、理論的にはGILTI後のCFC合算課税と結局同じという税環境を演出し、米国と外国間でいわゆる「Level Playing Field」を達成している。GILTI側のみに注目する傾向にあるグローバル・タックス・コミュニティは、GILTIとFDIIが対でワークする点、またFDIIは米国を有利にしている訳ではないという点、2つを中々直感的に理解できていない気がする。このようなパラダイムシフトこそ、TCJA後の米国における国際課税システムのNew Normとなる。
ということで、今回のポスティングでは、テリトリアル課税の対象が縮小一途な点に触れて新年の挨拶(?)としたい。
米国のテリトリアル課税は、配当をいきなり非課税とするのではなく、実質同じだけど、配当は一旦全額所得として認識した後、一定要件下で100%配当所得控除(「DRD」)を認めることで達成される仕組みになっている。具体的には、米国法人が10%以上の持分を所有する外国法人、Specified 10-percent Owned Foreign Corporation、から海外源泉のE&Pを原資とする「配当」を受け取る際、12カ月の保有期間を充たせば当配当全額がDRD対象となる。DRDにはGILTIやFDII控除と異なり課税所得制限はない。12カ月の保有期間は配当権利落ち日の前でも後でも充足可能。配当後に12カ月株式を保有していれば要件を充足できるっていうのはチョッと面白いけど、場合によっては申告時点で、まだ要件の充足が確定していない状況もあり得る。また、この12カ月保有期間は、ただ保有しているだけではなく「10%株主」の立場で保有している必要がある。12カ月保有要件だけでも、Section 1248 との関係とか相当面白いポスティングになるんで書きたいことはやまやま。でも実務的には大概においてこの条件で悩むことはないかな。
例外は米国パートナーシップが外国法人の株式を保有しているケースで、その場合は誰の保有期間を見て、誰が米国株主じゃないといけないのか、とかパートナーシップをAggregateとするかEntityとするか、というお馴染みの難しい判断が求められる。従来のSub Fオンリー時代から、クロスボーダー課税における米国パートナーシップの取り扱いは鬼門だったし、CFCブロッカーみたいなイノベーティブな(?)使用法が編み出されたりしてたけど、それでもTCJA前はなんだかんだ言ってもSub Fという限られた世界の話しだったので、外国と米国パートナーシップというかなり恣意的な形態の差異で取り扱いがここまで異なるっていう法律の趣旨が良く分かんないけど、適用が限定的だからまぁいっか、みたいな世界だった。GILTIやDRDが導入された今日、概念的には同じ検討事項だけどそのStakeが著しくハイになってしまい、これ以上の放置は認められない。そんな待ったなしの状況を背景に、Sub Fにもとうとう米国パートナーシップAggregate規定が提案されているので、その辺の話しはいずれまた。
で、DRDに戻るけど、DRDの対象となる海外源泉配当に関しては、その代償に直接・間接FTCも、源泉税にかかわる外国税金の費用控除も認められない。また、配当支払い側で控除を含む税メリットを享受できるような配当は、Hybrid配当としてDRDもFTCも双方否認される。
そんなに変わった制度じゃないじゃん、って思うかもしれないけど、実はDRDの対象が米国税務上、配当と取り扱われる金額に限定されている点に大きな落とし穴がある。TCJA導入時のTransition Tax、またそれ以降のGILTIの世界では税務上「配当」と取り扱われる金額がCFCから分配されるケースは存在しないからだ。って言うとチョッと大げさかもしれないけど、存在し難いのは確か。しかも、「やった~、配当原資となりそうなE&P見つけたぜ」って偉業を成し遂げたつもりが、最近の財務省の規則で次々と適用が禁止されたりして、今では絶滅寸前。まるで、Endangered Species、すなわち絶滅危惧種に指定された生物種のよう。しかもCE+ENレベル。本当の生物種と異なり、保全活動のしようもないし。
で、なぜそこまで希少なものか、という点は次回。
で、広範な政局の話は尽きなさ過ぎるのでさておき、国際課税に関しても2020年と年の数は変わっても引き続き考えることは山積み。2017年の税制改正(「TCJA」)絡みでは、支払利息の損金算入制限を規定しているSection 163(j)やAnti-HybridのSection 267にかかわる最終規則が近々に公開されるはずだし。Section 163(j)に関しては規則案でMNCを落胆させたCFCへの適用を一転して見送ってくれるのではないか、という期待が高い。GILTIの規則案で、米国パートナーシップの取り扱いを、概念的には立派だけど実務的な対応が困難だったハイブリッドから最終規則ではPureなAggregateに簡素化してくれてウェルカムだったように、今回もSection 163(j)のCFC適用見送りの逆転ホームランがあるのではと楽観する向きがある。財務省やIRS重鎮の最近のコメントから可能性は結構あるかもね。
それにしても2年前にTCJAが可決された当時は、皆どちらかと言うと無邪気に、米国もようやくテリトリアル課税の仲間入りを果たし、ただ、その際に過度のBase Erosion が懸念されるので、その取り締まり目的でBEATやGILTIでバックストップしているという印象を受けたものだ。可決後間もなく、実はそれはとんでもない誤解で、むしろ逆に、TCJA後の米国国際課税システムは、GILTIによりDeferralなしのグローバル・パススルーというか、グローバル疑似連結納税という恐ろしい制度が基本で、肝心のテリトリアル課税が適用される海外のEarnings(「E&P」)は限りなくゼロに近いブルーという現実にハッとしてグッと来なくて、GoodではなくBadとなった(古~)。一方でFDIIも同時に導入され、海外向けの事業所得や、IPをライセンスして受け取るロイヤルティを米国で受け取っても、理論的にはGILTI後のCFC合算課税と結局同じという税環境を演出し、米国と外国間でいわゆる「Level Playing Field」を達成している。GILTI側のみに注目する傾向にあるグローバル・タックス・コミュニティは、GILTIとFDIIが対でワークする点、またFDIIは米国を有利にしている訳ではないという点、2つを中々直感的に理解できていない気がする。このようなパラダイムシフトこそ、TCJA後の米国における国際課税システムのNew Normとなる。
ということで、今回のポスティングでは、テリトリアル課税の対象が縮小一途な点に触れて新年の挨拶(?)としたい。
米国のテリトリアル課税は、配当をいきなり非課税とするのではなく、実質同じだけど、配当は一旦全額所得として認識した後、一定要件下で100%配当所得控除(「DRD」)を認めることで達成される仕組みになっている。具体的には、米国法人が10%以上の持分を所有する外国法人、Specified 10-percent Owned Foreign Corporation、から海外源泉のE&Pを原資とする「配当」を受け取る際、12カ月の保有期間を充たせば当配当全額がDRD対象となる。DRDにはGILTIやFDII控除と異なり課税所得制限はない。12カ月の保有期間は配当権利落ち日の前でも後でも充足可能。配当後に12カ月株式を保有していれば要件を充足できるっていうのはチョッと面白いけど、場合によっては申告時点で、まだ要件の充足が確定していない状況もあり得る。また、この12カ月保有期間は、ただ保有しているだけではなく「10%株主」の立場で保有している必要がある。12カ月保有要件だけでも、Section 1248 との関係とか相当面白いポスティングになるんで書きたいことはやまやま。でも実務的には大概においてこの条件で悩むことはないかな。
例外は米国パートナーシップが外国法人の株式を保有しているケースで、その場合は誰の保有期間を見て、誰が米国株主じゃないといけないのか、とかパートナーシップをAggregateとするかEntityとするか、というお馴染みの難しい判断が求められる。従来のSub Fオンリー時代から、クロスボーダー課税における米国パートナーシップの取り扱いは鬼門だったし、CFCブロッカーみたいなイノベーティブな(?)使用法が編み出されたりしてたけど、それでもTCJA前はなんだかんだ言ってもSub Fという限られた世界の話しだったので、外国と米国パートナーシップというかなり恣意的な形態の差異で取り扱いがここまで異なるっていう法律の趣旨が良く分かんないけど、適用が限定的だからまぁいっか、みたいな世界だった。GILTIやDRDが導入された今日、概念的には同じ検討事項だけどそのStakeが著しくハイになってしまい、これ以上の放置は認められない。そんな待ったなしの状況を背景に、Sub Fにもとうとう米国パートナーシップAggregate規定が提案されているので、その辺の話しはいずれまた。
で、DRDに戻るけど、DRDの対象となる海外源泉配当に関しては、その代償に直接・間接FTCも、源泉税にかかわる外国税金の費用控除も認められない。また、配当支払い側で控除を含む税メリットを享受できるような配当は、Hybrid配当としてDRDもFTCも双方否認される。
そんなに変わった制度じゃないじゃん、って思うかもしれないけど、実はDRDの対象が米国税務上、配当と取り扱われる金額に限定されている点に大きな落とし穴がある。TCJA導入時のTransition Tax、またそれ以降のGILTIの世界では税務上「配当」と取り扱われる金額がCFCから分配されるケースは存在しないからだ。って言うとチョッと大げさかもしれないけど、存在し難いのは確か。しかも、「やった~、配当原資となりそうなE&P見つけたぜ」って偉業を成し遂げたつもりが、最近の財務省の規則で次々と適用が禁止されたりして、今では絶滅寸前。まるで、Endangered Species、すなわち絶滅危惧種に指定された生物種のよう。しかもCE+ENレベル。本当の生物種と異なり、保全活動のしようもないし。
で、なぜそこまで希少なものか、という点は次回。
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