米国の大概の州で強制されていたロックダウンも一カ月半を超え、その間、多くの米国市民が、自由を奪われるとどんなことになってしまうのか、っていう怖さを垣間見て、日ごろ当たり前のように享受してきた自由やさまざまな経済活動の恩典、の有難さを再認識してることだろう。個人の自由は米国憲法で保障されていて、米国では当たり前の権利のように勘違いしがちだけど、実は日頃から大切にし、感謝し、市民個々の努力で守っていかないといけないPriviledgeだということ。
SBAローンにしても、IRSの給付金手当にしても、最後は人間が規則を決めて司る訳で、$3Tのお金をこれだけ無理やり短期間に拠出し、管理しようとすれば、予期せぬ不具合、Glitch、がいろいろと起こるのは不可避。IRSだって、自分たちもロックダウンしてる最中に、大慌てで給付金を銀行に振り込んだり、小切手を発行したりしている。当然その過程ではいろんなGlitchが発生することになる。既に亡くなっている方の口座に入金されたり、逆に待っててもなかなか来なかったり、金額が予想と違ったり、公的年金受給者が扶養家族をオンラインで登録する時間が短すぎたり、とかいろんな不具合をメディアが報道している。
IRSや財務省は、彼らの手元に存在する情報、既存のシステム(相当古そう・・)を使って最大限の努力に基づき、半狂乱というか我を忘れて給付金を交付しているって言ってもいいような状況じゃないかな。給付金の受給者を正確に特定した後に交付するシステムを構築しないといけないんだったら、交付までに長い時間が掛かる。年間換算でQ2のGDPは下手したら40%ダウン、失業保険申請者はわずか4~5週間で3千万人と言われている現状、何をするにしても完璧な対策はない訳だから、バランスのいい施策をスピーディーに展開するしかない。
どんな策を取っても反対派はいて、今の米国におけるイデオロギー的な二極化を考えると、結局は何をしても約半数の反対意見があると想定され、そんな中での意思決定は、医学、科学、経済、有権者の意見は当然よく聞くとしても、最後はリーダーがそれらを総合的に検討した上で最終決定して、Move Onするしかない。全会一致の決定にはなり得ないので、リーダーとして、なぜそのような施策を取ったのか明確に説明し、異論がある場合には法の支配下で、市民が議論すればいい。ヘルスケアの受け入れ体制がとりあえず確保されたと言われている今、次なる課題は経済活動の再始動に移りつつあるけど、今後の施策にも思わぬリスクやGlitchは必ず存在する、っていう不可避の前提をリーダーが認め、市民も受け入れる必要がある。でないと何もできないので。新型コロナウイルスは、もちろんウイルス自体が恐ろしいのはそうなんだけど、9・11とか過去の危機との比較で、際立って異なる環境下での危機だなと感じるは、広範なインターネットアクセスやソーシャルメディアの存在。こういう環境下で迎える初めての大ピンチという点で、対応がより複雑、場合によっては困難になっている気がする。
で、Glitchといえば、「QIP Glitch」。何がGlitchだったかというと、Qalifiied Improvement Property、すなわち適格内装資産は、TCJA時の意図的には15年の耐用年数資産となり、かつ100%即時償却の対象となるっていう予定だったにもかかわらず、TCJAの法文ストラクチャーの単純ミスで、他の構造物同様、39年の定額償却のみの対象となってしまっていたという点。昔、小学校の頃、算数のテスト対策時に、せっかく本当は分かってるのに、単純ミスで点を落とすのは一番バカバカしい、って教わったのを思い出す。
TCJA可決直後から認識されているエラーだったんだけど、法文は法文。解釈の余地はなく、2018年1月1日以降に事業用途に供された内装は39年で粛々と償却することになり、小学校の算数のテスト対策じゃないけど、本当に一番バカバカしい結果となっていた。この手の法文エラーは、本来、比較的速やかにTechnical Correctionと呼ばれる法文修正法を可決してさっさと手当するのがベストなんだけど、TCJA自体、予算調整法という特別な手続きを経て共和党のみで可決した経緯があることから、通常の可決法で通過させないといけないTechnical Correctionに民主党が一切手を貸さず今日に至っていた。で、2年3カ月経った今、新型コロナウイルスという共通の敵が現れ、ようやくこの部分のTechnical CorrectionをCARES Actに忍ばせることができたという沿革。
Cares ActにはNOL Carrybackとか他にもTCJAに対するTechnical Correctionが含まれてるけど、Technical Correctionというのは法文があたかも元からCorrectionされた文言で制定されていた、という効果を持つ。したがって、適格内装資産は、既に39年で粛々と2年超定額償却してきたものが、実は2年前に即時償却が可能だったという変なポジションとなる。しかも、即時償却の不適用を選択する場合も、法律上39年資産ではない訳だから、39年で償却し続ける訳にはいかず、過去2年の取り扱いは間違いだったということになり、税務処理変更に基づく再計算が求められる。しかも、CARES ActはNOLのCarrybackや、Section 163(j)の計算を過去遡及して変更していて、多くのケースで各変更の適用に納税者による選択権が規定されているので、各規定の選択法の組み合わせは無数(?)っていうと大げさだけど結構あって、納税者側の検討は複雑怪奇となる。
特に、適格内装資産が多額になりがちな不動産業者は、Section 163(j)の支払利息損金算入制限の不適用を選択する際、内装を含む一定の資産に関してMACRSや即時償却を放棄するっていう代償があった。その場合、内装はADSと呼ばれる40年償却となる。普通でも39年だったら別に40年になってもあんまり大差ないから、だったらSection 163(j)の適用がない方がいいじゃん、って思ってたら今となってこの始末。しかもTechnical CorrectionによりADS自体も40年ではなく20年になっている。不動産業者に特化した話は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」で若干詳しめに話しいるんで、興味ある方は覗いてみて欲しい。
で、QIP GlitchがCARES Actで修正されたことにより、上述の通り、適格内装資産は通常のMACRS目的では15年資産、ADS目的では20年資産となる。双方とも定額償却。また15年資産となるので、Mid-Month Conventionではなく、Half-Year Conventionとなる。最終四半期に40%超の資産がRear-loadedされる形で事業用途に供されるとQuarter Conventionになるのは通常通り。Conventionは米国で申告書作成したことあれば誰でも知っているルールだし、やったことなければ知らないだろうし、知っててもしょうがない類の話し。さらに通常の耐用年数が15年となることから、即時償却の対象となる。
何が適格内装資産に当たるかって言う肝心の定義だけど、CARES Actによる法文修正前の段階では、「商業用建物内装のうち、建物自体が事業用途に供された後に加えられる造作」とされていた。チョッと日本語ぎこちないかもしれないので誤解ないように原文付け加えておくと「any improvement to an interior portion of a building which is nonresidential real property if such improvement is placed in service after the date such building was first placed in service」。CARES Actはこの定義の「improvement」の直後に「made by the taxpayer」という重要な一言を加えている。すなわち、納税者自らが行うリフォーム等でないと適格にはならなくなってしまった。っていうことは、例えばNYCでオフィスビルを$500Mで購入して、そのコストのうち、$50Mを内装に振り分けても、バイヤーは自分で内装を造作した訳ではないので適格内装資産には当たらないことになる。納税者自ら造作というのは、言うまでもないけど、納税者が実際に腕まくりして梯子に上ってペンキ塗ったり、ダクトをセットアップしないといけないという意味ではなく、実際の作業は業者等に発注するんだろうけど、納税者の支出でリフォームする必要があるってこと。言い換えれば、既に内装が造作されている商業施設を後から取得して、取得コストの一部が内装に帰属するだけでは適格内装資産にはならない、ってこと。
そんな訳で、2018年1月1日以降に事業用途に供された適格内装資産は過去遡及する形で償却方法が変わってしまったので、この調整をどのように行うかっていう面倒な課題が生じる。この点は次回。
SBAローンにしても、IRSの給付金手当にしても、最後は人間が規則を決めて司る訳で、$3Tのお金をこれだけ無理やり短期間に拠出し、管理しようとすれば、予期せぬ不具合、Glitch、がいろいろと起こるのは不可避。IRSだって、自分たちもロックダウンしてる最中に、大慌てで給付金を銀行に振り込んだり、小切手を発行したりしている。当然その過程ではいろんなGlitchが発生することになる。既に亡くなっている方の口座に入金されたり、逆に待っててもなかなか来なかったり、金額が予想と違ったり、公的年金受給者が扶養家族をオンラインで登録する時間が短すぎたり、とかいろんな不具合をメディアが報道している。
IRSや財務省は、彼らの手元に存在する情報、既存のシステム(相当古そう・・)を使って最大限の努力に基づき、半狂乱というか我を忘れて給付金を交付しているって言ってもいいような状況じゃないかな。給付金の受給者を正確に特定した後に交付するシステムを構築しないといけないんだったら、交付までに長い時間が掛かる。年間換算でQ2のGDPは下手したら40%ダウン、失業保険申請者はわずか4~5週間で3千万人と言われている現状、何をするにしても完璧な対策はない訳だから、バランスのいい施策をスピーディーに展開するしかない。
どんな策を取っても反対派はいて、今の米国におけるイデオロギー的な二極化を考えると、結局は何をしても約半数の反対意見があると想定され、そんな中での意思決定は、医学、科学、経済、有権者の意見は当然よく聞くとしても、最後はリーダーがそれらを総合的に検討した上で最終決定して、Move Onするしかない。全会一致の決定にはなり得ないので、リーダーとして、なぜそのような施策を取ったのか明確に説明し、異論がある場合には法の支配下で、市民が議論すればいい。ヘルスケアの受け入れ体制がとりあえず確保されたと言われている今、次なる課題は経済活動の再始動に移りつつあるけど、今後の施策にも思わぬリスクやGlitchは必ず存在する、っていう不可避の前提をリーダーが認め、市民も受け入れる必要がある。でないと何もできないので。新型コロナウイルスは、もちろんウイルス自体が恐ろしいのはそうなんだけど、9・11とか過去の危機との比較で、際立って異なる環境下での危機だなと感じるは、広範なインターネットアクセスやソーシャルメディアの存在。こういう環境下で迎える初めての大ピンチという点で、対応がより複雑、場合によっては困難になっている気がする。
で、Glitchといえば、「QIP Glitch」。何がGlitchだったかというと、Qalifiied Improvement Property、すなわち適格内装資産は、TCJA時の意図的には15年の耐用年数資産となり、かつ100%即時償却の対象となるっていう予定だったにもかかわらず、TCJAの法文ストラクチャーの単純ミスで、他の構造物同様、39年の定額償却のみの対象となってしまっていたという点。昔、小学校の頃、算数のテスト対策時に、せっかく本当は分かってるのに、単純ミスで点を落とすのは一番バカバカしい、って教わったのを思い出す。
TCJA可決直後から認識されているエラーだったんだけど、法文は法文。解釈の余地はなく、2018年1月1日以降に事業用途に供された内装は39年で粛々と償却することになり、小学校の算数のテスト対策じゃないけど、本当に一番バカバカしい結果となっていた。この手の法文エラーは、本来、比較的速やかにTechnical Correctionと呼ばれる法文修正法を可決してさっさと手当するのがベストなんだけど、TCJA自体、予算調整法という特別な手続きを経て共和党のみで可決した経緯があることから、通常の可決法で通過させないといけないTechnical Correctionに民主党が一切手を貸さず今日に至っていた。で、2年3カ月経った今、新型コロナウイルスという共通の敵が現れ、ようやくこの部分のTechnical CorrectionをCARES Actに忍ばせることができたという沿革。
Cares ActにはNOL Carrybackとか他にもTCJAに対するTechnical Correctionが含まれてるけど、Technical Correctionというのは法文があたかも元からCorrectionされた文言で制定されていた、という効果を持つ。したがって、適格内装資産は、既に39年で粛々と2年超定額償却してきたものが、実は2年前に即時償却が可能だったという変なポジションとなる。しかも、即時償却の不適用を選択する場合も、法律上39年資産ではない訳だから、39年で償却し続ける訳にはいかず、過去2年の取り扱いは間違いだったということになり、税務処理変更に基づく再計算が求められる。しかも、CARES ActはNOLのCarrybackや、Section 163(j)の計算を過去遡及して変更していて、多くのケースで各変更の適用に納税者による選択権が規定されているので、各規定の選択法の組み合わせは無数(?)っていうと大げさだけど結構あって、納税者側の検討は複雑怪奇となる。
特に、適格内装資産が多額になりがちな不動産業者は、Section 163(j)の支払利息損金算入制限の不適用を選択する際、内装を含む一定の資産に関してMACRSや即時償却を放棄するっていう代償があった。その場合、内装はADSと呼ばれる40年償却となる。普通でも39年だったら別に40年になってもあんまり大差ないから、だったらSection 163(j)の適用がない方がいいじゃん、って思ってたら今となってこの始末。しかもTechnical CorrectionによりADS自体も40年ではなく20年になっている。不動産業者に特化した話は「新型コロナウイルス対策法フェーズ3「CARES Act」 (7) Section 163(j)各種選択手続ガイダンス」で若干詳しめに話しいるんで、興味ある方は覗いてみて欲しい。
で、QIP GlitchがCARES Actで修正されたことにより、上述の通り、適格内装資産は通常のMACRS目的では15年資産、ADS目的では20年資産となる。双方とも定額償却。また15年資産となるので、Mid-Month Conventionではなく、Half-Year Conventionとなる。最終四半期に40%超の資産がRear-loadedされる形で事業用途に供されるとQuarter Conventionになるのは通常通り。Conventionは米国で申告書作成したことあれば誰でも知っているルールだし、やったことなければ知らないだろうし、知っててもしょうがない類の話し。さらに通常の耐用年数が15年となることから、即時償却の対象となる。
何が適格内装資産に当たるかって言う肝心の定義だけど、CARES Actによる法文修正前の段階では、「商業用建物内装のうち、建物自体が事業用途に供された後に加えられる造作」とされていた。チョッと日本語ぎこちないかもしれないので誤解ないように原文付け加えておくと「any improvement to an interior portion of a building which is nonresidential real property if such improvement is placed in service after the date such building was first placed in service」。CARES Actはこの定義の「improvement」の直後に「made by the taxpayer」という重要な一言を加えている。すなわち、納税者自らが行うリフォーム等でないと適格にはならなくなってしまった。っていうことは、例えばNYCでオフィスビルを$500Mで購入して、そのコストのうち、$50Mを内装に振り分けても、バイヤーは自分で内装を造作した訳ではないので適格内装資産には当たらないことになる。納税者自ら造作というのは、言うまでもないけど、納税者が実際に腕まくりして梯子に上ってペンキ塗ったり、ダクトをセットアップしないといけないという意味ではなく、実際の作業は業者等に発注するんだろうけど、納税者の支出でリフォームする必要があるってこと。言い換えれば、既に内装が造作されている商業施設を後から取得して、取得コストの一部が内装に帰属するだけでは適格内装資産にはならない、ってこと。
そんな訳で、2018年1月1日以降に事業用途に供された適格内装資産は過去遡及する形で償却方法が変わってしまったので、この調整をどのように行うかっていう面倒な課題が生じる。この点は次回。
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