前回はバイデン政権によるGILTI課税強化の話しをするための舞台作りとして、元祖GILTIの概要に触れた。2分間のSingle Radio Editのつもりだったんだけど、結局いつも通り興奮して20分続くExtended Underground Versionに。GILTIはそれを取り巻くFTC、株式簿価調整、PTEP等の規定を含むと、僕も3年間考え続けて未だに不明点があるくらいだから20分でもご勘弁くださいませ。
ってことで今日はいよいよバイデン政権のGILTI増税案。
米国に「農場主がワンちゃんを飼ってて、その名はBINGO~」(「There was a farmer had a dog and Bingo was his name-o. B-I-N-G-O」文法面白いけど歌だからね)っていう童謡がある。こっちの生活が長かったり、こちらで子育てした方だったら大概知ってるんじゃないかな。この歌、基本的に同じ歌詞で1番~6番まであるんだけど、犬の名前をみんなで「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」ってスペルアウトして歌う部分が、回を重ねる毎に一文字づつ消えて、その部分は手拍子に代わる。
何言ってるか分かんないかもしれないけど、一番はBINGOのスペルを全てみんなで元気よく「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌うんだけど、2番は「ビー」の部分は何も歌わずに手拍子になる。つまり「手拍子」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌う。3番はさらに「アイ」も歌わず、「手拍子」「手拍子」「エヌ」「ジー」「オー」、4番は「手拍子」「手拍子」「手拍子」「ジー」「オー」、5番は「オー」だけが残って「手拍子」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「オー」、6番に至ってアルファベットは全て消え、全部手拍子になるって仕組み。結構楽しいんだけど、僕の説明だけじゃ楽しさ伝わんないと思うからYouTubeとかで実際に聴いてみて欲しい。どうでもいいって…?確かに。
でもバイデン政権のGILTI増税案はまさに童謡BINGOの世界なのでした。果たしてそのこころは?それは最後にね。
バイデン政権のGILTI観はTCJA立法趣旨とは大分違う。CFCの国外所得を米国で毎期課税するのは当然と考える。そんな捉え方に基づくと、GILTIの税率は低すぎるし、みなしルーティン所得のカーブアウトも米多国籍企業が享受する不当な恩典、というような結果に辿り着く。したがってこれらの不当な「恩典」は是正しないといけないということ。こんなGILTI観の背景には、米国多国籍企業が未だに大掛かりなBase Erosionに従事してるっていう前提があるんだろうけど、現時点で入手可能なデータの多くは2017年以前のものなので、TCJA、特にBEAT、GILTI、FDII、Hybrid、等が導入されている新クロスボーダー課税制度下でどのように多国籍企業の行動パターンが変わったのかを統計的に図ることはできないはず。
バイデン政権のGILTIアプローチ下では、まず、CFC有形償却資産簿価の10%というみなしルーティン所得を撤廃しようという流れとなる。この除外がなくなるってことは、すなわち毎期、CFCの所得を全額合算するということ。GILTIは「Intangible」から生じている超過利益に対するミニマム税と位置付けられている現状では、有形償却資産簿価に基づいてメカニカルに決定されるルーティン所得以外を無形資産所得って決めてしまった点が凄く斬新って前回のポスティングに書いたけど、この除外を撤廃するということは有形償却資産から生じるルーティン所得もGILTI対象にするということになってしまう。もうIntangibleとか関係ないね。
さらにGILTI税率の21%への引き上げ。現行が10.5%だから倍だ。もし通常の法人税率が21%のままと考えると、前回のポスティングで触れた50%のGILTI控除を完全撤廃するということになる。ただ、バイデン政権は選挙活動の頃から法人税率そのものを28%に引き上げる、って言ってるので、もしヘッドラインレートが28%になるんだったらGILTI控除を50%ではなく、25%に下げるっていうことになる。すなわち、100のGILTI合算から25を引いた75に28%掛けて21という仕組み。仮にGILTI制度が現状のままでも法人税率が上がると自然にGILTI税率も上昇する。仮に法人税率が28%になるとすると、GILTI制度の変更が一切なくてもGILTI税率は自然と14%になってしまう。新しいタイプやクラスの税金って、一旦法律になってしまうと、その後どんな風に進化していくか分からないから恐ろしいね。という訳でミニマム税っていうか普通の課税っぽい帯域に突入。GILTIのLow-Taxedっていう部分も意味がなくなってしまう。
そしてダメ押しのように、FTC計算時のGILTIバスケット制限枠を国別に算定させるという「Country Basket制」導入案。現行のGILTIバスケットのFTCは、繰り越しや繰り戻しがないという厳しい制限はあるものの、少なくともグローバルブレンディングベース。GILTIバスケットのFTC計算はそれだけでも面倒だけど、簡単に言うとポジティブなTested Incomeを計上しているCFCが外国で支払う法人税のうち、Tested Incomeに帰すると取り扱われる金額を米国株主側で合算し、それにGILTI合算率を掛けて更にそれに80%掛けた金額。GILTI合算率は、分母が「米国株主側でGILTI用に取り込むTested Income(Lossは加味しない)総額」で、分子は「GILTI合算額」すなわちTested IncomeとTested Lossを相殺して更にみなしルーティン所得となる有形償却資産簿価の10%をマイナスした金額として算定する。もちろん、こんな風に苦労してクレジット可能な外国法人税を算定した後、実際にFTCになるのは米国株主側の各種費用をGILTIバスケットに配賦・按分して計算されるバスケット制限枠の範囲内だ。
で、これを国別に計算しようという提案。その目的はもちろん高税率国と低税率国間のクロスクレジットを認めないってことなんだけど、もしGILTI税率が21%になったら、普通の国の税率より高いケースが多いので、結局は結構な外国の法人税がFTC対象になるかもね。しかも、FTCは外国法人税のTested Income帰属額の80%が対象だから、仮に算数が教科書のようにきれいにワークしたとしても、26.25%がグローバルミニマム税という見方もできる。そんな高税率の国、日本以外には少ないのでは。
う~ん、これではGILTIがオリジナルの制度とは異なる目的のものになってしまう。もともとGILTIっていうのは、米国がテリトリアル課税に移行するにあたり、そのまま移行してしまうと、少し大げさにいうとCFCの所得は国外でゼロ%、米国市場から生じる所得も合法的にCFCに移転されてしまうので結局ゼロ%、それを米国に還流してもゼロ%、という全世界実効税率ゼロ%となり兼ねないため、BEATやHybrid規定と並び、CFC国外所得に毎期13%程度のミニマム税は世界のどこかで払ってもらわないと、っていうBase Erosion対策の一環だったはず。加えて、FDIIを同時に規定することで、米国外向け事業を米国親会社が直接行っても、CFC経由で行っても、毎期繰り延べなしに13.125%のミニマム税の対象となるというFDIIとの対のシステムだったはずだ。経済がデジタル化する中、高い収益はIP等の無形資産が生み出し、従来のクロスボーダー・プラニングでも低税率国に容易にMigrateできたのは無形資産、という認識があるんで、有形資産から生じるルーティン所得見合い部分は対象外ってしていたものだ。
バイデン政権はピラー1のSafe-Harbor化要求を撤回するなど、かなりOECDのBEPS 2.0に歩み寄りがみられるけど、想定されているピラー2の税率はせいぜい10%とか12%程度って噂されているし、現状のGILTIの有形償却資産リターンに準じる「カーブアウト」も規定されている。そんな中、お手本のはずだったGILTIが激しくピラー2から乖離してしまうと、本当にグローバルでピラー2と共存できるのかな、っていう疑問も出てくるし、米国がそんなGILTIでピラー2準拠とみなされるんだったら「うちの国も21%でカーブアウトはありませんよ~」とかっていう他国が出てきたらどうするんでしょうか。
ということで、「アメリカにはワンちゃんが居て、その名はGILTI~。ジー、アイ、エル、ティー、アイ!」ってみんなで歌ってたけど、そこにバイデン政権が登場して2番、3番、4番を作ってだんだんアルファベットなくなっちゃった感じ。まずIntangibleの2つ目のアイが手拍子に代わり、もはや21%ではLow-Taxedというのもおこがましいので、エルもティーも手拍子に代わり、「ジー」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「アイ」って、なってしまいました。「バイデン政権が来てワンちゃん改名~。その名はGI(Global Income)。ジー・アイ!」。逆にGとIはなくなってもよかったんだけど、それだけ残っちゃったね。一層のこと、6番までできて全部手拍子で廃止されたらよかったのに?
ってことで今日はいよいよバイデン政権のGILTI増税案。
米国に「農場主がワンちゃんを飼ってて、その名はBINGO~」(「There was a farmer had a dog and Bingo was his name-o. B-I-N-G-O」文法面白いけど歌だからね)っていう童謡がある。こっちの生活が長かったり、こちらで子育てした方だったら大概知ってるんじゃないかな。この歌、基本的に同じ歌詞で1番~6番まであるんだけど、犬の名前をみんなで「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」ってスペルアウトして歌う部分が、回を重ねる毎に一文字づつ消えて、その部分は手拍子に代わる。
何言ってるか分かんないかもしれないけど、一番はBINGOのスペルを全てみんなで元気よく「ビー」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌うんだけど、2番は「ビー」の部分は何も歌わずに手拍子になる。つまり「手拍子」「アイ」「エヌ」「ジー」「オー」って歌う。3番はさらに「アイ」も歌わず、「手拍子」「手拍子」「エヌ」「ジー」「オー」、4番は「手拍子」「手拍子」「手拍子」「ジー」「オー」、5番は「オー」だけが残って「手拍子」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「オー」、6番に至ってアルファベットは全て消え、全部手拍子になるって仕組み。結構楽しいんだけど、僕の説明だけじゃ楽しさ伝わんないと思うからYouTubeとかで実際に聴いてみて欲しい。どうでもいいって…?確かに。
でもバイデン政権のGILTI増税案はまさに童謡BINGOの世界なのでした。果たしてそのこころは?それは最後にね。
バイデン政権のGILTI観はTCJA立法趣旨とは大分違う。CFCの国外所得を米国で毎期課税するのは当然と考える。そんな捉え方に基づくと、GILTIの税率は低すぎるし、みなしルーティン所得のカーブアウトも米多国籍企業が享受する不当な恩典、というような結果に辿り着く。したがってこれらの不当な「恩典」は是正しないといけないということ。こんなGILTI観の背景には、米国多国籍企業が未だに大掛かりなBase Erosionに従事してるっていう前提があるんだろうけど、現時点で入手可能なデータの多くは2017年以前のものなので、TCJA、特にBEAT、GILTI、FDII、Hybrid、等が導入されている新クロスボーダー課税制度下でどのように多国籍企業の行動パターンが変わったのかを統計的に図ることはできないはず。
バイデン政権のGILTIアプローチ下では、まず、CFC有形償却資産簿価の10%というみなしルーティン所得を撤廃しようという流れとなる。この除外がなくなるってことは、すなわち毎期、CFCの所得を全額合算するということ。GILTIは「Intangible」から生じている超過利益に対するミニマム税と位置付けられている現状では、有形償却資産簿価に基づいてメカニカルに決定されるルーティン所得以外を無形資産所得って決めてしまった点が凄く斬新って前回のポスティングに書いたけど、この除外を撤廃するということは有形償却資産から生じるルーティン所得もGILTI対象にするということになってしまう。もうIntangibleとか関係ないね。
さらにGILTI税率の21%への引き上げ。現行が10.5%だから倍だ。もし通常の法人税率が21%のままと考えると、前回のポスティングで触れた50%のGILTI控除を完全撤廃するということになる。ただ、バイデン政権は選挙活動の頃から法人税率そのものを28%に引き上げる、って言ってるので、もしヘッドラインレートが28%になるんだったらGILTI控除を50%ではなく、25%に下げるっていうことになる。すなわち、100のGILTI合算から25を引いた75に28%掛けて21という仕組み。仮にGILTI制度が現状のままでも法人税率が上がると自然にGILTI税率も上昇する。仮に法人税率が28%になるとすると、GILTI制度の変更が一切なくてもGILTI税率は自然と14%になってしまう。新しいタイプやクラスの税金って、一旦法律になってしまうと、その後どんな風に進化していくか分からないから恐ろしいね。という訳でミニマム税っていうか普通の課税っぽい帯域に突入。GILTIのLow-Taxedっていう部分も意味がなくなってしまう。
そしてダメ押しのように、FTC計算時のGILTIバスケット制限枠を国別に算定させるという「Country Basket制」導入案。現行のGILTIバスケットのFTCは、繰り越しや繰り戻しがないという厳しい制限はあるものの、少なくともグローバルブレンディングベース。GILTIバスケットのFTC計算はそれだけでも面倒だけど、簡単に言うとポジティブなTested Incomeを計上しているCFCが外国で支払う法人税のうち、Tested Incomeに帰すると取り扱われる金額を米国株主側で合算し、それにGILTI合算率を掛けて更にそれに80%掛けた金額。GILTI合算率は、分母が「米国株主側でGILTI用に取り込むTested Income(Lossは加味しない)総額」で、分子は「GILTI合算額」すなわちTested IncomeとTested Lossを相殺して更にみなしルーティン所得となる有形償却資産簿価の10%をマイナスした金額として算定する。もちろん、こんな風に苦労してクレジット可能な外国法人税を算定した後、実際にFTCになるのは米国株主側の各種費用をGILTIバスケットに配賦・按分して計算されるバスケット制限枠の範囲内だ。
で、これを国別に計算しようという提案。その目的はもちろん高税率国と低税率国間のクロスクレジットを認めないってことなんだけど、もしGILTI税率が21%になったら、普通の国の税率より高いケースが多いので、結局は結構な外国の法人税がFTC対象になるかもね。しかも、FTCは外国法人税のTested Income帰属額の80%が対象だから、仮に算数が教科書のようにきれいにワークしたとしても、26.25%がグローバルミニマム税という見方もできる。そんな高税率の国、日本以外には少ないのでは。
う~ん、これではGILTIがオリジナルの制度とは異なる目的のものになってしまう。もともとGILTIっていうのは、米国がテリトリアル課税に移行するにあたり、そのまま移行してしまうと、少し大げさにいうとCFCの所得は国外でゼロ%、米国市場から生じる所得も合法的にCFCに移転されてしまうので結局ゼロ%、それを米国に還流してもゼロ%、という全世界実効税率ゼロ%となり兼ねないため、BEATやHybrid規定と並び、CFC国外所得に毎期13%程度のミニマム税は世界のどこかで払ってもらわないと、っていうBase Erosion対策の一環だったはず。加えて、FDIIを同時に規定することで、米国外向け事業を米国親会社が直接行っても、CFC経由で行っても、毎期繰り延べなしに13.125%のミニマム税の対象となるというFDIIとの対のシステムだったはずだ。経済がデジタル化する中、高い収益はIP等の無形資産が生み出し、従来のクロスボーダー・プラニングでも低税率国に容易にMigrateできたのは無形資産、という認識があるんで、有形資産から生じるルーティン所得見合い部分は対象外ってしていたものだ。
バイデン政権はピラー1のSafe-Harbor化要求を撤回するなど、かなりOECDのBEPS 2.0に歩み寄りがみられるけど、想定されているピラー2の税率はせいぜい10%とか12%程度って噂されているし、現状のGILTIの有形償却資産リターンに準じる「カーブアウト」も規定されている。そんな中、お手本のはずだったGILTIが激しくピラー2から乖離してしまうと、本当にグローバルでピラー2と共存できるのかな、っていう疑問も出てくるし、米国がそんなGILTIでピラー2準拠とみなされるんだったら「うちの国も21%でカーブアウトはありませんよ~」とかっていう他国が出てきたらどうするんでしょうか。
ということで、「アメリカにはワンちゃんが居て、その名はGILTI~。ジー、アイ、エル、ティー、アイ!」ってみんなで歌ってたけど、そこにバイデン政権が登場して2番、3番、4番を作ってだんだんアルファベットなくなっちゃった感じ。まずIntangibleの2つ目のアイが手拍子に代わり、もはや21%ではLow-Taxedというのもおこがましいので、エルもティーも手拍子に代わり、「ジー」「手拍子」「手拍子」「手拍子」「アイ」って、なってしまいました。「バイデン政権が来てワンちゃん改名~。その名はGI(Global Income)。ジー・アイ!」。逆にGとIはなくなってもよかったんだけど、それだけ残っちゃったね。一層のこと、6番までできて全部手拍子で廃止されたらよかったのに?
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