前回はバイデンのホワイトハウスが$2Tにのぼるインフラ投資案およびその財源としての増税案を公表したThe American Jobs Planにかかわる「Fact Sheet」に関して簡単に速報した。34ページで構成されるFact Sheetに占める増税案部分は「The Made in America Tax Plan」と別セクションになってるけど、僅か4ページの極めて大雑把なものだ。
それにしてもこれだけ派手な増税構想を打ち上げ、大企業を悪の枢軸かのごとく徹底的にやりこめた挙句に「これらのステップを通じてアメリカへの投資を促進する時がきました」って締めくくるあたり、どの世界もポリティシャンっていうのは厚顔無恥じゃないとやってけないよね。冗談みたいで思わず笑ってしまった。「The Made in America Tax Plan」ね。確かにカーブアウトなしの21%グローバルミニマム税はアメリカならではのイノベーション!
法人が税法上の「Loophole」を活用していてとんでもない、っていうコメントが炸裂しているけど、「Loophole」そのものを最初から法律に盛り込まなければいいと思うんだけどね。ここで言う「Loophole」の多くって、長年掛けてポリティシャン(ロビイスト?)が、民間に従事して欲しい分野とか投資して欲しい活動を優遇するために法律化してきた規定の多くが含まれるはず。Loopholeっていうと脱法的っていう含意があるけど、実際には議会にごちそう出されて食べたら怒られるみたいな状況?その意味では、新規に規定される、または既存の恩典が延長・拡張されることが想定されるクリーンエネジーに対する優遇措置だって結局は「Loophole」の一部を構成するようになる訳で、政府やポリティシャンが経済活動にアクティブに関与しようとする限り、必然的に税法に政策的な「Loophole」が増え続ける。その「Loophole」、使ってもらうために用意されるので、当然民間に活用してもらわないと意味がないのでは。つまり議会が制定した「Loophole」を合法的に使用しておかしいことはないし、その運用に際してはこれでもか、っていう詳細かつ複雑な財務省規則が公表されるのでコンプライアンスするにはそれなりのコストも掛かる。Fact Sheetが糾弾している大企業による外部アドバイザーを起用して検討する「Loophole」の利用っていう場合の、「Loophole」のどれだけがそのような政策に基づくものなのか、または阿漕な脱法的プラニングなのか、は不明だけど、個人的な経験から法的に怪しいことは少ない気がする。
バイデン自身だって配偶者のジルと共に、高齢者医療の財源となるMedicare社会保障税の節税のためS法人経由で所得をBookし、$13Mに上る所得に対する社会保障税を支払っていないというLoopholeを利用したアグレッシブなプラニングに従事してる、っていう報道があったけど、それだって合法的だったらある意味仕方がないし、問題があるんだったら最終的には議会が法律を変えるしかない。
ただ、多くの「Loophole」が税法を複雑にして、コンプライアンスの負荷が上がり、勝者・敗者が出るのはその通り。また、これらの「Loophole」をサポートするため、表面税率を高く設定しないといけなくなるので、以前から税法簡素化の話しがでるたびに特定Interestに与えられる「Loophole」を撤廃して、代わりに皆に適用する税率を低くするべきという議論は出るんだけど、結局ロビイストとかの暗躍で実現困難だろうね。政府やポリティシャンが恣意的に決めるクレジットとか、結局はウォールストリートが現金化してたりして、狙った通りの効果が得られないケースも多そうだしね。
敗者と言えば化石燃料関係に従事する企業。Fact Sheetでは「汚染者」という名で糾弾した上、税法上の全ての恩典を取り上げると宣言している。もちろん環境に悪いことはよくないし空気もきれいに越したことはないけど、今まで長年、国民に必要なエネジーを提供し、安全保障上も最重要なセクターのひとつであるが故に議会が特別な恩典を規定していたんだろうけど、用なし(?)になったとたんけちょんけちょんだ。「汚染者」ね。もう少し大人っぽい表現を使っても良かったんでは、って感じたけどね。自分が年取ると、ワシントンのポリティシャンや世の中全体がなんか子供っぽく見えることがあって、ジェネレーションのGapってこんななんだな~って痛感して反省(笑)。レーガン(共和党)とTip O'Neill(民主党)の2人みたいな大人の世界の米国にはもう戻ることはないのは分かるけど、オバマ(民主党)とJohn Boehner(「ベイナー」って発音します)(共和党)の2人の間柄だって、レーガンとO'Neillと比べるとかなり最近だけど、まだアダルト感が残ってたように思うけどね。Old-Fashion過ぎるって?かもね。バイデン自身はもちろん僕より更に2ジェネレーションくらい上かもしれないけど、Fact Sheet書いてるのはもちろん本人じゃないし。
で、バイデン政権の増税規模の壮大さには度肝を抜かれるけど、考えてみれば現時点ではあくまでも行政府側の提案なので、中庸民主党議員とかが抵抗を示して、若干譲歩したようなフリして、それでも結局は結構な増税という路線なのだろうか。前から何回か触れている通り、個人的には28%まで上がるとは未だに信じてないんだけど、あそこまで法人のことけちょんけちょんに言ってるからには相当近くまで引き上げられるのかな。前も触れた通り、法人税が歳入に占める割合って少ない。Fact Sheetにも、1980年以前はもっと比率が高く、税率を引き上げてその頃の比率に戻すというようなコメントがある。ただ1980年以前って、1997年から使ってるCheck-the-Boxより20年近く前だし、そもそもCTBどころか、LLCっていう主体が始めて登場したのが1977年のワイオミング州会社法だから(大自然だけど、この辺りはさすがワイオミング州だよね。LLCってニューヨーク州とかデラウェア州で生まれたものじゃないからね)、上場企業以外は基本パススルーで所得が個人にフローアップしていく環境にある今日の法人税収とは比較可能性に欠ける。当時はパススルーにするには信託をAssociationにしないように、とかのレベルで腐心するか、GPやLPで無限責任をどう最小限にするか、みたいな話しだっただろうからね。Kinter原則の6つのテストだね!懐かしい~。
前回のポスティングでも書いたけど、Fact SheetのOECDのピラー2への急接近には目を見張るものがある。アメリカは再度世界のリーダーとなり、世界的な法人税率低減傾向に断固立ち向かうそうだ。自国の法人税率が世界一レベルに復活してしまっても、相対的に競争力が落ちないよう他国にも「Race to the bottom」とかに従事することないよう釘をさしたりしてる訳だけど、他国の企業には大迷惑?ピラー2に見られるグローバルミニマム税の導入、ピラー1と比較すると、コンセンサス作りの難易度は低いかもしれないけど、Fact Sheetでは単なるグローバルミニマム税ではなく「Strong」なグローバルミニマム税の導入を促している。自国でGILTIを有形償却リターンを撤廃した上、21%に増税する提案をしているので、相対的な競争力が落ちないよう他国もより厳しいグローバルミニマム税を導入して欲しい、ということだろう。ただ、21%は州税も要れると25%とかだからいくら「Strong」って形容しても「ミニマム税」というにはチョッと高過ぎ。米国企業と異なってもともとBase Erosion なんてしてない企業も多かったり、Check-the-BoxとかないんでCFC課税が機能している他国は面食らっているのでは。真面目にやってる他国の多国籍企業から見ると大きなお世話感は否めないだろう。BEATもUTPRみたいに生まれ変わるようなことも書いてあるし。ピラー2は俄かに息を吹き返してるね。
さらに、Fact Sheetには、Inversion規制が甘すぎるのでもっと厳しくすると記載されている。Inversion規制の強化っていうと2017年以前のオバマ政権時代末期がフラッシュバックしてくる。当時はTCJA前で、米国の税制が余りに使い勝手が悪いので、他国に引っ越してしまう法人が急増していてそれを阻止するため厳しい制限を財務省規則という形で乱発してたけど、今回も予めそんな動きを牽制する作戦。でもInversion規制って既に強固過ぎて、特にTCJA以降はInversionでトリガーされる不利益が大きく、Inversionなどほぼできないか、できたとしてもTransition Taxが大きくなったり、BEATに抵触し易くなったり、Downward Attributionもクロスボーダーで適用となってるし、恩典が限られるんじゃないかな。この期のおよんでInversion規制の強化って、これ以上どうやって強化するつもりだろうか。設立国基準を撤廃し、管理支配ベースにする案をまた浮上させるつもりかも。
Inversion対策ってまさしく太陽と北風の童話の世界で、Inversionしないでもいいように相対的に米国の税法をマシにするのが太陽アプローチ。TCJAは税率を下げ、またGILTIとFDIIをセットでLevel Playing Fieldにしたり、してたのでどちらかというと太陽。一方、これだけInversion規制が行き届いている中、北風アプローチのInversion対策強化をうたわざるを得ない辺り、増税案で米国税法がまた他国よりかなり不利なものとなり、国籍離脱を試みる企業が出没するリスクを気にしてるってことなんだろうか。
インフラ投資案+増税案、この内容では共和党からは一票も入らないだろうから、予算調整法の枠で通過させるしかない。その場合、厳格に予算調整法のスコープ内の法律でないといけないので、インフラ投資案のうちどれだけの部分が予算調整法適格となるか不明。
という訳でFact Sheet第二弾でした。バイデン政権の税制改正動向は進展あり次第触れていきたい。次のマイルストーンはグリーンブックかな。
それにしてもこれだけ派手な増税構想を打ち上げ、大企業を悪の枢軸かのごとく徹底的にやりこめた挙句に「これらのステップを通じてアメリカへの投資を促進する時がきました」って締めくくるあたり、どの世界もポリティシャンっていうのは厚顔無恥じゃないとやってけないよね。冗談みたいで思わず笑ってしまった。「The Made in America Tax Plan」ね。確かにカーブアウトなしの21%グローバルミニマム税はアメリカならではのイノベーション!
法人が税法上の「Loophole」を活用していてとんでもない、っていうコメントが炸裂しているけど、「Loophole」そのものを最初から法律に盛り込まなければいいと思うんだけどね。ここで言う「Loophole」の多くって、長年掛けてポリティシャン(ロビイスト?)が、民間に従事して欲しい分野とか投資して欲しい活動を優遇するために法律化してきた規定の多くが含まれるはず。Loopholeっていうと脱法的っていう含意があるけど、実際には議会にごちそう出されて食べたら怒られるみたいな状況?その意味では、新規に規定される、または既存の恩典が延長・拡張されることが想定されるクリーンエネジーに対する優遇措置だって結局は「Loophole」の一部を構成するようになる訳で、政府やポリティシャンが経済活動にアクティブに関与しようとする限り、必然的に税法に政策的な「Loophole」が増え続ける。その「Loophole」、使ってもらうために用意されるので、当然民間に活用してもらわないと意味がないのでは。つまり議会が制定した「Loophole」を合法的に使用しておかしいことはないし、その運用に際してはこれでもか、っていう詳細かつ複雑な財務省規則が公表されるのでコンプライアンスするにはそれなりのコストも掛かる。Fact Sheetが糾弾している大企業による外部アドバイザーを起用して検討する「Loophole」の利用っていう場合の、「Loophole」のどれだけがそのような政策に基づくものなのか、または阿漕な脱法的プラニングなのか、は不明だけど、個人的な経験から法的に怪しいことは少ない気がする。
バイデン自身だって配偶者のジルと共に、高齢者医療の財源となるMedicare社会保障税の節税のためS法人経由で所得をBookし、$13Mに上る所得に対する社会保障税を支払っていないというLoopholeを利用したアグレッシブなプラニングに従事してる、っていう報道があったけど、それだって合法的だったらある意味仕方がないし、問題があるんだったら最終的には議会が法律を変えるしかない。
ただ、多くの「Loophole」が税法を複雑にして、コンプライアンスの負荷が上がり、勝者・敗者が出るのはその通り。また、これらの「Loophole」をサポートするため、表面税率を高く設定しないといけなくなるので、以前から税法簡素化の話しがでるたびに特定Interestに与えられる「Loophole」を撤廃して、代わりに皆に適用する税率を低くするべきという議論は出るんだけど、結局ロビイストとかの暗躍で実現困難だろうね。政府やポリティシャンが恣意的に決めるクレジットとか、結局はウォールストリートが現金化してたりして、狙った通りの効果が得られないケースも多そうだしね。
敗者と言えば化石燃料関係に従事する企業。Fact Sheetでは「汚染者」という名で糾弾した上、税法上の全ての恩典を取り上げると宣言している。もちろん環境に悪いことはよくないし空気もきれいに越したことはないけど、今まで長年、国民に必要なエネジーを提供し、安全保障上も最重要なセクターのひとつであるが故に議会が特別な恩典を規定していたんだろうけど、用なし(?)になったとたんけちょんけちょんだ。「汚染者」ね。もう少し大人っぽい表現を使っても良かったんでは、って感じたけどね。自分が年取ると、ワシントンのポリティシャンや世の中全体がなんか子供っぽく見えることがあって、ジェネレーションのGapってこんななんだな~って痛感して反省(笑)。レーガン(共和党)とTip O'Neill(民主党)の2人みたいな大人の世界の米国にはもう戻ることはないのは分かるけど、オバマ(民主党)とJohn Boehner(「ベイナー」って発音します)(共和党)の2人の間柄だって、レーガンとO'Neillと比べるとかなり最近だけど、まだアダルト感が残ってたように思うけどね。Old-Fashion過ぎるって?かもね。バイデン自身はもちろん僕より更に2ジェネレーションくらい上かもしれないけど、Fact Sheet書いてるのはもちろん本人じゃないし。
で、バイデン政権の増税規模の壮大さには度肝を抜かれるけど、考えてみれば現時点ではあくまでも行政府側の提案なので、中庸民主党議員とかが抵抗を示して、若干譲歩したようなフリして、それでも結局は結構な増税という路線なのだろうか。前から何回か触れている通り、個人的には28%まで上がるとは未だに信じてないんだけど、あそこまで法人のことけちょんけちょんに言ってるからには相当近くまで引き上げられるのかな。前も触れた通り、法人税が歳入に占める割合って少ない。Fact Sheetにも、1980年以前はもっと比率が高く、税率を引き上げてその頃の比率に戻すというようなコメントがある。ただ1980年以前って、1997年から使ってるCheck-the-Boxより20年近く前だし、そもそもCTBどころか、LLCっていう主体が始めて登場したのが1977年のワイオミング州会社法だから(大自然だけど、この辺りはさすがワイオミング州だよね。LLCってニューヨーク州とかデラウェア州で生まれたものじゃないからね)、上場企業以外は基本パススルーで所得が個人にフローアップしていく環境にある今日の法人税収とは比較可能性に欠ける。当時はパススルーにするには信託をAssociationにしないように、とかのレベルで腐心するか、GPやLPで無限責任をどう最小限にするか、みたいな話しだっただろうからね。Kinter原則の6つのテストだね!懐かしい~。
前回のポスティングでも書いたけど、Fact SheetのOECDのピラー2への急接近には目を見張るものがある。アメリカは再度世界のリーダーとなり、世界的な法人税率低減傾向に断固立ち向かうそうだ。自国の法人税率が世界一レベルに復活してしまっても、相対的に競争力が落ちないよう他国にも「Race to the bottom」とかに従事することないよう釘をさしたりしてる訳だけど、他国の企業には大迷惑?ピラー2に見られるグローバルミニマム税の導入、ピラー1と比較すると、コンセンサス作りの難易度は低いかもしれないけど、Fact Sheetでは単なるグローバルミニマム税ではなく「Strong」なグローバルミニマム税の導入を促している。自国でGILTIを有形償却リターンを撤廃した上、21%に増税する提案をしているので、相対的な競争力が落ちないよう他国もより厳しいグローバルミニマム税を導入して欲しい、ということだろう。ただ、21%は州税も要れると25%とかだからいくら「Strong」って形容しても「ミニマム税」というにはチョッと高過ぎ。米国企業と異なってもともとBase Erosion なんてしてない企業も多かったり、Check-the-BoxとかないんでCFC課税が機能している他国は面食らっているのでは。真面目にやってる他国の多国籍企業から見ると大きなお世話感は否めないだろう。BEATもUTPRみたいに生まれ変わるようなことも書いてあるし。ピラー2は俄かに息を吹き返してるね。
さらに、Fact Sheetには、Inversion規制が甘すぎるのでもっと厳しくすると記載されている。Inversion規制の強化っていうと2017年以前のオバマ政権時代末期がフラッシュバックしてくる。当時はTCJA前で、米国の税制が余りに使い勝手が悪いので、他国に引っ越してしまう法人が急増していてそれを阻止するため厳しい制限を財務省規則という形で乱発してたけど、今回も予めそんな動きを牽制する作戦。でもInversion規制って既に強固過ぎて、特にTCJA以降はInversionでトリガーされる不利益が大きく、Inversionなどほぼできないか、できたとしてもTransition Taxが大きくなったり、BEATに抵触し易くなったり、Downward Attributionもクロスボーダーで適用となってるし、恩典が限られるんじゃないかな。この期のおよんでInversion規制の強化って、これ以上どうやって強化するつもりだろうか。設立国基準を撤廃し、管理支配ベースにする案をまた浮上させるつもりかも。
Inversion対策ってまさしく太陽と北風の童話の世界で、Inversionしないでもいいように相対的に米国の税法をマシにするのが太陽アプローチ。TCJAは税率を下げ、またGILTIとFDIIをセットでLevel Playing Fieldにしたり、してたのでどちらかというと太陽。一方、これだけInversion規制が行き届いている中、北風アプローチのInversion対策強化をうたわざるを得ない辺り、増税案で米国税法がまた他国よりかなり不利なものとなり、国籍離脱を試みる企業が出没するリスクを気にしてるってことなんだろうか。
インフラ投資案+増税案、この内容では共和党からは一票も入らないだろうから、予算調整法の枠で通過させるしかない。その場合、厳格に予算調整法のスコープ内の法律でないといけないので、インフラ投資案のうちどれだけの部分が予算調整法適格となるか不明。
という訳でFact Sheet第二弾でした。バイデン政権の税制改正動向は進展あり次第触れていきたい。次のマイルストーンはグリーンブックかな。
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