共和党の合意なしで景気刺激策の下院の採決が行われ、可決されました。$819 Billion (およそ73兆円)に及ぶ景気刺激策の内訳を見ると、この法案がどのような方向性なのか分かります。
Major provisions of stimulus package
内訳を見ると$275 billionが減税、$523 billionが直接支出、残りがその他となっています。
減税措置ではクレジットやPayroll Taxの一部免除、教育費のクレジットなど、家計にとっては助かる内容です。しかし、ブッシュ政権時代に小切手を送付した方法とは違い、支出をすぐに促すためというより、低~中所得者層の負担を楽にするというニュアンスです。すぐに消費回復に結び付けようとする内容ではありません。
直接支出も失業保険や健康保険、住宅補助など社会福祉が中心です。さらに効率の良いエネルギー政策や奨学金などの教育関連で多くが支出される予定です。
こういった支出や減税は、果たして今年の景気回復を促すでしょうか?私はこの巨額の支出がすぐに景気を押し上げるものではないような気がします。今までの好景気は、基本的には住宅価格の上昇に下支えされた消費の部分が多く、要するに皆無駄遣いをして浮かれていたからだと思います。ところが、景気刺激策とは言うものの、消費を直接刺激するようなものではなく、もっと長期的な効果を狙っている内容が多いと思います。
すぐに景気を押し上げなくても、私は2つの点で期待しています。1つは小切手送付などのようにその場限りの消費を促すものではない点です。今、仮に一律に小切手送付の減税措置をとっても高所得層は消費には使わず貯蓄してしまい、消費を促す効果が少ないでしょう。その点、減税措置として低~中所得者層の可処分所得が増えればじんわりと実質の効果が期待できます。
もう1つは福祉やエネルギー、インフラなど中長期に効果が出る対策を取っている点です。これらはすぐに消費するものではなく、今後の社会の基盤となるものです。社会基盤がしっかり整備されれば今後の成長の基礎となるし、成長が期待できると安心できる世の中になれば、消費も自然と回復するでしょう。
もしかしたら、単なる景気刺激のためではなく、オバマ大統領は今までのアメリカの無駄遣い促進政策を大きく転換するために、今の不景気をうまく利用しているのかもしれません。
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