先週、出張に行く機会があり、空港までタクシーに乗った。タクシーの中って特殊な空間のような気がする。おしゃべりしたほうがいいのか、黙っていたほうがいいのか。今回の運転手はおしゃべりするタイプの人だった。
博士号まで持っていて以前は製薬会社で研究/開発のようなことをしていたらしい。世界のいろいろな国へ行ったことがあって、日本にも行ったことがあるとか。どこから来たの?と聞かれたので知らないかもと思いつつも地名を言うと「あぁ、行ったことがあるよ。ランドマークタワーに上った」とすばらしい回答。ちなみに僕はランドマークタワーには上った事はない・・・。なぜ博士号まで持っていて製薬会社で働いていたのにタクシーの運転手をしているのかは聞かなかった。リタイアした後、小遣い稼ぎと暇つぶしを兼ねてというのが僕の想像なんだけど。。。
「景気はどう?」って聞いてみた。「やっと回復してきたよ」
一番ひどかったのは去年の秋辺りらしい。ピークのときから25%ほど売り上げが減ったとか。今は以前の5%減ほどで「まだ元に戻ったわけじゃないけど、上向きではあるね」。この運転手の見立てだと回復はゆっくりとしたペースになるんじゃないかと。「急激に回復はしないけど確実に良くなっていって欲しいものだね。」
もう1つ面白かったのはタクシー業界のビジネスモデル。地域によって違うかもしれないが、僕の住んでいる町でもタクシーは登録制。運転手になるのは都市中心部のように難しい試験もなく、誰でもドライバーになれる。「免許を持って生きていたら誰でもなれるんだよ。」
不景気になると誰でも簡単に仕事が出来るタクシー運転手になる。ところが車両は登録制だからタクシーを何台も登録してリースしている会社から借りることになる。「(登録済み車両の)リース会社は不景気になったほうが儲かるんだよ。(おそらくこの運転手が借りている)リース会社は20台登録しているけど、不況前は10台しかリースしてなかった。今は20台全部リースしていてウハウハなはずだよ。」
ところが不況なのでお客のほうは逆に減る。稼働台数が増えるから運転手一人当たりの上がりも減る。「運転手が増えて余計に俺にとっては不況になっちまった。」
業界によって景気と連動するところと、逆になるところがあるのは知っているけど、一口に「タクシー業界」といっても業界の中で車両を貸す側と借りる側でまったく逆になっている。どちらの立場になるかで不況も違って見えてくることだろう。
空港までの30分弱で面白い話が聞けた。
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