またApple株の話。
今月当初に「Appleの株価が$500を超えて・・」とブログに書いだが、19日Apple社が配当開始と株の買い戻しプランを発表し、株価はたちまち$600を超えてしまった。Jobs氏は配当を出さない主義だったので、新CEOが投資家プレッシャーに折れて方向展開した模様。Appleの配当率1.8%は、現在のS&P 500全体の配当率1.86%に見合った数字なので、まあぼちぼちでんな。
Apple社の株価が上昇を続けるので、実に多くのMutual Fundがそれぞれのファンドの従来のフォーカスを超えてApple株を買い込んでいるという話が、Wall Street Journalのニュース記事になっていた。
Apple Share Are Too Tempting Not To Bite
Appleが配当を出すことを発表する以前から、すでに40個の配当株ファンドがApple株を買い込んでいたという(まあ、「配当発表を予測していた」という言い訳も今なら使えるけど、この記事が書かれたのは発表前)。また、Small-CapやMid-Capにフォーカスしたファンドの50個がやはりApple株を所持していたという(Apple社は究極のLarge-Cap株なので、完全にフォーカス外)。さらには、外国株ファンド(Ex-US)やHigh-Yield 債券ファンドといったまったく別畑のファンドでも、Apple株を所持していたものがあった。
SEC規定によると、Mutual Fundは資産の20%まで、そのファンドの主旨を離れた投資をしても良いことになっているらしい(20%は高い気がする)。なので厳密な違約ではないものの、どうしても違和感を感じてしまう。さすがに20%までではないが、記事のリストには資産の9.93%をApple株に投資しているMid-Cap Growthファンドもあった。自分のファンドの業績を良く見せたいファンド・マネージャーは、Apple株の誘惑に抵抗できないらしい。こういう抜け穴は下手をすると妙な状況・展開を生み出しかねない。
そうでなくても、Apple株はすでにS&P 500インデックスのの4,4~4.5%に相当する。S&P 500はCap-Weightedと言って各社の時価総額(株価X出回っている株数)に比例したウェイトを使って株価を組み入れるので、自然とApple社のウェイトが大きくなる。
NASDAQ100インデックスは、去年4月Apple株のウェイトが20%を超えたので、規則によりウェイトを置き換えてAppleの割合を12.5%に減らした。でも、Apple株の割合は1年後の今また20%の壁に近づいてきた。
WSJのリストによると、Large-Cap/Growth/Technologyにフォーカスしたファンドには20%近くをApple株に投資しているものかなりもある。個人投資家がApple株を買い、かつインデックスファンドや他のファンドを持って分散しているつもりでも、全体にApple株の占める割合が意外に高かったという展開もありえる。気になる人は、時々MorningstarのPortfolio X-Rayなどで個別株集中度をチェックしてみるのも良いかもしれない。
Economist誌によると、ヘッジファンド業界でもAppleマニアは強く、ヘッジファンドの約3分の1はApple株を所持し、去年のプラス業績はほとんどこのApple株に頼っていたファンドも少なくないらしい。大手ヘッジファンドCitadelでは、去年末日時点で株ポートフォーリオの12%に相当する$5.1ビリオンがApple株だったという。
みんなのあらゆる期待を背負ったApple株。すごいですね。
これも、Appleの株価が上昇している間は問題ない様に見えるが、一旦株価が降下しはじめると、その影響は意外に様々な所に出てくるかもしれない。アップルのファンダメンタルズはまだまだ良好だが、上昇気流に乗ることだけを目的にApple株を買った人達が、何かをきっかけに一斉にApple株を売り出したら・・・と想像するとちょっと怖い気もする。
Apple社の好調度は相場指数の解釈にも影響してくる。例えば、S&P 500全体の2011年Q4の収益は前年比で6.7%増で、企業の著しい業績回復のしるしと言われた。しかし、この収益上昇の大部分はApple社から来ていて、Apple社を除いて収益増加率を再計算すると3.6%だという。3.6%というのも悪くない数字だけど、Apple社の勢いと、他企業全般の勢いがまったく違うということなのだろう。これだけアップル社が大きく勢いがあると、相場関連のニュースを聞いても、それがAppleの動きなのか、それともアップル以外の相場の動きなのか、場合によっては考えなくてはならない。
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