国債の種類
アメリカの国債はさまざまな種類があります。大きく分けるとBills, Notes, Bondsと U.S. Savings bonds の2種類になります。Bills, Notes, Bonds は無記名式(償還前に市場で売り買いできる)、U.S. Savings Bonds は記名式(登録された人しか払い戻しできない)になります。Treasury Bill (T-Bills)
T-Billは1年以下の短期の国債です。額面$1000のものをDiscount(割引)された価格で買い、償還時に額面が返ってきます。購入価格と額面との差額が利息になります。一般的な1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月*1の他に1週間以下(4日や7日といったもの)や1ヶ月以下(12日、19日など)が売りに出される事があります。Treasury Notes/Bonds
償還までの期間が10年以下のものをNotes、10年より長いものをBondsと呼びます。実際に発行されている期間は一般的なものは2年、5年、10年、30年です。ただし、30年もの国債は新規発行は停止されましたので、新規発行で手に入れることが出来る最長の国債は10年になりました。 Reopeningといわれる追加発行はこれらの期間から3ヶ月、または6ヶ月あとに発行され、償還までの期間がその分短くなっています。例えば5年もの国債の発行があり、そのReopeningが3ヵ月後に発売になれば償還までの期間は4年9ヶ月になります。Reopeningはその時の利率によって額面よりも高くなる場合があります。 NotesとBondsは6ヶ月ごとに利息が支払われ、償還時には額面$1000が払い戻されます。額面は$1000ですが、新規発行分はDiscountされた価格で購入します。利率はCoupon Rateと言われる6ヶ月ごとに支払われる利息に対するものと、Discountで買ったものが額面で返ってくる事による利益の両方を考える必要があります。そこで、それらを含めてYield(利回り)と呼んで、比較しやすくしています。どこで買ったら良いのか
証券会社
国債を買うのにいちばん簡単な方法は証券会社を通して買う方法でしょう。すでに株式などの口座を持っていて、取引のある証券会社になら電話一本で買うことが出来ます。証券会社を通す場合は、新規発行のものも発行済みでそれが市場で売買されているもの(Secondary Market)の両方とも買うことが出来ます。 証券会社のメリットは、Secondary Marketから買うことも出来るので、いつでも購入することが出来ることです。NotesやBondsは新規発行は月に1回程度(毎月とは限らない)ですし、新規発行がもうない10年を超える期間の国債はSecondary Marketでしか買えません。また、証券会社の口座で国債を維持しておけば、買った時と同様、売ることも非常に簡単に出来ます。 証券会社のデメリットはなんと言っても手数料でしょう。1回の取引で最低でも$50程度かかりますから、少ない金額を買うのであれば、利息がほとんど無くなってしまう事になります。また、これは証券会社だからではありませんが、Secondary Marketでの国債の取引はその時の「時価」になるわけで、投機的要素が多くなります。もちろん、時価で買って償還まで持っているのなら新規発行とそれほど変わりはないのですが、それなら手数料が掛からない方法で新規発行を買ったほうがいいでしょう。投機的な債券の売買をしたいのであれば Bond Mutual Fund にしたほうがDiversifyという意味ではいいでしょう。 いずれにせよ、投機的要素が増える場合はFI的にはお勧めできません。証券会社から国債を買う場合は手数料が掛かること、Secondary Marketであることなど理解した上で、それでもメリットがある場合に限るほうがいいでしょう。Treasury Direct
新規発行の国債を買うのであれば、Treasury Directを使って直接買う方法がお勧めです。オンライン、電話、または郵便で購入の申し込みが出来ます。オンラインでの残高照会や再投資などもできますから、証券会社の口座と同じような感覚で利用できます。 Treasury Directのメリットは手数料が掛からないことです。このため、証券会社を通した場合は買うメリットが少ない国債も買うことが出来ます。短期のT-Billは利息の絶対額が少なく、手数料を払っては元さえ取ることが出来ません。 デメリットは新規発行しか買えない事です。T-Billは週に1回程度、Notesは1ヶ月に1回程度の発行ですから、思いついたその日にすぐ買う、ということはできません。ただし、私はこれをメリットとして考えています。というのも、投資は長期的な視野にたって計画的にするのがFI的と考えているからです。ですから、しっかり資金運用計画を考えて、それに基づく投資なら1ヶ月に1回買えれば十分と言えます。 もうひとつのデメリットは、もし償還前に国債を売る必要がある場合、Treasury Directの口座にある国債を証券会社の口座に移し、その後、証券会社にSecondary Market で売ってもらう必要がある、ということです。Treasury Directで買う場合は、基本的には新規発行で買って償還までずっと持っているのが基本なのです。このデメリットは、国債を自分の資産運用の中でForced Saving(強制的な貯蓄)と考えれば、デメリットと言うよりそういう特性であるだけと言えます。CD vs. 国債
国債や社債など債券は、元本が返ってくるまでの期間が決まっていることから、銀行のCD(定期預金)に近い性質を持っていると言えます。もし自分がChecking口座を持っている銀行でそのままCDに貯金するのなら、ぜひ国債を代わりとして考えて見てください。大抵の銀行のCDよりも利率はいいですし、下記に示す違いを理解すればほとんどの場合で国債のほうが有利になるはずです。国債 | CD | |
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期間 | ・1ヶ月から10年まで ・1年物の新規発行はない | ・1ヶ月から5年まで ・1日単位で好きな期間を設定できる |
金利 | 中程度 | 低~中 |
税金 | Federalのみ課税 | FederalとState両方 |
保証 | なし(デフォルトリスクは実質的にない) | FDICにより$100,000まで元本保証 |
中途償還(Call) | あり | なし |
Treasury Directでの買い方
Treasury Direct での国債の買い方を見ていきましょう。アメリカ在住の方はSSNと銀行口座があれば、2週間程度で取引ができるようになります。口座の開設
一旦口座を作ってしまえば全てオンラインで取引できるTreasury Directですが、口座の開設だけはサインが必要なのでオンラインでできません。口座を開設するには2つの方法があります。1つめの方法は国債の購入申込書(Treasury Bill, Note, & Bond Tender - PD F 5381)を送付して、購入と同時に口座を開設する方法。 もうひとつは新規口座申込書(New Account Request - PD F 5182)を送付して、口座を開設する方法です。どちらのフォームもPublic Debtの申請書オーダーページからダウンロードする事ができます。 購入申込書と購入する金額分の小切手を同封して送れば、購入と同時に口座も開設されますので、余計な手間がなく便利でしょう。ただし、T-Bill(満期が1年未満)を買う場合は、個人の小切手では受け付けてくれません。T-Billの場合は、Money OrderかCertified Checkでなければなりません。Certified Checkを無料で作ってもらえる場合は良いのですが、手数料がかかる場合、T-Billだと利息の絶対額が少ないので、多額のT-Billを買わないと割に合わないでしょう。T-Billを少しだけ買ってみたい、と言う場合には、最初に口座だけ開設する方法をお勧めします。 最初に口座だけ開いて、その後、国債を購入する場合は、申込み用紙(PD F 5182)だけ送れば、口座を開く事ができます。申込みする際に、自分が指定した銀行口座から直接引き落としにすれば、全ての取引をオンラインでできるようになります。こうすればMoney OrderやCertified Checkの手数料を払わなくて済むので、小額から始めたい人にはいいでしょう。私はこちらの方法で口座を開き、2週間ほどで口座の開設通知が届きました。オンライン取引
オンライン取引は通知に書いてある口座番号を使って行います。取引は月曜から金曜のアメリカ東部時間の8a.m.から8p.m.の間にElectronic Services for Treasury Bills, Notes, and BondsからVirtual Lobbyへ入って行います。残高照会もこのVirtual Lobbyで行うのですが、曜日と時間が決まっているのは少し不便です。国債の発行日は事前に決まっているので、計画的にアクセスしましょう。 国債の取引は、国債発行のアナウンス、オークション、発行の順で行われます。T-Billの場合はオークションの前の週の木曜日にアナウンスがあり、月曜にオークション(ここで値段が決まります)、そして水曜日に発行という流れになります。オークションが行われる日はT-Billは毎週月曜日、NotesとBondsは毎月15日か月末、まれに1日と、大体パターンが決まっています。 国債の発行は全てTreasury Marketable Securities Offering Announcement Press Releasesのページでアナウンスされます。自分が買おうと思っているタイプに合わせ、オークション前に注文を出します。アナウンスがされてない国債でもT-Billのようにほとんど毎週発行されるものはあらかじめ注文を出しておく事もできます。 TreasuryDirectでは購入できる国債の償還期限が限られていて、例えば 4 Weeks (28日間)のものは買えません。購入できるものだけがリストされますので、その中から選ぶ事になります。個人で国債に投資しようと言う場合は長期的なものですから、4 Weeks がなくても問題はないでしょう。選択可能な期間(3ヶ月、6ヶ月、2年、5年、10年)で再投資を繰り返せば、大抵、自分の望みどおりの期間になります。3年間、投資したければ、2年を購入後、償還時に6ヶ月で再投資、さらにその後もう1回、6ヶ月で運用すればいいのです。 選択可能な期間が限られているので、金利の動向次第では最初からCDで3年固定にしたほうが結局は得、と言う場合もあるでしょう。このような軽いリスク(元本は間違いないが、最高の利息ではないかもしれないと言うリスク)なら、将来、金利が上がりそうなときは、低い利率のCDで固定するより、2年目で再投資をする国債のほうが有利になるかもしれません*2。投資家として各自で判断する部分になります*3。利率の比較方法
国債の利率(Interest Rate)はそのままでは他の金融商品、例えばCDの利率と比べる事ができません。T-Billの利率
T-Billは途中での利息支払いがなく、Discountで買い、額面価格が償還時に返ってきます。自分で購入価格、額面、期間(日数)を使って表面金利を計算すれば、それがCDなどと比較できる利率になります。T-Billの利率のページでは、「Investment Rate %」と表されている利率がCDと比較するときの元になる利率です(税金の違いは後述)。この利率が表面金利に相当し、比較する場合の利率として使います。その左にある「Discount Rate %」とは額面を元にした下記の計算方法が使われています*4。
1年を360日扱いして計算することや、額面を分母にしているので、他の利率と同じ比較ができないのです。T-Billの場合は常にDiscount Rate は比較可能な利率よりも低く表示されます。
Treasury Note/Bondの利率
NoteとBondは半年毎にCouponと呼ばれる利息の支払いがあり、償還時に額面価格=Face Value(またはPar Value)が返ってきます。また、購入するときは Discount と言って、額面価格よりも安い値段で買うことになります*5。そのため、単純にCoupon Rate(またはInterest Rate)と呼ばれる半年毎の利息を、CDの利率と比べる事ができないのです。そこで、IRR(Internal Rate of Return = 内部収益率)というものを計算し、それが表面金利に相当しますので、これを使います。IRRの計算は面倒なのでここでは示しませんが、Excelなどのソフトや財務電卓で簡単に計算できます。Treasury Directでは、IRRを「Yield %」として表示しています。この数字がCDなどと比べるときの表面利率に相当します。ここでNote/BondのYieldは複利計算ではないことに注意してください。CDなど銀行の金融商品の場合は、表面利率を「Interest Rate」やAPR(=Annual Percentage Rate)と言い、複利計算で得られる利回りを「Yield」と言います。同じ「Yield」でも意味が違いますので、BondのYieldとCDのAPRを比較しなければなりません。
税率の影響
T-Bill, Note, Bond は州税が非課税になっています。そのため、上記の方法で表面金利が分かったら、それを税引き後の利率と比較します。T-Bill, Note, Bond の場合は実質金利は 実質金利 = 表面利率 × (1-連邦税率) で計算されます。一方、CDの場合は州税もかかるので、 実質金利 = 表面利率 × (1-連邦税率-州税率) となります。計算上と現実の違い
上記のように実質金利を計算する事で、計算上、どちらが有利になるか、ということは分かります。ただし、これは計算上の話で、利息が途中で支払われてしまうNoteとBondの場合は、計算上と現実の違いも考慮に入れたほうが良いでしょう。CDは利息を毎月受け取るか、そのまま同じCD口座に残して複利で運用するか、選択できます。複利で運用する場合、利息がさらに利息を生みます。つまり、長期間使わないお金を複利で運用したい場合は、CDは手軽だと言えます*6。 国債の場合は利息が支払われてしまうので、それを複利で運用する事はできません。いくらCDよりも実質金利が良くても、その利息を無駄遣いしてしまっては意味がありません。国債を買う場合はあらかじめ、利息の運用先を決めておくと良いでしょう。Savings Bond
Savings Bond は記名式のアメリカ国債です。無記名式のT-Bill/Note/Bondのように流通市場(secondary market)で売り買いはできません。Savings BondにはSeries EE(シリーズ ダブル イー)および I Bond(アイ ボンド)があります。Savings Bondの特徴
- 購入単位/額面
- 購入条件
- 州税/市税が非課税
- 換金