メインコンテンツに移動

TIPSの利回りがマイナスに

Nobu

先日のThe Wall Street Journal の記事でTIPS(Treasury Inflation Protected Securities)の利回り(Yield)がマイナスになったと言うものがあった。

Yields on TIPS Go Negative

Treasury Directで確認してみると、確かにオークションの結果はマイナス。

クリックすると拡大

TIPSは元本が消費者物価指数(CPI)に連動して変わる。利率は固定だが、実際にもらえる利息は元本x利率で決まる。元本がインフレのときはだんだんと増えていくので、利息もだんだんと増えていく。デフレだと減るがゼロにはならない。償還がくるとCPIに連動して増えた元本が返ってくる。もしデフレでも最初の元本よりも低くはならない。

こうやって考えると、「どうして利回りがマイナスになるのか?」という疑問が湧く。ブルームバーグに少しヒントがある。

米国債:TIPS入札、初のマイナス利回り-インフレ期待

つまり、普通の国債がすごい低い利回りなのに、TIPSはインフレに連動して利息がもらえるので実質的に高い利回りなってしまう。だから通常よりも高い値段で買っても得になるから最初に多く払っても構わないと言うことらしい。その分、最初の1年の利息払いでは元が取れないから「利回りはマイナス」という表現になったのだろう。

大雑把な計算するとこんな感じになる。今回のTIPSの利率(利回りではなく、利息計算のときに使われる利率)は0.5%。つまり、$100の元本に対して年に$0.50の利息、5年間では$2.50がもらえる。ところが、このTIPSを買うためには$105.508607払わなければならない。このままだったら$3ほどの損。それを5年間で割るとマイナス$0.60ほど。TIPSの利息払いは半年毎だったり、利回りは内部利益率(IRR)で計算するので誤差があるが、これで大体、-0.55%と一致する。

上記の計算はインフレがまったく無かったときだから、この「利回り(Yield)」というのは名目上と言うことになる。投資家は実際はインフレで元本が増えてプラスになるはずと思って買っている。となると、TIPSを買うのはインフレに対するProtectionと言うよりもインフレに賭けていると言うことになる。利回りがマイナスと言う表現になったから特に取り上げたが、この原則は常に変わらない。

コメントを追加

認証
半角の数字で画像に表示された番号を入力してください。