この何年か、財政難でたばこ税を上げている州や市が多い。
一番たばこ税が高いのはNY州で、一箱ごとの州税が$4.35(+連邦税が$1.01。これも2009年に39セントから増税)。加えて一箱$1.50の市税を掛けるNYCでたばこを買おうとすると、一箱$12〜13もするという。 NYCでニコチン中毒になると大変そうだ。
NJに行けば$8位で買えるようだが、全国レベルで見るとそれも高め。
例えば、南部やたばこ生産州(KY, VA, NC, SC, GA, TN)では、たばこ税はもっと安く平均一箱48.5セント。一番安いのはミズーリ州で一箱17セント。これらの州では一箱$5弱~6強ほどで買える。
Economist誌の記事によると、この税金と末端価格の差に眼を付けて、ヴァージニアのような安い州(税金一箱30セント、小売価格$5.43)でたばこを大量に買い付け、NYやNJのような高い州に輸送して売りさばくという違法商売(おそらく組織犯罪)が栄えていて、Smurfingと呼ばれるらしい。
この裏商売は意外に大規模で、NJ州財務局は、州内で売られるたばこの40%が他州から密輸されたものと計算している。Bureau of Alcohol Tobacco Firearms and Explosives(ATF)によると、こういったたばこ密売によって年間総額$10ビリオンの税歳入が失われるという。
Economist誌によると、このたばこの密売は現時点では違法ドラッグよりも利益マージンが高い。トラックを使えば1回の輸送で、何十万ドルもの利益が出るという(この話はこちら)。
また、違法ドラッグのディーラーは見つかって逮捕されると、何十年もの懲役を受けるのに比べると、たばこ密売は逮捕されても懲役5年以下。
州税制の格差が、犯罪組織にとってリスクが低くて利潤の高い「しのぎ」を作りだしててしまったという、何とも皮肉な話。
私は喫煙者でもないし、たばこ密売を正当化するつもりもないけれど、これは、あまり深い考慮をすることなく制定・施行された法律が、意図せぬ展開を招いたりする典型例ではないだろうか。
密売防止対策として、ヴァージニア州では、5000本以上のたばこを”With intent to sell elsewhere”で購入・所持することが違法になった。5000本というと25カートンなので、出張ついでに知り合いの分まで買い出しを・・・なんて考えている人は、Smuggler・密売たばこディーラーに間違えられないように気をつけて下さい。
違法ではあるものの、いわゆる「せどり」という行為ですよね(
通りすがり 2012/12/11(火) - 14:50違法ではあるものの、いわゆる「せどり」という行為ですよね(Financial系でいうならば、「鞘取り」ですか)。
価格不均衡を使った差額を得る行為ですが、こういった価格不均衡は自由競争(需要と供給)によって是正されるというのが、この国の主義の基本じゃなかったんですかねえ(笑
>通りすがりさん おっしゃる通り。これだけ価格差ができれば
ポピー 2012/12/11(火) - 20:42>通りすがりさん
おっしゃる通り。これだけ価格差ができれば、何らかの形でArbitrageが出てくるのは当たり前というか、トレードや商売の基本じゃないかと思うんです。
でも、弁護士の背景を持つ政治家さんたちは、もっとトップダウンに考えて、市場のIncentiveみたいなことはあまりかんがえないんでしょうかね。
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