前回はいよいよ2004年のAJCAで導入されたInversion KillerのSection 7874に話しが至った。Version 1.0のMcDermottから数えて20年以上の月日を経て導入されたInversionに特化した法律だ。
ここに至る経緯を簡単におさらいしておくと、記録に残っている最初のInversionは1983年のMcDermottのケース。これにてVersion 1.0の誕生となり、「既存の」CFCとの株式交換で実行された。その対抗策としては(今から考えると着眼点が面白いというか、ちょっと・・っという感じもあるけど)、McDermottのケースでCFCのE&PにSec. 1248でみなし配当課税できなかった反省から、Section 1248が改訂され、このような間接的な株式譲渡でもみなし配当課税できるようにしている。でもこの改訂はInversionに関しては全く意味がなく、Version 2.0にグレードアップされたInversionは新設のCFCとの株式交換で実行されるようになる。新設のCFCにはE&Pがないからみなし配当課税するものがない、という仕掛けだ。気の毒なSection 1248(i)はInversionの局面ではその後語られることすらなくなる陰の存在だ。Version 2.0の代表はHelen of Troyだろう。
Helen of Troy等でInversionを危機に感じた財務省はSection 367の財務省規則を改訂する。一旦、沈静化されたものの、Inversionは見事に復活し、Version 3.0となる。Cooper IndustriesとかTycoがInversionしていった時代だ。新Section 367財務省規則には効果がないことが一般の知るところなり、Inversionはますます注目を集める。そこで今度こそ、という感じで登場したのがSection 7874となる。
Section 7874の概要は前回触れているのでそちらを見てもらいたいが、米国法人の既存の株主が60%以上再編後の外国法人の株式を持ち続けているとSection 7874に抵触する。したがって最初の関門は持分%となる。この場合の既存の株主というのは米国の株主だけでを見る訳ではない点、Section 367のテストとは異なる。単独Inversionの場合には100%株主が継続するので、基本Section 7874に抵触することなるが、そこに一つだけ例外がある。それが前回触れたSBAテストに基づく例外だ。
SBAテストの趣旨は仮に持分が継続している場合でも、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが実体を伴うある程度のサイズの事業に従事している場合、再編にはタックス目的以外の事業目的が認められ、Section 7874の適用はないということになる。
Section 7874の適用がない=全て非課税という訳ではなく、単独Inversionであれば、仮にSBS例外規定を満たしてSection 7874に抵触しないということになったとしても、50%の継続性は当然存在することからSection 367に基づく株主レベル課税は適用される。また、そもそも取引が内国法の通常の非課税条項(例、Section 351、Section 368)に基づいて非課税となるというのが出発点で、内国法で課税であればSection 367の登場を待つまでもなく、課税取引となる。
Section 367の株主レベル課税がInversionをスローダウンさせないことは前回までに十分に話したので、Inversion実行の際の鍵はSection 7874の適用有無となる。単独Inversionの場合、Section 7874の80%持分を超えてしまうので、外国法人が税務上は外国法人扱いとならないという最悪の結果となり兼ねず、これを敢えて実行するにはSBA例外規定の適用有無が最重要課題となる。
Section 7874が制定された当時のSBA規定の考え方は、Facts and Circumstances (F+Cテスト、すなわち個々のケースを個別に判定)、に加えて10%の安全ガイドラインという二本立てのものだった。10%安全ガイドライン下では、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが10%以上の従業員、資産、売上を持っていれば、機械的にSBAが満たされたと認定するというものだ。
この10%の安全ガイドラインは財務省から見ると余りに寛容と判断され、2009年には撤廃される。結果としてF+Cテストのみとなる。しかし、これでもかなりの単独Inversionが実行される。このPost Section 7874時代の単独InversionはVersion 4.0と言える。F+CでSBAテストを満たしている点が特徴だ。また、従来のInversion先であったBermudaなどのタックスヘイブンは姿を消し、SBAテストを満たす可能性が高い(けど税率が比較的低い)英国、スイス、アイルランドがより望ましい(Preferred)行き先となる。
この頃に米国とBarbadosの租税条約が使えなくなったこともあり、過去にタックスヘイブンにInversionした法人もが、英国等に国籍変更(Re-domiciliation)するケースが多くみられるようになった。引越し(!)みたいなもんだけど、実際には株式交換等の組織再編。この頃はタックスヘイブンのイメージが急激に悪化していた頃でもあり、そのようなイメージ的な意味でも英国のような「立派」な国に引っ越す傾向が高まった。英国と並んでアイルランドも多かったけど、イメージ的にはどうなんだろう。バミューダよりはマシかもね。Version 3.0の代表格だったCooper Industriesも風向きを読むのが早く、ちゃっかりとアイルランドに越している。僕たちの業界に近いところではAccentureもアイルランド引越し組だった。
止まることを知らない単独Inversionに業を煮やした財務省はあからさまな締め付けに出る。2012年のSBA規則の変更だ。これを期にInversionはVersion 5.0に入ることとなる。ここからは次回。
ここに至る経緯を簡単におさらいしておくと、記録に残っている最初のInversionは1983年のMcDermottのケース。これにてVersion 1.0の誕生となり、「既存の」CFCとの株式交換で実行された。その対抗策としては(今から考えると着眼点が面白いというか、ちょっと・・っという感じもあるけど)、McDermottのケースでCFCのE&PにSec. 1248でみなし配当課税できなかった反省から、Section 1248が改訂され、このような間接的な株式譲渡でもみなし配当課税できるようにしている。でもこの改訂はInversionに関しては全く意味がなく、Version 2.0にグレードアップされたInversionは新設のCFCとの株式交換で実行されるようになる。新設のCFCにはE&Pがないからみなし配当課税するものがない、という仕掛けだ。気の毒なSection 1248(i)はInversionの局面ではその後語られることすらなくなる陰の存在だ。Version 2.0の代表はHelen of Troyだろう。
Helen of Troy等でInversionを危機に感じた財務省はSection 367の財務省規則を改訂する。一旦、沈静化されたものの、Inversionは見事に復活し、Version 3.0となる。Cooper IndustriesとかTycoがInversionしていった時代だ。新Section 367財務省規則には効果がないことが一般の知るところなり、Inversionはますます注目を集める。そこで今度こそ、という感じで登場したのがSection 7874となる。
Section 7874の概要は前回触れているのでそちらを見てもらいたいが、米国法人の既存の株主が60%以上再編後の外国法人の株式を持ち続けているとSection 7874に抵触する。したがって最初の関門は持分%となる。この場合の既存の株主というのは米国の株主だけでを見る訳ではない点、Section 367のテストとは異なる。単独Inversionの場合には100%株主が継続するので、基本Section 7874に抵触することなるが、そこに一つだけ例外がある。それが前回触れたSBAテストに基づく例外だ。
SBAテストの趣旨は仮に持分が継続している場合でも、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが実体を伴うある程度のサイズの事業に従事している場合、再編にはタックス目的以外の事業目的が認められ、Section 7874の適用はないということになる。
Section 7874の適用がない=全て非課税という訳ではなく、単独Inversionであれば、仮にSBS例外規定を満たしてSection 7874に抵触しないということになったとしても、50%の継続性は当然存在することからSection 367に基づく株主レベル課税は適用される。また、そもそも取引が内国法の通常の非課税条項(例、Section 351、Section 368)に基づいて非課税となるというのが出発点で、内国法で課税であればSection 367の登場を待つまでもなく、課税取引となる。
Section 367の株主レベル課税がInversionをスローダウンさせないことは前回までに十分に話したので、Inversion実行の際の鍵はSection 7874の適用有無となる。単独Inversionの場合、Section 7874の80%持分を超えてしまうので、外国法人が税務上は外国法人扱いとならないという最悪の結果となり兼ねず、これを敢えて実行するにはSBA例外規定の適用有無が最重要課題となる。
Section 7874が制定された当時のSBA規定の考え方は、Facts and Circumstances (F+Cテスト、すなわち個々のケースを個別に判定)、に加えて10%の安全ガイドラインという二本立てのものだった。10%安全ガイドライン下では、再編後に親会社となる外国法人の設立国でグループが10%以上の従業員、資産、売上を持っていれば、機械的にSBAが満たされたと認定するというものだ。
この10%の安全ガイドラインは財務省から見ると余りに寛容と判断され、2009年には撤廃される。結果としてF+Cテストのみとなる。しかし、これでもかなりの単独Inversionが実行される。このPost Section 7874時代の単独InversionはVersion 4.0と言える。F+CでSBAテストを満たしている点が特徴だ。また、従来のInversion先であったBermudaなどのタックスヘイブンは姿を消し、SBAテストを満たす可能性が高い(けど税率が比較的低い)英国、スイス、アイルランドがより望ましい(Preferred)行き先となる。
この頃に米国とBarbadosの租税条約が使えなくなったこともあり、過去にタックスヘイブンにInversionした法人もが、英国等に国籍変更(Re-domiciliation)するケースが多くみられるようになった。引越し(!)みたいなもんだけど、実際には株式交換等の組織再編。この頃はタックスヘイブンのイメージが急激に悪化していた頃でもあり、そのようなイメージ的な意味でも英国のような「立派」な国に引っ越す傾向が高まった。英国と並んでアイルランドも多かったけど、イメージ的にはどうなんだろう。バミューダよりはマシかもね。Version 3.0の代表格だったCooper Industriesも風向きを読むのが早く、ちゃっかりとアイルランドに越している。僕たちの業界に近いところではAccentureもアイルランド引越し組だった。
止まることを知らない単独Inversionに業を煮やした財務省はあからさまな締め付けに出る。2012年のSBA規則の変更だ。これを期にInversionはVersion 5.0に入ることとなる。ここからは次回。
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