財務省が抜き打ち的に発行したInversion規則。その中に含まれたSection 385の規則案は、長らくDefunct状態で眠っていたSection 385の叩き起こす十分なパワーを持っている。
従来の過少資本に対する米国のアプローチおよびその対策は「第三者だったら貸してくれたか?」という分析を数量的にサポートしておくことが最重要課題だった。すなわち、将来のネットキャッシュインフローを基に元利払いができるのか、キャッシュフローのタイミングにミスマッチはないか、万一不測の事態に陥った際に十分なEquityクッションがあるか、代替のファイナンスソースはあるか、等の分析サポートを文書化しておくことが大切だった。一旦、借り入れ能力ありと判断される場合には、借入金の使途目的は過少資本税制の関知するところではなかった。
今回の規則案では、この考え方を根本から覆し、仮に借入能力がある場合でも、その使途が財務省が考えるところの邪(よこしま)というか不純な動機に基づくものは、ローンではなく株式にしてしまうというかなり乱暴なもの。これは過少資本税制というよりもEarnings Strippingに対する牽制だ。もちろん、借入能力がない場合にはアーニングス・ストリッピング以前の問題として、本来の過少資本税制の考え方で株式扱いとなるが、それは従来からもそうだ(現在でもまずはSection 385でローンとなって初めてSection 163を検討する必要が生じる)。その意味では規則案はSection 385のスコープを逸脱しているようにも見え、そのせいか、行政機関である財務省が三権分立に基づき(すなわちSection 385で財務省に与えられている権限に基づき)、なぜこのような規則案を制定できるかという点を規則案の前文で冗長と思えるほど延々と説明している。Section 7874ポーションもそうだけど、前文でなぜ財務省にこのような権限があるかという説明が長ければ長い程、その権限は怪しいと見るのが常識だ。
前回の「Inversion(19)」で触れたが、Section 385の条文そのもので財務省が与えられている権限(Section 385の最初のパートと2番目のパート)を読んでみると、使途目的に基づく規制はスコープに入っていないように見える。ということは三権分立に反する違憲行為?でも、もし仮に憲法違反だとしても、この扱いで実際に被害にあい(でないと訴訟当事者適格(Standing)がない)、それをDistrict Court(またはTax Court)、Circuit Court、場合によっては最高裁まで持ち込むのは10年以上のプロセスとなり、現時点では財務省規則に従わざるを得ない。
で、財務省は次の3つの使途を動機不純と考えた。基本的に資本取引っぽい取引3つだけど、1)関連親会社に配当をローン・手形で行うようなLeveraged Dividend、2)Section 304となる関連会社間の株式譲渡の対価をロン・手形で支払うこと、3)グループ内再編を資産譲渡の形で実行する際に対価をローン・手形で支払うこと、だ。これらの取引は財務省が考えるに、バランスシートの資本を借入にすり替えるために濫用されており、ローンではなく株式と扱うと宣言されている。Leveraged Dividendはかなり一般的なEarnings Stripping法で、従来は問題なく認められていた取引なのでここに来て完全な方向転換と言える。日米租税条約がそうであるように近年、親子間の配当に対する源泉税がゼロ%と規定されるケースがあるが、これは個人的にはLeveraged Dividendを自由にやって下さい、というお墨付きメッセージが込められているのかと勘違いしていたが(そんな訳ないか・・?)、やっぱり決してそんな訳ではなかったようだ。
さらに、実際にローン・手形を対価としてこれらの取引を実行するのと同様の懸念が、実際には現金等の資産を対価に使っているが、それを関連者間ローンでファイナンスしてい場合にも存在するとしている(それはその通り)。これがいわゆる「Funding Rule」と規定されているものだ。すなわち、関連者間ローンの主たる目的が上の3つの取引と認定される場合にはそのローンは株式扱いとなる。ローンと動機不純な取引に紐付きの関係があるかどうかの判断は個々のケースの事実関係に基づくと一義的には規定されているが、この主観的判断に加えて「動機不純取引実行の前後各々36ヶ月以内に起こった関連者間ローンは全て問題となる取引目的であった」とする推定規定を設けている。通常の推定規定(Presumption)は納税者側で事実関係を基に反証できる(Rebuttable)タイプが多いが、今回の推定はナンと「Irrebuttable(=反証不可)」、すなわちStrict Liability的な厳しいものとなっている。前後各々36ヶ月って言えば足掛け6年(!)だ。そんな長い期間に亘りTaintされるとなるとこの関係を切り離すのは容易なことではない。いくらお金に色はないとは言え・・。極めて些細な例外規定として、グループ内の通常業務内の買掛金とか未払金は関連者間ローンには含まないとされる。ただし、キャッシュプール等の財務サービスはその範疇ではないので、それらのシステムに基づくローンはFunding Ruleの対象となる。
結構とんでもないルールな感じ。もしかすると何の悪気もない日本企業もただ配当しただけで関連者間ローンが株式に変わったしまうようなリスクがあるようにも見える。それは酷い。こんなルールは今まで散々Leveraged Dividendとか濫用しまくってたMNCだけを対象にして欲しい。でもこれが悲しいかなグローバルスタンダード。外国では当たり前のことを日本流に異なる切り口で良かれと思ってやっていると、恩典を享受していないのにペナルティーだけは受けるような理不尽な結果となり得る。OECDのBEPSもまさにそのパターン。という訳で次回ももう少し新規則、特にアーニングス・ストリッピングの規則案に関して。
従来の過少資本に対する米国のアプローチおよびその対策は「第三者だったら貸してくれたか?」という分析を数量的にサポートしておくことが最重要課題だった。すなわち、将来のネットキャッシュインフローを基に元利払いができるのか、キャッシュフローのタイミングにミスマッチはないか、万一不測の事態に陥った際に十分なEquityクッションがあるか、代替のファイナンスソースはあるか、等の分析サポートを文書化しておくことが大切だった。一旦、借り入れ能力ありと判断される場合には、借入金の使途目的は過少資本税制の関知するところではなかった。
今回の規則案では、この考え方を根本から覆し、仮に借入能力がある場合でも、その使途が財務省が考えるところの邪(よこしま)というか不純な動機に基づくものは、ローンではなく株式にしてしまうというかなり乱暴なもの。これは過少資本税制というよりもEarnings Strippingに対する牽制だ。もちろん、借入能力がない場合にはアーニングス・ストリッピング以前の問題として、本来の過少資本税制の考え方で株式扱いとなるが、それは従来からもそうだ(現在でもまずはSection 385でローンとなって初めてSection 163を検討する必要が生じる)。その意味では規則案はSection 385のスコープを逸脱しているようにも見え、そのせいか、行政機関である財務省が三権分立に基づき(すなわちSection 385で財務省に与えられている権限に基づき)、なぜこのような規則案を制定できるかという点を規則案の前文で冗長と思えるほど延々と説明している。Section 7874ポーションもそうだけど、前文でなぜ財務省にこのような権限があるかという説明が長ければ長い程、その権限は怪しいと見るのが常識だ。
前回の「Inversion(19)」で触れたが、Section 385の条文そのもので財務省が与えられている権限(Section 385の最初のパートと2番目のパート)を読んでみると、使途目的に基づく規制はスコープに入っていないように見える。ということは三権分立に反する違憲行為?でも、もし仮に憲法違反だとしても、この扱いで実際に被害にあい(でないと訴訟当事者適格(Standing)がない)、それをDistrict Court(またはTax Court)、Circuit Court、場合によっては最高裁まで持ち込むのは10年以上のプロセスとなり、現時点では財務省規則に従わざるを得ない。
で、財務省は次の3つの使途を動機不純と考えた。基本的に資本取引っぽい取引3つだけど、1)関連親会社に配当をローン・手形で行うようなLeveraged Dividend、2)Section 304となる関連会社間の株式譲渡の対価をロン・手形で支払うこと、3)グループ内再編を資産譲渡の形で実行する際に対価をローン・手形で支払うこと、だ。これらの取引は財務省が考えるに、バランスシートの資本を借入にすり替えるために濫用されており、ローンではなく株式と扱うと宣言されている。Leveraged Dividendはかなり一般的なEarnings Stripping法で、従来は問題なく認められていた取引なのでここに来て完全な方向転換と言える。日米租税条約がそうであるように近年、親子間の配当に対する源泉税がゼロ%と規定されるケースがあるが、これは個人的にはLeveraged Dividendを自由にやって下さい、というお墨付きメッセージが込められているのかと勘違いしていたが(そんな訳ないか・・?)、やっぱり決してそんな訳ではなかったようだ。
さらに、実際にローン・手形を対価としてこれらの取引を実行するのと同様の懸念が、実際には現金等の資産を対価に使っているが、それを関連者間ローンでファイナンスしてい場合にも存在するとしている(それはその通り)。これがいわゆる「Funding Rule」と規定されているものだ。すなわち、関連者間ローンの主たる目的が上の3つの取引と認定される場合にはそのローンは株式扱いとなる。ローンと動機不純な取引に紐付きの関係があるかどうかの判断は個々のケースの事実関係に基づくと一義的には規定されているが、この主観的判断に加えて「動機不純取引実行の前後各々36ヶ月以内に起こった関連者間ローンは全て問題となる取引目的であった」とする推定規定を設けている。通常の推定規定(Presumption)は納税者側で事実関係を基に反証できる(Rebuttable)タイプが多いが、今回の推定はナンと「Irrebuttable(=反証不可)」、すなわちStrict Liability的な厳しいものとなっている。前後各々36ヶ月って言えば足掛け6年(!)だ。そんな長い期間に亘りTaintされるとなるとこの関係を切り離すのは容易なことではない。いくらお金に色はないとは言え・・。極めて些細な例外規定として、グループ内の通常業務内の買掛金とか未払金は関連者間ローンには含まないとされる。ただし、キャッシュプール等の財務サービスはその範疇ではないので、それらのシステムに基づくローンはFunding Ruleの対象となる。
結構とんでもないルールな感じ。もしかすると何の悪気もない日本企業もただ配当しただけで関連者間ローンが株式に変わったしまうようなリスクがあるようにも見える。それは酷い。こんなルールは今まで散々Leveraged Dividendとか濫用しまくってたMNCだけを対象にして欲しい。でもこれが悲しいかなグローバルスタンダード。外国では当たり前のことを日本流に異なる切り口で良かれと思ってやっていると、恩典を享受していないのにペナルティーだけは受けるような理不尽な結果となり得る。OECDのBEPSもまさにそのパターン。という訳で次回ももう少し新規則、特にアーニングス・ストリッピングの規則案に関して。
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