2016年11月8日に実施される第45代米国大統領選出の選挙まで残すところ2ヶ月強。不人気な2人のうちどちらが「マシ」か、という苦渋の選択を国民に迫る異例の選挙戦となっているが、候補者間では相変わらずの中傷合戦が続いている。この際、米国建国の趣旨に近い「最小限の連邦政府、最大限の個人の自由」を党是とするLibertarianの人たちにでも頑張ってもらうしかないかな、と夢見る今日この頃だ。
その中傷合戦のひとつに、共和党指名候補のトランプが未だに個人所得税申告書(Form 1040)を一般公開していないというものがあるのはご案内の通りだ。言うまでもなく個人の申告書は「Private」な文書であり、誰も公開を強要されることはない。IRSだって、当人、または当人から正式に委任状(POA)をもらった代理人以外には情報は一切公開しない。なので一義的には大統領でも、指名候補者でも、一般市民同様に申告書を誰にも見せる必要は無い。なので大統領による申告書の一般公開はあくまでも「自主的に」行われるもので、そのような慣習は1970年代から始まったと言われている。公開された申告書は今でもArchiveされているので自由に閲覧できる。所得レベル1つとっても各々の大統領のカラーが出ていてなかなか面白い。大統領になる前と後の所得の開きも興味深い。
トランプはIRSの税務調査が入っているので公開できない、としているが、その理由に説得力はない。法的に自分の申告書は公開したければ税務調査が入っていようといまいと関係なく公開できるはず。いろいろと理由を付けて公開を拒めば拒む程、見てみたくなるのが一般庶民の人情だろう。ただ、皆、申告書からどんな情報を得ようと期待しているんだろう?
「自慢してるほど資産ないのがバレるのがやなんじゃない?」とかっていう話しがたまに聞かれる。$10BのNet Worthがあり「I’m rich!」っていうのがハッタリじゃないかっていう疑惑だ。$10Bを100円換算すると1兆円だから凄い。でも、個人所得税の申告書を見てもNet Worthは一切分からない。開示Formとか、添付のStatementだの全て開示してくれると多少様子は分かるかもしれないけど、「申告書を公開してます!」って言ってる立派な歴代大統領も実は申告書の最初の2ページ、すなわちForm 1040の本体そのものしか公開していないケースが少なくない。この2ページからはほぼ何も分からない。
Net Worthは分からないまでも「実は年収が自慢してるほど多くないんじゃない?」という説もよく聞かれるが、これも申告書では分からない。トランプ程の経営者となれば、当然合法的な範囲でアグレッシブなタックスプラニングを駆使してると想定されるし、また全て本人個人の名義で所得が認識されているとも限らない。むしろ、課税所得はかなり圧縮されていると考えるのが普通だろう。となるとForm 1040のAGIとか見ても本当の実力は全く分からないだろう。
また「慈善団体に対する寄付金が少なすぎて格好悪いんじゃない?」という説も有力だ。これはどうだろう?Form 1040の本体2ページが公開されれば、2ページ目(2015年版だとLine 40)に少なくとも個別控除(Itemized Deduction)の総額は見ることができる。でも総額だし、Schedule Aそのものが公開されない限りその内訳は分からない。まあ、総額が少なければ自ずと寄付金も少ないね、っていう結論にはなるけど。Standard Deductionとかだったら大笑い。NYCに住んでれば州税・市税の控除だけでもそれはあり得ないけど。
「実効税率がどうせ低いんじゃない・・?」という推測もあるが、これは一応、申告書に記載される総所得と税金を比較すれば機械的に%そのものは出てくる。所得の多くが配当とかキャピタルゲインで構成されていれば、今の税法に基づくと実効税率はかなり低くなるのは当然で、それ自体疚しいことでもなんでもないが、そんな状況が申告書から露呈されると民主党的には「やっぱりとんでもない」となり、その切り口で攻撃されるだろう。以前の選挙で共和党候補ミット・ロムニーの申告書上の実効税率が14%だった点が派手に攻撃された例を見れば明らかだ。ロムニーの敗戦の理由をこの点に帰する向きもある程だ。これは投資所得に優遇税率を規定している法律が原因で、確かにCarried Interestまでキャピタルゲインという現行法はチョッと不公平とは言え、合法的に申告している訳で、更に言えばこれらの所得にこれ以上の税金を支払うこと自体法律で認められない訳だから、実効税率だけを見て非難するのはUnfairな中傷のように思う。そのうち大統領候補はスタバが英国でしたみたいに、法的には不要な税金を自ら納めるようなパフォーマンスまで求められるのだろうか。変な話しだ。
ロムニーと言えば、フロリダのWest Palm Beachに近い高級リゾートのボカ・ラタンで「有権者の47%はそもそも所得税を支払っておらず(低所得のため)、その層は金持ちから税金を取り、連邦政府を巨大化させて福祉で生きていこうとしており、その47%は何があっても民主党を指示するだろう」的な本当の発言をして大顰蹙を買ったものだ。でも考えてみれば有権者の多くが税金を支払っていないんだったら、議会が決めた法律に基づいて実効税率が低い大統領候補が非国民のように言われるのは変な感じ。
トランプに話しを戻すけど、挙句の果てには「ロシアのプーチンとか、チョッと怪しい連中から所得を得ているので公開できないんじゃない?」という話しまで真しやかにささやかれる始末。Form 1040見ても所得の源泉は分からない。ましてやプーチンの名前なんかが出てる訳ないじゃん、って思うけど、この手の話しは尽きないようだ。
ちなみにその昔、アトランティックシティーのプロジェクトの関係でカジノの許認可を得る際の手順の一環としてトランプが申告書のコピーを担当庁に提出したことがあるらしいけど、その際の申告書では、実効税率が低いどころか、税金はゼロだったそうだ。1970年代後半の話し。また、1990年代前半の申告書でもアトランティックシティーの巨額損失でゼロの年があったそうだ。その頃はたまたまビジネス調子悪かったのかも。でも今でもアトランティックシティーって行っても全然盛り上がっている感じを受けない。となると最近の申告書もまさか税金ゼロ・・?申告書が公開されないままこんな風にアレコレ勝手に空想している方が楽しいかもね。
その中傷合戦のひとつに、共和党指名候補のトランプが未だに個人所得税申告書(Form 1040)を一般公開していないというものがあるのはご案内の通りだ。言うまでもなく個人の申告書は「Private」な文書であり、誰も公開を強要されることはない。IRSだって、当人、または当人から正式に委任状(POA)をもらった代理人以外には情報は一切公開しない。なので一義的には大統領でも、指名候補者でも、一般市民同様に申告書を誰にも見せる必要は無い。なので大統領による申告書の一般公開はあくまでも「自主的に」行われるもので、そのような慣習は1970年代から始まったと言われている。公開された申告書は今でもArchiveされているので自由に閲覧できる。所得レベル1つとっても各々の大統領のカラーが出ていてなかなか面白い。大統領になる前と後の所得の開きも興味深い。
トランプはIRSの税務調査が入っているので公開できない、としているが、その理由に説得力はない。法的に自分の申告書は公開したければ税務調査が入っていようといまいと関係なく公開できるはず。いろいろと理由を付けて公開を拒めば拒む程、見てみたくなるのが一般庶民の人情だろう。ただ、皆、申告書からどんな情報を得ようと期待しているんだろう?
「自慢してるほど資産ないのがバレるのがやなんじゃない?」とかっていう話しがたまに聞かれる。$10BのNet Worthがあり「I’m rich!」っていうのがハッタリじゃないかっていう疑惑だ。$10Bを100円換算すると1兆円だから凄い。でも、個人所得税の申告書を見てもNet Worthは一切分からない。開示Formとか、添付のStatementだの全て開示してくれると多少様子は分かるかもしれないけど、「申告書を公開してます!」って言ってる立派な歴代大統領も実は申告書の最初の2ページ、すなわちForm 1040の本体そのものしか公開していないケースが少なくない。この2ページからはほぼ何も分からない。
Net Worthは分からないまでも「実は年収が自慢してるほど多くないんじゃない?」という説もよく聞かれるが、これも申告書では分からない。トランプ程の経営者となれば、当然合法的な範囲でアグレッシブなタックスプラニングを駆使してると想定されるし、また全て本人個人の名義で所得が認識されているとも限らない。むしろ、課税所得はかなり圧縮されていると考えるのが普通だろう。となるとForm 1040のAGIとか見ても本当の実力は全く分からないだろう。
また「慈善団体に対する寄付金が少なすぎて格好悪いんじゃない?」という説も有力だ。これはどうだろう?Form 1040の本体2ページが公開されれば、2ページ目(2015年版だとLine 40)に少なくとも個別控除(Itemized Deduction)の総額は見ることができる。でも総額だし、Schedule Aそのものが公開されない限りその内訳は分からない。まあ、総額が少なければ自ずと寄付金も少ないね、っていう結論にはなるけど。Standard Deductionとかだったら大笑い。NYCに住んでれば州税・市税の控除だけでもそれはあり得ないけど。
「実効税率がどうせ低いんじゃない・・?」という推測もあるが、これは一応、申告書に記載される総所得と税金を比較すれば機械的に%そのものは出てくる。所得の多くが配当とかキャピタルゲインで構成されていれば、今の税法に基づくと実効税率はかなり低くなるのは当然で、それ自体疚しいことでもなんでもないが、そんな状況が申告書から露呈されると民主党的には「やっぱりとんでもない」となり、その切り口で攻撃されるだろう。以前の選挙で共和党候補ミット・ロムニーの申告書上の実効税率が14%だった点が派手に攻撃された例を見れば明らかだ。ロムニーの敗戦の理由をこの点に帰する向きもある程だ。これは投資所得に優遇税率を規定している法律が原因で、確かにCarried Interestまでキャピタルゲインという現行法はチョッと不公平とは言え、合法的に申告している訳で、更に言えばこれらの所得にこれ以上の税金を支払うこと自体法律で認められない訳だから、実効税率だけを見て非難するのはUnfairな中傷のように思う。そのうち大統領候補はスタバが英国でしたみたいに、法的には不要な税金を自ら納めるようなパフォーマンスまで求められるのだろうか。変な話しだ。
ロムニーと言えば、フロリダのWest Palm Beachに近い高級リゾートのボカ・ラタンで「有権者の47%はそもそも所得税を支払っておらず(低所得のため)、その層は金持ちから税金を取り、連邦政府を巨大化させて福祉で生きていこうとしており、その47%は何があっても民主党を指示するだろう」的な本当の発言をして大顰蹙を買ったものだ。でも考えてみれば有権者の多くが税金を支払っていないんだったら、議会が決めた法律に基づいて実効税率が低い大統領候補が非国民のように言われるのは変な感じ。
トランプに話しを戻すけど、挙句の果てには「ロシアのプーチンとか、チョッと怪しい連中から所得を得ているので公開できないんじゃない?」という話しまで真しやかにささやかれる始末。Form 1040見ても所得の源泉は分からない。ましてやプーチンの名前なんかが出てる訳ないじゃん、って思うけど、この手の話しは尽きないようだ。
ちなみにその昔、アトランティックシティーのプロジェクトの関係でカジノの許認可を得る際の手順の一環としてトランプが申告書のコピーを担当庁に提出したことがあるらしいけど、その際の申告書では、実効税率が低いどころか、税金はゼロだったそうだ。1970年代後半の話し。また、1990年代前半の申告書でもアトランティックシティーの巨額損失でゼロの年があったそうだ。その頃はたまたまビジネス調子悪かったのかも。でも今でもアトランティックシティーって行っても全然盛り上がっている感じを受けない。となると最近の申告書もまさか税金ゼロ・・?申告書が公開されないままこんな風にアレコレ勝手に空想している方が楽しいかもね。
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