前回のポスティングでは4月26日のトランプ大統領・行政府による税法改正プラン初の公式発表のうち、Spicerによる面白い遺跡保存法のジョークから国家経済会議委員長Cohnがプラン大枠の原則を説明し、個人所得税減税プランに入るところまでカバーした。ちなみにこの国家経済会議はNational Economic Council(「NEC」、電機メーカーではない)のことで、大統領府が経済政策を検討する主たる場となっており、1993年にクリントン大統領により正式に設置されている。
Cohnが個人所得税の話しに移るこのタイミングまで、Spicerの遺跡保存法のジョークから僅か4分チョット。さすがに原則のみカバーということで結構なスピードで話しが進んでいる。
ここでもまず歴史のおさらいというか、基本的な統計から入っている。さかのぼること1935年、所得税申告書は1ページ、34行で構成されており、記入要領の説明書は僅か2ページだったそうだ。それが現在では申告書の最初の2ページだけで79行、記入要領はナンと211ページ(会計事務所のスタッフ以外で読む人居るのかな?)、そして申告書をサポートする別表も199様式と膨れ上がっている。納税者が申告書作成に必要とする時間は年間のべ70億時間!で90%の納税者が外部のサービス業者に作成を依頼している状況だ。10%の納税者は自分で作成しているんだね。偉い。ちなみにこれは会社の法人税の話しではなく、米国では雇用者年末調整とか存在しないので、所得が一定以上あるものは老若男女問わず一人一枚(夫婦のみ合算申告可能)全員が申告する所得税の話しなので複雑さがどれだけ常軌を逸しているか分かる。
そこで大統領プランではまず、現在39.5%まで7つ存在する税率区分を10%、25%、35%の3つに簡素化する。アレ~、最高税率区分は33%じゃないの?って一瞬愕然とせざるを得なかったけど、まあブッシュ減税当時に戻ると思えば、オバマ政権下の大増税時代よりは少しはマシってことだろうか。しかし、ここで大きなキャッチがある。税率区分というのは何ドルから何ドルまでが25%とか分からないと%そのものだけ聞いても余り意味がないんだけど、その肝心の部分が未定なようで、後のQ&Aでその点を突っ込まれた際に「そのような詳細はここで発表する原理原則の域を超えており、今後の議会との調整で決める」とのこと。詳細という程の詳細でもないように思うけど。
更に「基礎控除(Standard Deduction)」、すなわち個別控除をしないでも必ず取れる(NRとかDual Status納税者は除いて)所得控除を2倍にするとCohnは披露した。既婚者で現状約$12Kの基礎控除が$24Kになるそうだ。これは最初の$24Kはゼロ%の税率ということだから大きな減税効果を持つ。これをもってしても民主党議員は今回の減税は富裕層にのみ恩典があると言い張っているのは不思議。また基礎控除が大きくなると個別控除を取る納税者が減るので、面倒なSchedule Aとかを記入する必要が少なくなり、申告手続きの簡素化に繋がる。すなわち、1935年にタイムトリップして1ページの申告書にGet Back。また、トランプ大統領がイバンカから提言されて盛り込まれたとも言われる子女託児費用、扶養家族介護費用に対する控除の充実というどちらかと言うと民主党っぽいノリの低中所得者対策も盛り込むとしている。また、実質2通りの課税所得を算定しないと計算できない代替ミニマム税(AMT)も申告をいたずらに複雑にしているとして撤廃される。「税法はひとつで充分」ということだ。
投資関係の減税として、Capital Gainおよび適格配当に関してはシンプルに20%に戻すとしている。トランプ政権の最優先課題の雇用促進と経済成長にとって資本投資は不可欠だが、資本投資に冷却効果となっていたオバマケア増税3.8%の上乗せさを撤廃するという。Cohnは3.8%のオバマケア増税は「小規模事業主」に重荷であったと、今回のテーマである小中規模ビジネスへの配慮をしっかり強調している。
遺産税も撤廃となる。ここの部分は歳入への影響は最小限だが、控除が約$5Mあるだけに、ネット資産が$5Mの比較的裕福な納税者だけの問題ということで、民主党はむしろ遺産税は拡充したいところ。一方の共和党は党是として許せない税金のひとつで、下院、上院、大統領府と各論に関して一枚岩ではない中、遺産税の撤廃は異論のないところだろう。Cohnは地道に築いたファミリービジネスを子供が遺産税のために泣く泣く売らないといけないような状況は嘆かわしい、とまたしても小中規模ビジネスへの配慮をスピンしている。
富裕層に一矢というか、課税ベースの拡張の一環で、所得税算定時の諸々の控除は基本撤廃するとしている。例外として、持家促進のための住宅ローン支払利息、退職金制度、慈善団体への寄付、の3つのみは温存される。ここで不思議なのは、その後のQ&Aで住宅ローン利息と寄付のことしか回答しなかったせいか、せっかくCohnが退職金制度に言及しているのに、401(k)が撤廃になるのではないかとか翌日の新聞やTVの解説で大騒ぎになっていた点だ。適格退職金制度が全廃されることはないだろう。制度の変更、例えば、Roth IRAと呼ばれる拠出は税引後だけどその後のプラン資産価値の増加に課税されない制度があるが、税引前控除の従来からの401(k)に代わりRothに一本化される「Rothification」(新しい造語!)になるとか、はあり得るかもしれない。ただ、それは前々から話しがあった点で、後半のQ&Aで住宅ローン利息と寄付金のみが言及されていたのは個別控除っていう文脈での話しと考えるべきだと個人的には思っている。ここでもCohnは撤廃対象となる控除は富裕層に主たる恩典があったものだとして、低中所得者に対する配慮のスピンを忘れていない。でもこれはスピンというよりは実際にその通りと言えるだろう。
ここでもう一つ大騒ぎになったのが州税の控除が認められなくなる点。この大騒ぎを予知してか、Cohnは「このようなこと(=控除の撤廃)を実行するのは容易なことではありません。何か大胆なことをしようとすると、保守派からもリベラルからも執拗に攻撃されるのが常です。しかし、ひとつだけ言えることは、トランプ大統領は米国市民のためには厳しいことでも必ず成し遂げてくれるということです。」とトランプ大統領がまるで手品師か、はたまたDoctor Robertかのような描写で美しく前半を締めくくり、財務長官Mnuchinにバドンタッチとなった。Mnuchinがビジネス、法人税セクションをカバーした後、2人がQ&Aに応じるとのこと。ここまでトータル僅か8分弱。で、ここからは次回。
Cohnが個人所得税の話しに移るこのタイミングまで、Spicerの遺跡保存法のジョークから僅か4分チョット。さすがに原則のみカバーということで結構なスピードで話しが進んでいる。
ここでもまず歴史のおさらいというか、基本的な統計から入っている。さかのぼること1935年、所得税申告書は1ページ、34行で構成されており、記入要領の説明書は僅か2ページだったそうだ。それが現在では申告書の最初の2ページだけで79行、記入要領はナンと211ページ(会計事務所のスタッフ以外で読む人居るのかな?)、そして申告書をサポートする別表も199様式と膨れ上がっている。納税者が申告書作成に必要とする時間は年間のべ70億時間!で90%の納税者が外部のサービス業者に作成を依頼している状況だ。10%の納税者は自分で作成しているんだね。偉い。ちなみにこれは会社の法人税の話しではなく、米国では雇用者年末調整とか存在しないので、所得が一定以上あるものは老若男女問わず一人一枚(夫婦のみ合算申告可能)全員が申告する所得税の話しなので複雑さがどれだけ常軌を逸しているか分かる。
そこで大統領プランではまず、現在39.5%まで7つ存在する税率区分を10%、25%、35%の3つに簡素化する。アレ~、最高税率区分は33%じゃないの?って一瞬愕然とせざるを得なかったけど、まあブッシュ減税当時に戻ると思えば、オバマ政権下の大増税時代よりは少しはマシってことだろうか。しかし、ここで大きなキャッチがある。税率区分というのは何ドルから何ドルまでが25%とか分からないと%そのものだけ聞いても余り意味がないんだけど、その肝心の部分が未定なようで、後のQ&Aでその点を突っ込まれた際に「そのような詳細はここで発表する原理原則の域を超えており、今後の議会との調整で決める」とのこと。詳細という程の詳細でもないように思うけど。
更に「基礎控除(Standard Deduction)」、すなわち個別控除をしないでも必ず取れる(NRとかDual Status納税者は除いて)所得控除を2倍にするとCohnは披露した。既婚者で現状約$12Kの基礎控除が$24Kになるそうだ。これは最初の$24Kはゼロ%の税率ということだから大きな減税効果を持つ。これをもってしても民主党議員は今回の減税は富裕層にのみ恩典があると言い張っているのは不思議。また基礎控除が大きくなると個別控除を取る納税者が減るので、面倒なSchedule Aとかを記入する必要が少なくなり、申告手続きの簡素化に繋がる。すなわち、1935年にタイムトリップして1ページの申告書にGet Back。また、トランプ大統領がイバンカから提言されて盛り込まれたとも言われる子女託児費用、扶養家族介護費用に対する控除の充実というどちらかと言うと民主党っぽいノリの低中所得者対策も盛り込むとしている。また、実質2通りの課税所得を算定しないと計算できない代替ミニマム税(AMT)も申告をいたずらに複雑にしているとして撤廃される。「税法はひとつで充分」ということだ。
投資関係の減税として、Capital Gainおよび適格配当に関してはシンプルに20%に戻すとしている。トランプ政権の最優先課題の雇用促進と経済成長にとって資本投資は不可欠だが、資本投資に冷却効果となっていたオバマケア増税3.8%の上乗せさを撤廃するという。Cohnは3.8%のオバマケア増税は「小規模事業主」に重荷であったと、今回のテーマである小中規模ビジネスへの配慮をしっかり強調している。
遺産税も撤廃となる。ここの部分は歳入への影響は最小限だが、控除が約$5Mあるだけに、ネット資産が$5Mの比較的裕福な納税者だけの問題ということで、民主党はむしろ遺産税は拡充したいところ。一方の共和党は党是として許せない税金のひとつで、下院、上院、大統領府と各論に関して一枚岩ではない中、遺産税の撤廃は異論のないところだろう。Cohnは地道に築いたファミリービジネスを子供が遺産税のために泣く泣く売らないといけないような状況は嘆かわしい、とまたしても小中規模ビジネスへの配慮をスピンしている。
富裕層に一矢というか、課税ベースの拡張の一環で、所得税算定時の諸々の控除は基本撤廃するとしている。例外として、持家促進のための住宅ローン支払利息、退職金制度、慈善団体への寄付、の3つのみは温存される。ここで不思議なのは、その後のQ&Aで住宅ローン利息と寄付のことしか回答しなかったせいか、せっかくCohnが退職金制度に言及しているのに、401(k)が撤廃になるのではないかとか翌日の新聞やTVの解説で大騒ぎになっていた点だ。適格退職金制度が全廃されることはないだろう。制度の変更、例えば、Roth IRAと呼ばれる拠出は税引後だけどその後のプラン資産価値の増加に課税されない制度があるが、税引前控除の従来からの401(k)に代わりRothに一本化される「Rothification」(新しい造語!)になるとか、はあり得るかもしれない。ただ、それは前々から話しがあった点で、後半のQ&Aで住宅ローン利息と寄付金のみが言及されていたのは個別控除っていう文脈での話しと考えるべきだと個人的には思っている。ここでもCohnは撤廃対象となる控除は富裕層に主たる恩典があったものだとして、低中所得者に対する配慮のスピンを忘れていない。でもこれはスピンというよりは実際にその通りと言えるだろう。
ここでもう一つ大騒ぎになったのが州税の控除が認められなくなる点。この大騒ぎを予知してか、Cohnは「このようなこと(=控除の撤廃)を実行するのは容易なことではありません。何か大胆なことをしようとすると、保守派からもリベラルからも執拗に攻撃されるのが常です。しかし、ひとつだけ言えることは、トランプ大統領は米国市民のためには厳しいことでも必ず成し遂げてくれるということです。」とトランプ大統領がまるで手品師か、はたまたDoctor Robertかのような描写で美しく前半を締めくくり、財務長官Mnuchinにバドンタッチとなった。Mnuchinがビジネス、法人税セクションをカバーした後、2人がQ&Aに応じるとのこと。ここまでトータル僅か8分弱。で、ここからは次回。
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