4月前半には公表されるらしい、ってここ数週間高まっていた期待通り、米国税制改正で導入された「支払利息損金算入制限(新Section 163(j))」の適用時のガイダンス、「Notice 2018-28」が昨日4月2日、財務省より公表された。さすがに4月1日のApril Foolには公表を控えたんだろうか。April Foolに大胆なジョークを飛ばすことができるのはElon Muskのような本当の大物だけだろう。
April Foolの翌日ということで気合が入ったのか、何と今回はトリプルNoticeとなった。Section 163(j)以外のNoticeとしては、ひとつめが例によって海外特定法人の留保所得一括課税に関するもので、基本的に一括課税を圧縮するための諸々のプラニングに濫用防止規定で網を掛けている。もうひとつは日本企業にとっても影響がある米国事業に従事するパートナーシップ持分を外国人が譲渡する際の源泉税徴収にかかわるもの。こちらは12月に既にPTPに対する適用が凍結されているが、今回のNoticeでは他のパートナーシップに関する更なる凍結措置は規定されていない。この源泉に関しては別のポスティングで触れてみたい。
次に登場するガイダンスはいよいよGILTIとFDIIかな。夏から秋には公表されると言われているのでこちらは一体全体どのようなものとなるか楽しみ。
で、今回の新Section 163(j)に対するNoticeは大概において予想通りの内容。敢えて言えば、旧アーニングス・ストリッピング規定で損金算入が制限されて繰り越されていた支払利息は、繰り越された課税年度に支払われたと扱われ、新Section 163(j)で損金算入可否を新たに判断することになるという点はそうなんだけど、親会社等の外国関連会社に支払われていて繰り越されている利息は新税法下でBase Erosion Paymentとなり、新Section 163(j)下で損金算入が認められる際にはBEAT目的でBase Erosion Benefitとなるという点にわざわざ触れていた点はチョッと意外な感じもした。
その前段階で、散々、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている支払利息は将来課税年度に「支払われていた」同様に扱うって強調しているので、その当然の結果としてBEAT抵触が考えられるし、繰越が認められる暁にはBEATに抵触しないのかな、っていう懸念はここ3カ月ずっと存在していたので、結果そのものにそんなに驚きはないけど、この点に関してわざわざNoticeの段階で釘を刺している点、疑問の余地を微塵も残さないぞ、っていう財務省の強い決意(?)を感じてしまった。
ただ、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている金額全てがBEAT対象かというと必ずしもそうではないはず。あくまで、将来年度に支払われたと扱われるということだから、元々外国関連者に支払っていない利息が旧アーニングス・ストリッピング規定で損金不算入になっている場合には、BEATが入り込んでくることはない。例えば、旧アーニングス・ストリッピング規定は1993年の法改正以降、親会社等の外国関連者による保証に基づく第三者からの借入も不適格利息として損金不算入となってることもあるけど、これらは、BEAT目的ではBase Erosion Paymentとはならないので、BEATとは関係ない。もちろん保証なしでは借りれなかったとなると過少資本税制という全く別の問題がある。有名な1972年の5th Circuitによるランドマークケース、Plantation Patternsのパターン(シャレではなく)だね。このケース1970年という大阪万博の年に(誰も知らないよね。「月の石」見るのに炎天下3時間も並んでアメリカ館を見てた時代。見てみるとただのその辺の石と同じなんだけど)Tax CourtによるメモランダムケースでIRSが勝訴し、1972年5th Circuit控訴審でも一審が支持されているやつ。さすがに最高裁は再審理請求を却下し、5th Circuitによる判断が最終となっている。
5th Circuitって2ndとか9thに比べると目立たないイメージがあるけど、米国商工会議所がInversion規則の無効を求めた訴えを審理していて現在注目の的となっているのも5th Circuitだ。この規則はオバマ政権末期の財務省が実質ファイザーのInversionを食い止めるために所定の手続きを踏まずに発効させたもので、一審地方裁ではなんと、商工会が勝訴している。争点は規則がAPAを無視して最終化されたので法律違反ではないかというもの。ちなみにここでいうAPAは移転価格のAdvance Pricing Agreementでも、給与の源泉徴収を扱う専門家集団のAmerican Payroll Associationでもなく、もちろんAdministrative Procedure Actのこと。実は似たような争点で最高裁まで行ったDirect Marketingという判例があるけど、この最高裁の判例に基づくHoldingをどこまで差別化できるかがIRSに残された望みだろう。
で、旧アーニングス・ストリッピング規定とBEATに戻るけど、保証に基づく借入の支払利息が繰り越されている場合、繰越全額が保証に基づくもので構成されていたら対応は可能だけど、親会社ローンとかと混ざっているケースでは今後のBEAT適用時にどのようにトラッキングするのか大変そう。この辺りはNoticeでは触れらえていないけど、規則案で詳細が規定されるんだろう。
それにしても、例えば、Googleがカリフォルニア州のMenlo Parkでこの世に誕生する8年前、AppleからSteve Jobsが最初に解任されてから5年後の1990年に、日本企業の米国子会社が親会社に利息を支払っていて、もしそれが今でも繰り越されていると、テスラがModel SやXに続いて苦労してModel 3を量産している2018年に何とBEATに抵触してしまうという凄い結果になる。BEATなんて聞いたこともなかった時代の支払利息が法的にはBEAT時代に支払われたことになり、新世代の規定に抵触してしまう。でも考えてみると旧アーニングス・ストリッピング規定は今のBEATと概念的には共通部分が多いので、それが結局運命なのかもね。
Noticeの他のポイントは既定路線のもの。財務省もこれらは「Low Hanging Fruitsです」って少し前から言ってExpectationをManageしてたけど、本当にその通り。この文脈でのLow Hanging Fruitsどう訳すのがいいか分からないけど、「取り急ぎ簡単に規則を策定できるもの」みたいな感じかな。GILTIとかはHeavyだからね。
他にどんなポイントがカバーされているかという点は次回。
April Foolの翌日ということで気合が入ったのか、何と今回はトリプルNoticeとなった。Section 163(j)以外のNoticeとしては、ひとつめが例によって海外特定法人の留保所得一括課税に関するもので、基本的に一括課税を圧縮するための諸々のプラニングに濫用防止規定で網を掛けている。もうひとつは日本企業にとっても影響がある米国事業に従事するパートナーシップ持分を外国人が譲渡する際の源泉税徴収にかかわるもの。こちらは12月に既にPTPに対する適用が凍結されているが、今回のNoticeでは他のパートナーシップに関する更なる凍結措置は規定されていない。この源泉に関しては別のポスティングで触れてみたい。
次に登場するガイダンスはいよいよGILTIとFDIIかな。夏から秋には公表されると言われているのでこちらは一体全体どのようなものとなるか楽しみ。
で、今回の新Section 163(j)に対するNoticeは大概において予想通りの内容。敢えて言えば、旧アーニングス・ストリッピング規定で損金算入が制限されて繰り越されていた支払利息は、繰り越された課税年度に支払われたと扱われ、新Section 163(j)で損金算入可否を新たに判断することになるという点はそうなんだけど、親会社等の外国関連会社に支払われていて繰り越されている利息は新税法下でBase Erosion Paymentとなり、新Section 163(j)下で損金算入が認められる際にはBEAT目的でBase Erosion Benefitとなるという点にわざわざ触れていた点はチョッと意外な感じもした。
その前段階で、散々、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている支払利息は将来課税年度に「支払われていた」同様に扱うって強調しているので、その当然の結果としてBEAT抵触が考えられるし、繰越が認められる暁にはBEATに抵触しないのかな、っていう懸念はここ3カ月ずっと存在していたので、結果そのものにそんなに驚きはないけど、この点に関してわざわざNoticeの段階で釘を刺している点、疑問の余地を微塵も残さないぞ、っていう財務省の強い決意(?)を感じてしまった。
ただ、旧アーニングス・ストリッピング規定で繰り越されている金額全てがBEAT対象かというと必ずしもそうではないはず。あくまで、将来年度に支払われたと扱われるということだから、元々外国関連者に支払っていない利息が旧アーニングス・ストリッピング規定で損金不算入になっている場合には、BEATが入り込んでくることはない。例えば、旧アーニングス・ストリッピング規定は1993年の法改正以降、親会社等の外国関連者による保証に基づく第三者からの借入も不適格利息として損金不算入となってることもあるけど、これらは、BEAT目的ではBase Erosion Paymentとはならないので、BEATとは関係ない。もちろん保証なしでは借りれなかったとなると過少資本税制という全く別の問題がある。有名な1972年の5th Circuitによるランドマークケース、Plantation Patternsのパターン(シャレではなく)だね。このケース1970年という大阪万博の年に(誰も知らないよね。「月の石」見るのに炎天下3時間も並んでアメリカ館を見てた時代。見てみるとただのその辺の石と同じなんだけど)Tax CourtによるメモランダムケースでIRSが勝訴し、1972年5th Circuit控訴審でも一審が支持されているやつ。さすがに最高裁は再審理請求を却下し、5th Circuitによる判断が最終となっている。
5th Circuitって2ndとか9thに比べると目立たないイメージがあるけど、米国商工会議所がInversion規則の無効を求めた訴えを審理していて現在注目の的となっているのも5th Circuitだ。この規則はオバマ政権末期の財務省が実質ファイザーのInversionを食い止めるために所定の手続きを踏まずに発効させたもので、一審地方裁ではなんと、商工会が勝訴している。争点は規則がAPAを無視して最終化されたので法律違反ではないかというもの。ちなみにここでいうAPAは移転価格のAdvance Pricing Agreementでも、給与の源泉徴収を扱う専門家集団のAmerican Payroll Associationでもなく、もちろんAdministrative Procedure Actのこと。実は似たような争点で最高裁まで行ったDirect Marketingという判例があるけど、この最高裁の判例に基づくHoldingをどこまで差別化できるかがIRSに残された望みだろう。
で、旧アーニングス・ストリッピング規定とBEATに戻るけど、保証に基づく借入の支払利息が繰り越されている場合、繰越全額が保証に基づくもので構成されていたら対応は可能だけど、親会社ローンとかと混ざっているケースでは今後のBEAT適用時にどのようにトラッキングするのか大変そう。この辺りはNoticeでは触れらえていないけど、規則案で詳細が規定されるんだろう。
それにしても、例えば、Googleがカリフォルニア州のMenlo Parkでこの世に誕生する8年前、AppleからSteve Jobsが最初に解任されてから5年後の1990年に、日本企業の米国子会社が親会社に利息を支払っていて、もしそれが今でも繰り越されていると、テスラがModel SやXに続いて苦労してModel 3を量産している2018年に何とBEATに抵触してしまうという凄い結果になる。BEATなんて聞いたこともなかった時代の支払利息が法的にはBEAT時代に支払われたことになり、新世代の規定に抵触してしまう。でも考えてみると旧アーニングス・ストリッピング規定は今のBEATと概念的には共通部分が多いので、それが結局運命なのかもね。
Noticeの他のポイントは既定路線のもの。財務省もこれらは「Low Hanging Fruitsです」って少し前から言ってExpectationをManageしてたけど、本当にその通り。この文脈でのLow Hanging Fruitsどう訳すのがいいか分からないけど、「取り急ぎ簡単に規則を策定できるもの」みたいな感じかな。GILTIとかはHeavyだからね。
他にどんなポイントがカバーされているかという点は次回。
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