ようやくGILTI関係のポスティングも終盤を迎えつつある感じで、チョッとひと安心ってところだけど、今後の財務省規則案公表の連打を考えると恐ろしい。パッと思いつくだけでも、新Section 163(j)、FTC、BEAT、FDII、GILTI控除、100%配当控除、ハイブリッド、などなど錚々たる面々が続く。どれも一筋縄ではいかぬ問題が山積みのいわくつき条文だけに、各々相当な長編となるはず。感謝祭からお正月までは規則案のReadingだけで毎日日が暮れそうだ。そうこうしている間に12月22日は税制改正可決のアニバーサリー。全てはあの日から始まった新税法に基づくWhole New Worldのクロスボーダー課税。未だたった一年しか経ってないとは思えないほど、随分と新しいクロスボーダー課税システムを考えさせられてきた。これかも長く考え続けることになるんだろうけど。
今日はGILTI規則案の中でも、個人的には意外な規定となっていた米国パートナーシップが米国株主としてCFCを保有する場合の取り扱い。チョッと複雑なので、皆さん準備(覚悟?)はいいでしょうか?
以前から何回もしつこいけど(本当に)、米国株主側の属性となるGILTIに関して、CFCレベルの属性だった従来のSubpart F所得合算課税の法的インフラを流用して、課税を実行しようとしているため、必然的に今まで直面したことない検討事項に出くわすことになる。今回の税制改正は、特にクロスボーダーの課税ルールを大きく変更しているけど、税法を一から書き換えているのではなく、既存の法律に上乗せする形で大量の条文を追加している。そのため、新しい税法を理解するには従来からの税法を良く知らないと始まらないし、今までの考え方がそのまま使える部分、新しい考え方が必要となる部分、と頭を良く整理しながらアプローチしないと訳が分からなくなりがちだ。
そんな混乱の一つに米国パートナーシップとGILTIの取り扱いが挙げられる。規則案のアプローチを語る前に、GILTI課税をする際に利用される従来のSubpart F所得合算方法に関して簡単に触れてみたい。元々、Subpart F所得はCFC側の属性で、CFCがCFCであり続ける限り、その課税年度終了時に「米国株主」となっている者が、各CFCのSubpart F所得の自己持分相当、すなわちPro-Rata持分、を課税所得に合算することになる。ここで言う米国株主とは、外国法人の少なくとも10%の議決権または価値を保有する「米国人」を意味する。米国人とは、米国市民および居住者、内国法人だけでなく、米国パートナーシップ、米国遺産、米国信託を含むとされる。パートナーシップはパススルーだけど、米国パートナーシップはCFC課税目的では一人の米国株主と取り扱われる。米国パートナーシップが米国株主となる場合、パートナーシップ側で合算されるSubpart F所得は他の所得同様に各パートナーに配賦される。CFCで計算してそれが最終額となる従来のSubpart F所得に関しては、これだけの規定で十分に機能していた。ところが、GILTIはCFCからフローアップしてくる項目だけでは完結せず、その後、株主側で合算したり、そこから合算ベースのNDTIRを差し引いたりと加工が必要となる。どのレベルで米国株主側の算定を行うのか、っていうのが重要となる訳だ。これは従来のSubpart F所得にはなかった新しい概念。
10%保有しているかどうかの判断は、直接、間接保有に加えて広範なみなし持分規定を適用して判断する。このみなし持分判断時に、従来は外国からのDownward Attributionを加味しなくても良かったものが、税制改正で免除規定が撤廃され、Downward Attributionを加味しなくてはいけなくなったのは以前から何回か触れている通り。Downward Attributionに関してはそのうち、それだけに特化したポスティングを企画したい。
で、規則案では、米国パートナーシップが10%以上保有するCFCに関して、パートナーの間接持分が10%未満の場合には、GILTIはパートナーシップレベルで算定し、その額をパートナーに配賦するとしている。このアプローチは既存のSubpart F所得合算のパートナーシップレベルで最終決定するアプローチに準じている。一方、パートナーの間接持分が10%以上、すなわちパートナー自身も米国株主扱いに至る間接持分を保有する場合には、パートナーは間接持分に準じてLook-throughする形でCFCからGILTI算定に必要な各項目の金額を取り込み、パートナーが保有する他のCFCの金額と合算してGILTI算定を行うとしている。
え~、間接持分が10%未満、10%以上のパートナーが混在しているケースはK-1作るの面倒くさそう。まずパートナーシップが自らのレベルでCFCからGILTI計算に必要な項目、すなわちTested Income(Loss)、QBAI、支払利息、受取利息、のPro-Rata持分を吸い上げ、そのうち間接持分10%以上のパートナーにはそれらの額各々を各パートナーの704(b)配賦比率で個々に配賦する。で、次にパートナーシップレベルに残っている各項目、すなわち間接持分10%未満のパートナー達に帰属する部分は、パートナーシップレベルでGILTI計算までして、GILTI合算額そのものを各パートナーに配賦する、っていうような作業になるように見える。
なかなかクリエイティブなハイブリッド処理法と言える。規則案の前文ではポリシー的な議論を展開して、このような変わったアプローチをサポートしようとしている。もし従来の米国株主の定義を無視して、米国パートナーシップを常にLook-Throughとしてしまうと、パートナーシップが10%以上保有している、すなわち米国株主となるケースでも、間接持分が10%未満となるパートナーがパートナーレベルで米国株主にならないように見え、GILTI合算をしなくてもいいような結果となるので適切ではない、としてピュアなAggregateアプローチを否定している。このアプローチは、パススルーっぽい考え方ではあるけど、Subpart F所得の合算を規定している法律ではサポートできない。
一方、ピュアなEntityアプローチ、すなわち、常にパートナーシップレベルでGILTI合算を計算し、結果を各パートナーに配賦する方法は、間接持分が10%以上のパートナーは、パートナーレベルで米国株主に準じる立場にあり、そのようなパートナーが、当該パートナーシップを介さずに他のCFCの米国株主となっている場合には、実質、一人の米国株主が2つのGILTI計算に基づく合算を行うこととなり、GILTIが米国株主レベルの属性である点に矛盾するとして、こちらも不適切だと結論付けている。でも、元々、法律では、外国法人や外国パートナーシップはLook-Throughするよう規定されてるけど、米国パートナーシップに対してLook-Throughを規定している条文はない。
となると、規則案のハイブリッドアプローチのうち、間接持分が10%のパートナーにGILTI各項目を配賦する部分は条文ではサポートできないことになる。しかも、規則案前文では散々、間接持分が10%のパートナーを「米国株主」って表現しているけど、定義的にそうなるにしても、ピックアップする所得はないはず。この点、なぜか法曹界も問題視している様子もないし、チョッと不思議。このまま最終規則化されてしまうんだろうか。
今日はGILTI規則案の中でも、個人的には意外な規定となっていた米国パートナーシップが米国株主としてCFCを保有する場合の取り扱い。チョッと複雑なので、皆さん準備(覚悟?)はいいでしょうか?
以前から何回もしつこいけど(本当に)、米国株主側の属性となるGILTIに関して、CFCレベルの属性だった従来のSubpart F所得合算課税の法的インフラを流用して、課税を実行しようとしているため、必然的に今まで直面したことない検討事項に出くわすことになる。今回の税制改正は、特にクロスボーダーの課税ルールを大きく変更しているけど、税法を一から書き換えているのではなく、既存の法律に上乗せする形で大量の条文を追加している。そのため、新しい税法を理解するには従来からの税法を良く知らないと始まらないし、今までの考え方がそのまま使える部分、新しい考え方が必要となる部分、と頭を良く整理しながらアプローチしないと訳が分からなくなりがちだ。
そんな混乱の一つに米国パートナーシップとGILTIの取り扱いが挙げられる。規則案のアプローチを語る前に、GILTI課税をする際に利用される従来のSubpart F所得合算方法に関して簡単に触れてみたい。元々、Subpart F所得はCFC側の属性で、CFCがCFCであり続ける限り、その課税年度終了時に「米国株主」となっている者が、各CFCのSubpart F所得の自己持分相当、すなわちPro-Rata持分、を課税所得に合算することになる。ここで言う米国株主とは、外国法人の少なくとも10%の議決権または価値を保有する「米国人」を意味する。米国人とは、米国市民および居住者、内国法人だけでなく、米国パートナーシップ、米国遺産、米国信託を含むとされる。パートナーシップはパススルーだけど、米国パートナーシップはCFC課税目的では一人の米国株主と取り扱われる。米国パートナーシップが米国株主となる場合、パートナーシップ側で合算されるSubpart F所得は他の所得同様に各パートナーに配賦される。CFCで計算してそれが最終額となる従来のSubpart F所得に関しては、これだけの規定で十分に機能していた。ところが、GILTIはCFCからフローアップしてくる項目だけでは完結せず、その後、株主側で合算したり、そこから合算ベースのNDTIRを差し引いたりと加工が必要となる。どのレベルで米国株主側の算定を行うのか、っていうのが重要となる訳だ。これは従来のSubpart F所得にはなかった新しい概念。
10%保有しているかどうかの判断は、直接、間接保有に加えて広範なみなし持分規定を適用して判断する。このみなし持分判断時に、従来は外国からのDownward Attributionを加味しなくても良かったものが、税制改正で免除規定が撤廃され、Downward Attributionを加味しなくてはいけなくなったのは以前から何回か触れている通り。Downward Attributionに関してはそのうち、それだけに特化したポスティングを企画したい。
で、規則案では、米国パートナーシップが10%以上保有するCFCに関して、パートナーの間接持分が10%未満の場合には、GILTIはパートナーシップレベルで算定し、その額をパートナーに配賦するとしている。このアプローチは既存のSubpart F所得合算のパートナーシップレベルで最終決定するアプローチに準じている。一方、パートナーの間接持分が10%以上、すなわちパートナー自身も米国株主扱いに至る間接持分を保有する場合には、パートナーは間接持分に準じてLook-throughする形でCFCからGILTI算定に必要な各項目の金額を取り込み、パートナーが保有する他のCFCの金額と合算してGILTI算定を行うとしている。
え~、間接持分が10%未満、10%以上のパートナーが混在しているケースはK-1作るの面倒くさそう。まずパートナーシップが自らのレベルでCFCからGILTI計算に必要な項目、すなわちTested Income(Loss)、QBAI、支払利息、受取利息、のPro-Rata持分を吸い上げ、そのうち間接持分10%以上のパートナーにはそれらの額各々を各パートナーの704(b)配賦比率で個々に配賦する。で、次にパートナーシップレベルに残っている各項目、すなわち間接持分10%未満のパートナー達に帰属する部分は、パートナーシップレベルでGILTI計算までして、GILTI合算額そのものを各パートナーに配賦する、っていうような作業になるように見える。
なかなかクリエイティブなハイブリッド処理法と言える。規則案の前文ではポリシー的な議論を展開して、このような変わったアプローチをサポートしようとしている。もし従来の米国株主の定義を無視して、米国パートナーシップを常にLook-Throughとしてしまうと、パートナーシップが10%以上保有している、すなわち米国株主となるケースでも、間接持分が10%未満となるパートナーがパートナーレベルで米国株主にならないように見え、GILTI合算をしなくてもいいような結果となるので適切ではない、としてピュアなAggregateアプローチを否定している。このアプローチは、パススルーっぽい考え方ではあるけど、Subpart F所得の合算を規定している法律ではサポートできない。
一方、ピュアなEntityアプローチ、すなわち、常にパートナーシップレベルでGILTI合算を計算し、結果を各パートナーに配賦する方法は、間接持分が10%以上のパートナーは、パートナーレベルで米国株主に準じる立場にあり、そのようなパートナーが、当該パートナーシップを介さずに他のCFCの米国株主となっている場合には、実質、一人の米国株主が2つのGILTI計算に基づく合算を行うこととなり、GILTIが米国株主レベルの属性である点に矛盾するとして、こちらも不適切だと結論付けている。でも、元々、法律では、外国法人や外国パートナーシップはLook-Throughするよう規定されてるけど、米国パートナーシップに対してLook-Throughを規定している条文はない。
となると、規則案のハイブリッドアプローチのうち、間接持分が10%のパートナーにGILTI各項目を配賦する部分は条文ではサポートできないことになる。しかも、規則案前文では散々、間接持分が10%のパートナーを「米国株主」って表現しているけど、定義的にそうなるにしても、ピックアップする所得はないはず。この点、なぜか法曹界も問題視している様子もないし、チョッと不思議。このまま最終規則化されてしまうんだろうか。
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