前回のポスティングでは、GILTI最終規則で採択された米国パートナーシップに対するAggregateアプローチに至る変遷等に関して触れたけど、今回はAggregateアプローチの内容そのものに関して。前回も言ったけど、このAggregateアプローチも、テクニカル面の理解は決して容易ではない。Sub FやGILTIを考える際のステップは、「米国株主の特定」、「CFCの特定」、「合算株主の特定」、「合算額の計算」という複数で構成されるけど、各ステップに適用される外国法人に対する持分保有の考え方をステップバイステップで「Dutifully」に適用する必要がある。米国税務の考え方って直感的に理解し難い部分が多いけど、ここもそのひとつ。
で、最終規則では、上の4つの思考ステップのうち、最初の2ステップとなる米国株主の特定およびその結果に基づくCFCの特定は、従来通りパートナーシップも米国株主となる場合は、そのまま米国株主と取り扱って考えるとしている。米国株主の特定時には、3つの持分を合算する必要がある。まずは「直接」保有規定。直接、本当に事実関係として保有している株式のことで、分かり易いし議論の余地のない絶対的な持分だ。
次が「間接」保有規定。ここの部分がパートナーシップを含む米国主体と外国主体を別扱いしている諸悪の根源と言える部分。外国法人、外国パートナーシップ、外国遺産が保有する株式は、各々持分に応じて株主、パートナー、受益者が保有しているものと取り扱うとしている。これは後述のみなし持分規定ではなく、Look-throughする間接持分規定。この間接持分規定は米国パートナーシップを含む「米国」の主体には適用がない。したがって「間接」の保有持分で課税関係を判断する際には、米国パートナーシップのパートナーに持分が「間接」的にフローアップしてくることはない。一方、間接保有規定の適用対象となる外国パートナーシップに関しては、外国パートナーシップが保有する株式は、各パートナーが持分に応じて保有していると取り扱われる。パートナーが外国主体の場合には、この間接持分の適用を反復適用して、最終的に米国パートナシップを含む米国主体に行きついたところで間接持分の適用は終わりとなる。
3つめの保有規定は米国税法、特にSub Cを取り扱う際に亡霊のように常に付きまとう「みなし」保有にかかわるもの。Constructive OwnershipとかAttributionとか言われ、Section 304を含む多くのシチュエーションに登場し、AttributionがまたAttributionしたりして、かなり「頭の体操」的な規定だ。みなし保有を規定している条文は複数あるけど、Sub FではSub CのSection 318を適用するよう規定されている。ちなみに同じ「Sub」でもSub FはSubpart F、Sub CはSubchaprter CだからCの方が格が上(?)だからね。Subpart FはSubchapter Nの一部。Section 318をきちんと理解するのは大変。サワリだけ紹介しておくと、Section 318は元々組織再編、出資、清算、分配その他、「法人と株主間」取引に対する取り扱いを規定しているSub Cに属する規定、しかもSection 318を適用するとわざわざ言及している条文にのみ適用があるもの。Sub Cは法人税(Corporate)部分だけど(だからCって訳ではなくこれは偶然)、法人税申告書となる1120とか作成する際には余り直接的に関係ない。そっちは普通の(?)税法、Section 61とかの世界が支配的だ。で、Section 318だけど、今回のクロスボーダー課税の例に見られるように、Sub C以外の条文でもその適用を「借用」するケースも多い。
Section 318によるみなし保有は大別すると3パターン。一つ目は家族が保有する株式は、同じ家族内の他の者が保有していると取り扱う「家族みなし保有規定」。配偶者、子供(養子含む)、孫、親が保有している株式は本人が保有しているとみなされるという規定。家族みなし保有の規定を読んでいつも面白いな、と思うのが、孫が保有してくる株式は本人、すなわち孫から見たおじいちゃんやおばあちゃんが保有している、ってみなされるのに、逆は規定されていない。一方通行で、おじいちゃんやおばあちゃんが保有している株式に関して、孫が保有しているとは取り扱われないことになる。おじいちゃんやおばあちゃんが、名義的に孫に株式を持たせることはあっても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を保有してもらうようなプラニングは方向的には懸念は少ないということなのだろうか。確かに比較的考え難いよね。あと兄弟も入ってないね。お兄さんとかお姉さんに株式持ってもらったりしたら、勝手に換金化されちゃうリスクがあるからかな。
2つめのみなし保有は事業主体が保有する株式はそのオーナーが持分比率に応じて保有していると取り扱う「Upward Attribution」。なぜUpwardかと言うと、事業主体からその上のオーナーに持分が上がってくるから。ちなみに組織図によってはオーナーが下に来ているようなデザインを見たことあるけど、直感的に分かり難いし、多分どちらかと言うとマイナーな表示法だろう。そんな組織図は、まるで昔の英国のバランスシートが負債が左で、資産が右に来てるやつを見てるみたいだ。Upward Attributionはパートナーシップ、遺産、信託、法人の4タイプの主体と各々のパートナー、受益者、株主に対して規定されている。パートナーシップに関しては、パートナーシップが保有する株式は各パートナーがパートナーシップに対する持分に応じて保有しているものと取り扱われる。法人に関しては、若干規定が緩和されていて、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有していると取り扱う。この部分の「みなし」保有規定は、先に触れたクロスボーダー課税時の外国主体に適用される「間接」保有規定とダブる。ポイントとしては、クロスボーダー課税で「間接」保有を語る際には、米国パートナーシップからのUpwardのAttributionはなく、同じストラクチャーでも「みなし」保有を語る際には、Upward Attributionがあるという点だ。すなわち、クロスボーダー課税の検討時に、パートナーが外国法人の株式を保有していると取り扱われるかどうか、っていう判断をする際に「間接」持分の話しをしているのか、「みなし」持分の話しをしているのか、で同一の事実関係でも税務上の法的な結果は異なることとなる。「なにそれ?」って思うかもしれないけど、条文法というのはそういうもの。
3つめのみなし保有規定は、逆に事業主体のオーナーが保有する株式は事業主体が保有していると取り扱う「Downward Attribution」。この規定は意外な結果を招き易く、直感的に分かり難いという意味で、3つのみなし保有規定の中で一番トリッキー。Upward Attribution同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人だけど、適用はチョッと異なる。まず、パートナーシップに関しては、パートナーが保有する株式は「全て」パートナーシップが保有していると取り扱われる。例えば、パートナーシップ持分を1%保有しているパートナーが、別の法人株式を1億株保有している場合、パートナーシップは1億の1%の100万株ではなく、ナンと1億株まるまる保有していると取り扱われてしまう。PEとかHedgeファンドのストラクチャー図を見ると、いつも誰がどの法人株式を何%保有していると取り扱われるのかな~、というメンタルExerciseの世界への突入を禁じ得ないのはDownward Attributionのせい。2017年(場合によっては2018年)の課税年度の一大仕事となったTansition Tax適用時には、Transition Taxの対象となるかどうかの判断をする際に、この規定の影響が大きいこと、またさらに実務的に株式保有の実態をパートナーシップ側で捕捉できない可能性もあることから、Transition Taxの規則案では5%未満、最終規則では10%未満のパートナーからは、Transition Tax目的ではDownward Attributionに基づくみなし保有を無視していいことになっていた。ただし、これはTransition Taxのみに適用される緩和措置で、他の規定に影響はない。法人に関しても、価値ベースで50%以上保有する株主が保有する(他法人の)株式は、全株に関して法人が保有しているように取り扱われる。例えば、複数の100%子会社を世界中に保有する日本法人2社が50・50でJVを米国に法人形態で設立したとする。この米国JV法人は、日本法人2社が保有する世界中の100%子会社は全て保有していると取り扱われる。以前はそうなってもCFCとなるかどうかとかのクロスボーダー課税検討の際には、Downward AttributionはTurn Offするという思慮深い例外規定があったが、この例外規定が税制改正で撤廃されて物議を醸しだしているのはみんなもご存知の通り。ちなみに、この検討時に米国法人のサイズは一切問われない。例えば、大手企業が趣味で米国に100ドル出資して50%以上の株式を保有するホットドッグスタンドやラーメン屋さんを設立したら、大手企業保有の全世界子会社は全てCFCとなる。合算持分が存在するかどうかは別の話しだけど。
この3つの基幹規定に加え、オプションの取り扱いが規定されていて、株式取得オプション保有者は対象となる株式を保有しているものと取り扱われる。株式取得オプションそのものを取得するオプション保有者に関しても同様。
で、一旦「みなし」保有規定に基づき、保有していると取り扱われると、「実際に」保有していると同様に取り扱われるのが原則。すると、そこから更に「みなし」保有が展開していくことがある。ただ、この点に関しては例外が2つあって、まず家族関係でみなし保有していると取り扱われる株式に関しては、その理由で更に他の家族メンバーにみなし保有を生じさせることはない。でないと先祖代々「ひいおじいさん・おばあさん」「ひいひいおじいさん・おばあさん」とか「曾孫」とかにも影響があったり、義理の両親とかに保有関係がいっちゃったり、と制御不能になってしまう。もうひとつの例外は、Downward Attributionされてきたみなし保有が事業主体から他のオーナーにUpward Attributionすることはない、というもの。これ以外の状況では、連鎖反応的に「反復適用」があり得る。例えば、子供が株式を保有している法人が保有している株式に関して、みなしで子供が保有していると取り扱われる場合、当株式は子供が実際に保有している同様に取り扱われるので(この時点では家族間のみなし保有規定の適用ではない)、親もその株式を保有していると取り扱われる(ここが家族間のみなし保有でここから他の家族メンバーには行かない)。となると、親がパートナーシップに少額でも出資していようもんなら、パートナーシップまで、この株式を保有していることになる。そして当パートナーシップが他のパートナーシップや法人の50%以上の持分を保有していると、それらの事業主体も・・、と「風が吹けば桶屋が儲かる」的にチェーンで繋がっていき、最初にチェーンをトリガーした子供とは一切関係がない者にも影響が及ぶことがある。
実際にTransition Taxの規則に取り上げられていた例だけど、米国パートナーシップに10%個人パートナーと5%の法人パートナーが存在してると仮定する。10%個人パートナーは外国法人の10%持分を保有している。90%の他の株主は全員非関連の外国人とすると、Transition Tax目的では、少なくとも一社10%の米国「法人」株主が存在しないと、Transition Taxの対象となる特定外国法人にならないとされていることから、個人パートナーだけを見れば当外国法人は特定外国法人には当たらないことになる。ところが、5%法人パートナーが米国内に100%子会社を保有しているとするとチョッと意外な展開となる。パートナーからパートナーシップに対するDownward Attributionで、パートナーシップは個人パートナーが保有する外国法人10%と法人が保有する100%米国子会社の双方をまるまる保有していると取り扱われる。この段階で米国子会社は実際にパートナーシップに100%保有されていると取り扱われるため、パートナーシップが保有する株式は全て今度は米国子会社にDownward Attributionしてくる。となると、パートナーシップが保有していると取り扱われる外国法人10%(もともと個人パートナーが実際に保有していた株式)は米国子会社保有となる。すると、この外国法人には少なくとも1社、10%以上の米国法人株主が存在することとなり、Transition Taxの対象となる。結果として個人パートナーは外国法人の1987年以降の留保所得に対してTransition Taxを支払うことになる。これはチョッと酷い、また多分知らぬが仏で終わってしまうのでは、ということで上述のTransition Tax適用時のパートナーシップへのDownward Attributionに限って、5%や10%の例外規定が適用されるに至っている。
と、Section 318の概要だったけど、これを知らないとクロスボーダー課税の米国パートナーシップの話しは全く通じないので簡単に背景を共有した。背景だけでだんだん長くなってきたので、次回はいよいよSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して。
で、最終規則では、上の4つの思考ステップのうち、最初の2ステップとなる米国株主の特定およびその結果に基づくCFCの特定は、従来通りパートナーシップも米国株主となる場合は、そのまま米国株主と取り扱って考えるとしている。米国株主の特定時には、3つの持分を合算する必要がある。まずは「直接」保有規定。直接、本当に事実関係として保有している株式のことで、分かり易いし議論の余地のない絶対的な持分だ。
次が「間接」保有規定。ここの部分がパートナーシップを含む米国主体と外国主体を別扱いしている諸悪の根源と言える部分。外国法人、外国パートナーシップ、外国遺産が保有する株式は、各々持分に応じて株主、パートナー、受益者が保有しているものと取り扱うとしている。これは後述のみなし持分規定ではなく、Look-throughする間接持分規定。この間接持分規定は米国パートナーシップを含む「米国」の主体には適用がない。したがって「間接」の保有持分で課税関係を判断する際には、米国パートナーシップのパートナーに持分が「間接」的にフローアップしてくることはない。一方、間接保有規定の適用対象となる外国パートナーシップに関しては、外国パートナーシップが保有する株式は、各パートナーが持分に応じて保有していると取り扱われる。パートナーが外国主体の場合には、この間接持分の適用を反復適用して、最終的に米国パートナシップを含む米国主体に行きついたところで間接持分の適用は終わりとなる。
3つめの保有規定は米国税法、特にSub Cを取り扱う際に亡霊のように常に付きまとう「みなし」保有にかかわるもの。Constructive OwnershipとかAttributionとか言われ、Section 304を含む多くのシチュエーションに登場し、AttributionがまたAttributionしたりして、かなり「頭の体操」的な規定だ。みなし保有を規定している条文は複数あるけど、Sub FではSub CのSection 318を適用するよう規定されている。ちなみに同じ「Sub」でもSub FはSubpart F、Sub CはSubchaprter CだからCの方が格が上(?)だからね。Subpart FはSubchapter Nの一部。Section 318をきちんと理解するのは大変。サワリだけ紹介しておくと、Section 318は元々組織再編、出資、清算、分配その他、「法人と株主間」取引に対する取り扱いを規定しているSub Cに属する規定、しかもSection 318を適用するとわざわざ言及している条文にのみ適用があるもの。Sub Cは法人税(Corporate)部分だけど(だからCって訳ではなくこれは偶然)、法人税申告書となる1120とか作成する際には余り直接的に関係ない。そっちは普通の(?)税法、Section 61とかの世界が支配的だ。で、Section 318だけど、今回のクロスボーダー課税の例に見られるように、Sub C以外の条文でもその適用を「借用」するケースも多い。
Section 318によるみなし保有は大別すると3パターン。一つ目は家族が保有する株式は、同じ家族内の他の者が保有していると取り扱う「家族みなし保有規定」。配偶者、子供(養子含む)、孫、親が保有している株式は本人が保有しているとみなされるという規定。家族みなし保有の規定を読んでいつも面白いな、と思うのが、孫が保有してくる株式は本人、すなわち孫から見たおじいちゃんやおばあちゃんが保有している、ってみなされるのに、逆は規定されていない。一方通行で、おじいちゃんやおばあちゃんが保有している株式に関して、孫が保有しているとは取り扱われないことになる。おじいちゃんやおばあちゃんが、名義的に孫に株式を持たせることはあっても、孫がおじいちゃんやおばあちゃんに株式を保有してもらうようなプラニングは方向的には懸念は少ないということなのだろうか。確かに比較的考え難いよね。あと兄弟も入ってないね。お兄さんとかお姉さんに株式持ってもらったりしたら、勝手に換金化されちゃうリスクがあるからかな。
2つめのみなし保有は事業主体が保有する株式はそのオーナーが持分比率に応じて保有していると取り扱う「Upward Attribution」。なぜUpwardかと言うと、事業主体からその上のオーナーに持分が上がってくるから。ちなみに組織図によってはオーナーが下に来ているようなデザインを見たことあるけど、直感的に分かり難いし、多分どちらかと言うとマイナーな表示法だろう。そんな組織図は、まるで昔の英国のバランスシートが負債が左で、資産が右に来てるやつを見てるみたいだ。Upward Attributionはパートナーシップ、遺産、信託、法人の4タイプの主体と各々のパートナー、受益者、株主に対して規定されている。パートナーシップに関しては、パートナーシップが保有する株式は各パートナーがパートナーシップに対する持分に応じて保有しているものと取り扱われる。法人に関しては、若干規定が緩和されていて、価値ベースで50%以上の持分を保有する株主に対してのみ、法人が保有する株式を、価値ベースの持分に応じて株主が保有していると取り扱う。この部分の「みなし」保有規定は、先に触れたクロスボーダー課税時の外国主体に適用される「間接」保有規定とダブる。ポイントとしては、クロスボーダー課税で「間接」保有を語る際には、米国パートナーシップからのUpwardのAttributionはなく、同じストラクチャーでも「みなし」保有を語る際には、Upward Attributionがあるという点だ。すなわち、クロスボーダー課税の検討時に、パートナーが外国法人の株式を保有していると取り扱われるかどうか、っていう判断をする際に「間接」持分の話しをしているのか、「みなし」持分の話しをしているのか、で同一の事実関係でも税務上の法的な結果は異なることとなる。「なにそれ?」って思うかもしれないけど、条文法というのはそういうもの。
3つめのみなし保有規定は、逆に事業主体のオーナーが保有する株式は事業主体が保有していると取り扱う「Downward Attribution」。この規定は意外な結果を招き易く、直感的に分かり難いという意味で、3つのみなし保有規定の中で一番トリッキー。Upward Attribution同様に対象はパートナーシップ、遺産、信託、法人だけど、適用はチョッと異なる。まず、パートナーシップに関しては、パートナーが保有する株式は「全て」パートナーシップが保有していると取り扱われる。例えば、パートナーシップ持分を1%保有しているパートナーが、別の法人株式を1億株保有している場合、パートナーシップは1億の1%の100万株ではなく、ナンと1億株まるまる保有していると取り扱われてしまう。PEとかHedgeファンドのストラクチャー図を見ると、いつも誰がどの法人株式を何%保有していると取り扱われるのかな~、というメンタルExerciseの世界への突入を禁じ得ないのはDownward Attributionのせい。2017年(場合によっては2018年)の課税年度の一大仕事となったTansition Tax適用時には、Transition Taxの対象となるかどうかの判断をする際に、この規定の影響が大きいこと、またさらに実務的に株式保有の実態をパートナーシップ側で捕捉できない可能性もあることから、Transition Taxの規則案では5%未満、最終規則では10%未満のパートナーからは、Transition Tax目的ではDownward Attributionに基づくみなし保有を無視していいことになっていた。ただし、これはTransition Taxのみに適用される緩和措置で、他の規定に影響はない。法人に関しても、価値ベースで50%以上保有する株主が保有する(他法人の)株式は、全株に関して法人が保有しているように取り扱われる。例えば、複数の100%子会社を世界中に保有する日本法人2社が50・50でJVを米国に法人形態で設立したとする。この米国JV法人は、日本法人2社が保有する世界中の100%子会社は全て保有していると取り扱われる。以前はそうなってもCFCとなるかどうかとかのクロスボーダー課税検討の際には、Downward AttributionはTurn Offするという思慮深い例外規定があったが、この例外規定が税制改正で撤廃されて物議を醸しだしているのはみんなもご存知の通り。ちなみに、この検討時に米国法人のサイズは一切問われない。例えば、大手企業が趣味で米国に100ドル出資して50%以上の株式を保有するホットドッグスタンドやラーメン屋さんを設立したら、大手企業保有の全世界子会社は全てCFCとなる。合算持分が存在するかどうかは別の話しだけど。
この3つの基幹規定に加え、オプションの取り扱いが規定されていて、株式取得オプション保有者は対象となる株式を保有しているものと取り扱われる。株式取得オプションそのものを取得するオプション保有者に関しても同様。
で、一旦「みなし」保有規定に基づき、保有していると取り扱われると、「実際に」保有していると同様に取り扱われるのが原則。すると、そこから更に「みなし」保有が展開していくことがある。ただ、この点に関しては例外が2つあって、まず家族関係でみなし保有していると取り扱われる株式に関しては、その理由で更に他の家族メンバーにみなし保有を生じさせることはない。でないと先祖代々「ひいおじいさん・おばあさん」「ひいひいおじいさん・おばあさん」とか「曾孫」とかにも影響があったり、義理の両親とかに保有関係がいっちゃったり、と制御不能になってしまう。もうひとつの例外は、Downward Attributionされてきたみなし保有が事業主体から他のオーナーにUpward Attributionすることはない、というもの。これ以外の状況では、連鎖反応的に「反復適用」があり得る。例えば、子供が株式を保有している法人が保有している株式に関して、みなしで子供が保有していると取り扱われる場合、当株式は子供が実際に保有している同様に取り扱われるので(この時点では家族間のみなし保有規定の適用ではない)、親もその株式を保有していると取り扱われる(ここが家族間のみなし保有でここから他の家族メンバーには行かない)。となると、親がパートナーシップに少額でも出資していようもんなら、パートナーシップまで、この株式を保有していることになる。そして当パートナーシップが他のパートナーシップや法人の50%以上の持分を保有していると、それらの事業主体も・・、と「風が吹けば桶屋が儲かる」的にチェーンで繋がっていき、最初にチェーンをトリガーした子供とは一切関係がない者にも影響が及ぶことがある。
実際にTransition Taxの規則に取り上げられていた例だけど、米国パートナーシップに10%個人パートナーと5%の法人パートナーが存在してると仮定する。10%個人パートナーは外国法人の10%持分を保有している。90%の他の株主は全員非関連の外国人とすると、Transition Tax目的では、少なくとも一社10%の米国「法人」株主が存在しないと、Transition Taxの対象となる特定外国法人にならないとされていることから、個人パートナーだけを見れば当外国法人は特定外国法人には当たらないことになる。ところが、5%法人パートナーが米国内に100%子会社を保有しているとするとチョッと意外な展開となる。パートナーからパートナーシップに対するDownward Attributionで、パートナーシップは個人パートナーが保有する外国法人10%と法人が保有する100%米国子会社の双方をまるまる保有していると取り扱われる。この段階で米国子会社は実際にパートナーシップに100%保有されていると取り扱われるため、パートナーシップが保有する株式は全て今度は米国子会社にDownward Attributionしてくる。となると、パートナーシップが保有していると取り扱われる外国法人10%(もともと個人パートナーが実際に保有していた株式)は米国子会社保有となる。すると、この外国法人には少なくとも1社、10%以上の米国法人株主が存在することとなり、Transition Taxの対象となる。結果として個人パートナーは外国法人の1987年以降の留保所得に対してTransition Taxを支払うことになる。これはチョッと酷い、また多分知らぬが仏で終わってしまうのでは、ということで上述のTransition Tax適用時のパートナーシップへのDownward Attributionに限って、5%や10%の例外規定が適用されるに至っている。
と、Section 318の概要だったけど、これを知らないとクロスボーダー課税の米国パートナーシップの話しは全く通じないので簡単に背景を共有した。背景だけでだんだん長くなってきたので、次回はいよいよSection 318のクロスボーダー課税への適用に関して。
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