Thanksgiving直後に公表されたBEAT最終規則に関しては、先日「BEAT財務省最終規則 (2)」で速報したけど、膨大なFTCの規則が同時に公表されてたり、12月3日には米国財務省長官がOECDデジタル課税ピラー1の今後の行方に重大な影響を与えるレターをOECD事務総長に送付したり、いろいろあってなかなかBEATの続きに触れることができなかった。
実はBEATの規則は、最終規則だけでなく新たな規則案が同時公開されている。2018年に公表され、今回の最終規則の基となる大本の規則案と区別するため、2019年「新」規則案と呼ばれているものだ。オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法は最近のトレンドで、元々必ずしも想定していなかった新たな切り口の検討事項とか、一旦方向性を決めたはずの取り扱いに関してパブリックコメントによりポリシー選択に再考の余地が生じているケースとか、がカバーされることが多い。
例えば、GILTI最終規則には、GILTIを合算する米国納税者を決定する際に、「米国」パートナーシップを「外国」パートナーシップ同様にLook-throughしてしまうという英断が盛り込まれたけど、これと同様の取り扱いをナンと従来からのCFC課税であるSub Fにも適用するという、60年の歴史を覆す凄い提案が同時に新規則案という形で公表されている。
Sub F適用時に米国パートナーシップをLook-throughする提案は法文解釈としては際どい気はするけど、ポリシーとしては合理的だ。長年、Sub Fを適用する際に、パートナーシップが米国なのか外国なのかっていう、どちらかというと形式的な違いで、課税関係が異なることに対する疑問も多かったし、結果的にストラクチャリングの検討が複雑になって混乱を招いてたり、逆にパートナーシップを利用したSub FのBlockerとか高度なプラニングに利用されたりもしていた。ただ、今まではSub Fっていう「リングフェンス」されたかなり限定的な所得合算に対する影響だったので、費用対効果的に余り深く考える時間がないような感覚だった。GILTI導入でCFCの所得合算のスコープが極端に広がったことで、合算する際にパートナーシップというものをどう考えるべきか、っていう法的フレームワークを再考せざるを得なくなったのは間違いない。特にGILTIは、Sub FのようにCFC側の数字がそのまま合算額になる訳ではなく、Tested Income、Loss、QBAI、特定利息、等のCFC側の属性を米国株主が自分の持分額を米国で通算・再計算し、GILTIという新たに米国株主側で発生する新属性を作り出すことから、米国側で誰がどのように取り込むかにより、所得のLocationだけでなく、金額も異なり、パートナーシップに対する取り扱いもよりHigh Stakeな検討となっていた。
でもGILTIばかりでなくSub Fでも米国パートナーシップをLook-throughさせてくれるようになると、ファンドとかが米国外のターゲットを買収する際に、デラウェア州の代わりにケイマン諸島のExempted Limited Partnership(LPS)を使用する必要がなくなり、ケイマン諸島の経済に悪影響っていう、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいなシナリオとならないかチョッと心配(?)。でも外国パートナーシップが不利になる訳ではないから、長年慣れ親しんだケイマン諸島LPSが一夜で取って代わられることはないんだろうし、またGILTIとSub FでLook-throughしてくれてもSection 1248のみなし配当のところはどんなことになるか不明だし、ケイマン諸島も未だ安泰でしょうか。
更に言えば、アウトバウンドの局面で仮にケイマン諸島LPSのニーズが減ってデラウェア州に戻ってきたとしても、ECIを気にする外国投資家やUBTIを気にする米国NPOが利用するフィーダーとしては、ライバルのBVI、更に最近ではアイルランドとかルクセンブルクとかが台頭してきているとは言え、やっぱり本家本元のケイマン諸島が圧倒的なプレゼンスを見せつけているので、こっちはなくならないから風が吹いても桶屋は結局儲からないかもね。でも、フィーダーはブロッカーだからLPSじゃなくてケイマン法人じゃん、って思うかもしれないけど配当相当のスワップに30%の源泉税が課せられるようになってからは、洗練されたヘッジファンドなんかはフィーダーをケイマン諸島LPSとして組成するケースが増えてきてる気がする。更に洗練されたファンドは、その上でCheck-the-BoxしてForeign Reverse Hybridとすることもあって、これはテクニカルにはベストなストラクチャーだ。ただ、ブローカーのバックオフィスが対応できれば、だけどね。実務部隊が対応できなくて訳わかんないことになるリスク大。
で、何の話しだったかというと、そうでした、オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法が最近のトレンドという話し。BEATもご多分に漏れずこのパターン。実は、Sub Fのパートナーシップの件もそうだけど、意外に最終規則よりも新規則案に納税者の関心を引く、実験的というか英語で言うところの「Juicy」な規定が提案されてることが多い。
BEATの2019年「新」規則では12カ月未満の短期課税年度の取り扱い、売上基準およびBE%算定目的の特定合算グループのメンバーの出入りの取り扱い、パートナーシップの取り扱いで未だ手当てされていない部分、っていうどちらかと言うと無味乾燥な3つの検討と並び、BE%を3%未満とするため納税者自らがBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」することを認める取り扱いに関して規定している。
この損金算入自己否認を容認する規定は寛容と言うか面白いのでこの点にフォーカスして触れてみたい。チョッと長くなってきたので、ここからは次回。
実はBEATの規則は、最終規則だけでなく新たな規則案が同時公開されている。2018年に公表され、今回の最終規則の基となる大本の規則案と区別するため、2019年「新」規則案と呼ばれているものだ。オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法は最近のトレンドで、元々必ずしも想定していなかった新たな切り口の検討事項とか、一旦方向性を決めたはずの取り扱いに関してパブリックコメントによりポリシー選択に再考の余地が生じているケースとか、がカバーされることが多い。
例えば、GILTI最終規則には、GILTIを合算する米国納税者を決定する際に、「米国」パートナーシップを「外国」パートナーシップ同様にLook-throughしてしまうという英断が盛り込まれたけど、これと同様の取り扱いをナンと従来からのCFC課税であるSub Fにも適用するという、60年の歴史を覆す凄い提案が同時に新規則案という形で公表されている。
Sub F適用時に米国パートナーシップをLook-throughする提案は法文解釈としては際どい気はするけど、ポリシーとしては合理的だ。長年、Sub Fを適用する際に、パートナーシップが米国なのか外国なのかっていう、どちらかというと形式的な違いで、課税関係が異なることに対する疑問も多かったし、結果的にストラクチャリングの検討が複雑になって混乱を招いてたり、逆にパートナーシップを利用したSub FのBlockerとか高度なプラニングに利用されたりもしていた。ただ、今まではSub Fっていう「リングフェンス」されたかなり限定的な所得合算に対する影響だったので、費用対効果的に余り深く考える時間がないような感覚だった。GILTI導入でCFCの所得合算のスコープが極端に広がったことで、合算する際にパートナーシップというものをどう考えるべきか、っていう法的フレームワークを再考せざるを得なくなったのは間違いない。特にGILTIは、Sub FのようにCFC側の数字がそのまま合算額になる訳ではなく、Tested Income、Loss、QBAI、特定利息、等のCFC側の属性を米国株主が自分の持分額を米国で通算・再計算し、GILTIという新たに米国株主側で発生する新属性を作り出すことから、米国側で誰がどのように取り込むかにより、所得のLocationだけでなく、金額も異なり、パートナーシップに対する取り扱いもよりHigh Stakeな検討となっていた。
でもGILTIばかりでなくSub Fでも米国パートナーシップをLook-throughさせてくれるようになると、ファンドとかが米国外のターゲットを買収する際に、デラウェア州の代わりにケイマン諸島のExempted Limited Partnership(LPS)を使用する必要がなくなり、ケイマン諸島の経済に悪影響っていう、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいなシナリオとならないかチョッと心配(?)。でも外国パートナーシップが不利になる訳ではないから、長年慣れ親しんだケイマン諸島LPSが一夜で取って代わられることはないんだろうし、またGILTIとSub FでLook-throughしてくれてもSection 1248のみなし配当のところはどんなことになるか不明だし、ケイマン諸島も未だ安泰でしょうか。
更に言えば、アウトバウンドの局面で仮にケイマン諸島LPSのニーズが減ってデラウェア州に戻ってきたとしても、ECIを気にする外国投資家やUBTIを気にする米国NPOが利用するフィーダーとしては、ライバルのBVI、更に最近ではアイルランドとかルクセンブルクとかが台頭してきているとは言え、やっぱり本家本元のケイマン諸島が圧倒的なプレゼンスを見せつけているので、こっちはなくならないから風が吹いても桶屋は結局儲からないかもね。でも、フィーダーはブロッカーだからLPSじゃなくてケイマン法人じゃん、って思うかもしれないけど配当相当のスワップに30%の源泉税が課せられるようになってからは、洗練されたヘッジファンドなんかはフィーダーをケイマン諸島LPSとして組成するケースが増えてきてる気がする。更に洗練されたファンドは、その上でCheck-the-BoxしてForeign Reverse Hybridとすることもあって、これはテクニカルにはベストなストラクチャーだ。ただ、ブローカーのバックオフィスが対応できれば、だけどね。実務部隊が対応できなくて訳わかんないことになるリスク大。
で、何の話しだったかというと、そうでした、オリジナルの規則案を最終化する際に、新たな規則案を同時公表する手法が最近のトレンドという話し。BEATもご多分に漏れずこのパターン。実は、Sub Fのパートナーシップの件もそうだけど、意外に最終規則よりも新規則案に納税者の関心を引く、実験的というか英語で言うところの「Juicy」な規定が提案されてることが多い。
BEATの2019年「新」規則では12カ月未満の短期課税年度の取り扱い、売上基準およびBE%算定目的の特定合算グループのメンバーの出入りの取り扱い、パートナーシップの取り扱いで未だ手当てされていない部分、っていうどちらかと言うと無味乾燥な3つの検討と並び、BE%を3%未満とするため納税者自らがBase Erosion Benefitを構成する損金を「自己否認」することを認める取り扱いに関して規定している。
この損金算入自己否認を容認する規定は寛容と言うか面白いのでこの点にフォーカスして触れてみたい。チョッと長くなってきたので、ここからは次回。
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