基本となる考え方
税金は所得があれば必ず払わなければなりません。ほとんどの社会人は毎年、所得税を払っていると思います。普通の家庭では年間支出のうち、税金(+ソーシャルセキュリティやメディケアなど)が支出額トップではないでしょうか?それなのに、家計をうまくやりくりしていこうと思ったとき、税金をどう払っていくか、というのは案外、見過ごされているような気がします。税金というと「できれば払いたくない」「どうやったら払わずに済むか」という意識が働きがちです。あるいは給与から天引きされてしまうので、「どうしようもない」と諦めたり、さらには確定申告(Tax Return)でいくらかでも返ってくると、「 得をした」とさえ思う事もあります(得なんてトンでもないです。払う必要の無いお金が返ってきただけなんですから)。
こうやって考えていくと、税金とうまく付き合うのはFI達成のための必須科目といえます。主なポイントは
- 税金は払うときに考えるのではなく、前もって戦略的に考える
- 仕組みを理解した上で、有効活用する
- 税金だけ、切り離して考えるのではなく、お金の運用や家計と一緒に総合的に考える
前もって考える戦略的に考える
これは誰もが知っているにも関わらず、案外見過ごされている事です。例えば税控除を受けるためには、Calendar Year(暦年)内にその支出が発生しなければなりません。ある控除項目の対象が$3000以上だったとすると、1年の間にその$3000(以上)を支出すれば控除が受けられるのに、12月に$1500を、1月に残りの$1500を支出した場合は全く控除が受けられません(=税金を余計に払わないといけない)。ですから、状況が許す限り、そういう控除項目が有効になるように支出時期を考える事が大切です。
有効活用する
税金は収入の種類によって比率が決まって必ず掛かってきますが、2つの方法でその税額を減らしていきます。1つは課税となる対象額を減らす事です。Pre-taxで控除する、という言い方をしますが、例えば非課税のRetirement Plan(401KやIRAなど)に「拠出」する事によって、課税対象となる所得額を減らす事ができます。正確にはこれらのRetirement Planに拠出するのは税金を無くすわけではなく、将来に先送りする事になります。401Kから引き出したときに税金が掛かるのです。しかし、税金が掛からなかった分を複利で運用できますから、「
有効活用」することによって、将来の受取額が増える事になります。
もう一つの方法は、税率が低い種類に収入を移すのです。例えば株を売ったときは利益が出たら税金が掛かります。 1年以内の売買なら通常の所得税率 (Ordinary Income Tax Rate) が適用されますが、1年以上保有すればCapital Gain Tax になり、一律15%です
*1。少しの保有期間の違いで税率が変わる場合は注意しましょう。
総合的に考える
税金を他のFI的なお金の運用と切り離して考える事はできません。例えば、$10,000ドル、貯金があったとします。これを5年間運用して、住宅購入の資金にしたいとします。住宅購入という必ず頭金が必要な出費ですから、株などの動きの激しい投資は避けたいとします
*2。できれば、比較的安全に運用して、確実な利息を得たいとします。さて、銀行のCertificate of Depodit (CD)の利回りが7%、非課税の地方債が5%だったとします。どちらが運用先としていいでしょうか?答えは「
自分のTax Bracket (税率区分)による」になります。Tax Bracket が28%かそれ以下ならCDで7%もらった方が得でしょう。実質利率が7x(1-0.28)=5.04%で地方債よりも高いからです。地方債は非課税ですから5%がそのまま利息として収入になります
*3。もしTax Brecketが31%以上ならCDの利率は7x(1-0.31)=4.83%かそれ以下になります。それなら非課税の地方債で5%もらった方が得でしょう。
このように、税金の有無で実質の利率が変わってきます。だからFI的運用は税金/税制/税率を無視しては行えません。CDと地方債の比較なら簡単です。しかし、不動産、Small Business、あるいはローン(住宅ローンと自動車ローンでは課税が異なる)などになると単純に非課税/課税だけの区別でなく、将来に渡っての利益や損失とその期間(長期的な運用か短期で売り抜けるか)で変わってきます。ですから、税制を理解して、
総合的に考えていく事が大切です。