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その他の注意点

不要な保険

保険にはさまざまな種類がありますが、全ての保険が必要ではありません。保険の中にはほとんどの人にとって不要な保険や、他の種類の保険でカバーするべきものがあります。以下の保険は、ほとんどの人にとって不要です。こういった保険のダイレクトメールを受け取ったり、エージェントに勧められた場合は注意しましょう。

Mortgage Life Insurance

家を買うとすぐに多くのダイレクトメールが送られてきます。その中にMortgage Life Insurance(またはMortgage Protection Life Insurance)があります。これは加入者が死亡した際に住宅ローンの残高を払ってくれる保険です。保険の種類によっては、死亡以外にも障害を負った場合を含む場合もあります。 この保険の問題点はいくつかあります。まず、保険金の使途が住宅ローンの残高の返済に限られていることが上げられます。生命保険のページで解説したように、生命保険はさまざまな必要性をカバーしなければなりません。しかし、この保険では住宅ローンの支払いという限られた目的しかカバーしません。 保険金額も消費者を混乱させるものです。住宅ローンは支払いを続けていけばだんだんと残高は減っていきます。Mortgage Life Insuranceは多くの場合、最初の住宅ローンの元本で保険金額があらわされますが、その金額がずっと続くのではありません。だんだんと減っていく元本に合わせ、保険金額も減っていきます。その為、同じ保険金額で他の種類の保険と比較することが難しく、場合によっては割安と勘違いさえしてしまう場合があります。保険会社は意図的にそういった勘違いを誘導するようなダイレクトメールを作っているように思えます。保険金額の減額を正しく計算に入れると、Mortgage Life Insuranceは保険料が割高な保険となります。 限定的な保険であること、保険料が割高であることから、Mortgage Life Insuranceは普通は不要な保険であるといえます。死亡した際の補償が必要であれば、定期保険を買うべきでしょう。 ただし、Mortgage Life Insuranceが有用な場合も、稀にあります。健康診断が義務付けられていない保険なら、健康問題を持っている人も加入できる可能性があります。その場合であっても、既往症などが除外項目になっている場合があります。必ず詳細な規則を全て確認してから買うべきでしょう。

延長保証

延長保証(Extended Warranty)は電化製品などを購入する場合、店員から勧められる製品保証です。通常、メーカー保証がついており、延長保証はその期間が終わったあと、販売店が別に保証します。 保険を掛けるべきものの原則は、損害が発生したときの規模が大きいものです。電化製品などは仮に動かなくなったとしても、単価が安いものは買い換えれば済みますし、単価の高いものは修理費を払って使い続ける事になります。損害がそれほど大きくはないので、そもそも保険を掛けるべきではないのです。 延長保証は非常に割高な保険です。電化製品で言えば製品価格の5~10%ほどになり、故障する確率と比べると高い金額を払う事になります。さらに保証の条件が複雑で、消費者に誤解を与えていることがあります。例えば保証されるのはメーカーの保証が切れた後だけであるため、3年保証と表示されていても、実際にはメーカー保証の1年に、販売店の2年保証が追加されたものである場合があります。保証対象が限定的で、実際には使えなかったということもありえます。このような理由から、延長保証は特別な理由がない限り、購入する必要がありません。 延長保証を掛けた方が良い場合も少ないながらもあります。非常に高額で故障率も高い製品、例えばリアプロジェクションテレビはその例です*1。また、中古車などを買う場合も延長保証は検討しても良いでしょう。中古車の延長保証は保証対象がさまざまで、駆動系だけしか保証しないものから、新車のメーカー保証に近い総合的なものまであります。

クレジットカード保険

クレジットカード会社から、利用明細書に同封されて生命保険の勧誘が送られてくる場合があります。この生命保険はカード利用者が死亡した際にカード残高を払ってくれるというものです。保険料はカード残高に依存して決まり、例えば残高$100当たり59セント、などと表記されています。 自分のファイナンスを正しく管理している人は、毎月、カード残高を残さず、全額を払っているはずです*2。さらにこの保険は健康診断などを要求しないので、この保険料は通常の生命保険の保険料と比べると、非常に割高になっています。健康であれば、クレジットカードの生命保険ではなく、通常の生命保険に入れば良いことになります。もし健康上の理由からどの生命保険にも入ることができないか、不治の病を患い、余命がもうあまりない、という状況にでもならない限り、この保険は不要です。 同じ理由でカード会社が提供するDisability Insuranceも不要です。加入者がDisabilityのために働けなくなったら、カードの残高を払ってくれるという保険です。しかもこの保険は割高なだけでなく、Disabilityの認定が厳しくて支払いをしてくれないという問題もあります。Disabilityの原因が病気では適用されず、事故の場合だけに限られるという条件が付くものもあります。 失業した場合にカードの支払いを猶予してくれる保険もよくあります。失業したときのためには緊急資金を用意しておくべきですから、正しく準備している人には不要の保険です。この保険は、支払いを猶予はするが利息が付く場合や、猶予期間中はカードを使うことができなくなるなど、不合理な条件が付くものもあります。 このようにカード会社が勧誘する保険は、普通の消費者には意味がないものであり、加入する必要はまったくありません。

注意するべき特殊なケース

レンタルの際の保険

ボートやジェットスキーなどを旅行先で借りることがあります。また、キャンピングカーや引越しトラックなど、通常のレンタカーではないものを借りることもあるでしょう。こういった非乗用車のレンタルは、通常のレンタカーのような保険ではない場合が多いので、気をつける必要があります。 例えばボートを借りるときに、ボート自体の価値が$30,000なのに物損の際の補償が$1,000までの保険では、意味がありません。ボートにかすり傷をつけてしまった程度ならその保険でカバーされますが、岩にぶつけて大きな凹みを作ってしまったら、その保険だけでは不十分でしょう。ボートの場合は住宅保険でカバーされる場合がありますから、レンタルする前に確認しておくべきでしょう。 レンタルトラックで問題になる場合もあります。例えば米国の大手ホームセンターでは、購入した資材を運ぶ手段として廉価なトラックレンタルを提供しています。しかし保険は提供しておらず、損害が発生した場合は自分で補償しなければなりません。自分の自動車保険などの補償対象になっていれば問題ないのですが、トラックなど特殊車両の場合、補償対象にならないほうが多いでしょう。

イベントの契約

結婚式のレセプションや誕生日などのイベントのためにホテルの会場やレストランを貸し切りにする場合があります。こういった場合、少人数で利用する場合とは別に、契約を結ぶことになります。その際、必ず契約書を最初から最後まで読むようにしましょう。イベントの主催者側になった場合、どのような責任が掛かるのか、ホテルやレストランの責任はどこまでか、確認する必要があるからです。 例えばレストランを貸し切って結婚式のレセプションを行うとしましょう。もし契約書に「事故があった際は主催者が一切の責任を負う」という条項があったら、主催者の落ち度による責任だけでなく、参加者が酔っ払って起こした事故や、レストランの料理のために発生した食中毒まで、すべて主催者として賠償責任を負うことになります。参加人数が多いイベントであれば、いくらアンブレラ保険があっても足りないでしょう。 必ず契約内容を確認し、レストラン側が負うべき責任を明確にしましょう。主催者や参加者の過失による損害は自分の住宅保険でカバーできる範囲か確認し、必要であればイベント保険を探します。

特別な不動産のケース

自宅であれ、別荘やタイムシェアであれ、不動産を持っている場合、賠償責任が発生する確率、つまりリスクが高くなります。特別な方法で不動産を貸したり、使用した場合、思わぬときに保険が適用されないことがありえます。 アメリカでは特別なイベントのために自宅を貸し出す人がいます。スパーボールやニューヨーク市のNew Year's Eveなど、その時だけ自宅を空け、人に貸してレント収入を得る事が出来ます。しかし、自宅の住宅保険はこういった賃貸をそのままではカバーしません。こういった形で貸し出さないことがリスクを避ける最善の方法です。しかし、どうしても貸すのであれば、十分なデポジットを預かる、契約書を交わして借り手に賠償責任がある事をはっきりさせる、事前に保険会社と交渉し自宅の保険でカバーできるようにするなど、しっかりと準備をする必要があります。 別荘などを友人と共同で所有したり、タイムシェアで他の人とコンドミニアムのユニットを所有する事があります*3。共同所有では保険をどのように契約するか、慎重に検討しましょう。所有者としての責任がどんな形で掛かってくるか、明確にしておく必要があります。場合によっては保険エージェントと一緒に、最適な条項を検討するといいでしょう。 タイムシェアの場合は管理会社が保険をまとめて掛けており、他の人が使っている間や、使用権を交換して他のユニットを使うときはカバーされている事が多くなっています。しかし、自分で自分のユニットを使うときはカバーされていない場合があります。その場合、友人が自分と一緒にそのユニットを使用しているときに怪我をしたら保障されない事になってしまいます。ユニットそのものの保険や、自分の住宅保険が賠償責任をカバーするか確認し、カバーされないケースがあれば必ず、追加条項でカバーされるようにするなど、対策を取る必要があります。
*1:FI的には高額で故障率が高い、ぜいたく品を買うべきではないのですが・・・
*2:そうでなければ、今すぐ、そうするべきです。
*3:保険の事を考えるよりも前に、そもそも、別荘やタイムシェアを持つことが必要かどうか、よく考えるべきです。