前回のポスティングではグリーンカード放棄時点の課税関係の基本であるMark-to-Marketのコンセプトを紹介した。今回はその詳細に関して話を続ける。
*非課税枠
Mark-to-Marketに基づき認識されるネット・ゲインには$600Kの非課税枠が設けられている。この非課税枠は物価スライドされ、2009年の金額は$626Kだ。この物価スライド調整を単純に逆算すると2008年から2009年の物価上昇率は4.3%だったということができる。デフレ懸念がある中、結構な物価上昇率だなという印象がある。ちなみに連銀の政策は適度なインフレを誘導するというもののようだが、ドル紙幣を余りにすり過ぎるとインフレが進み、将来の物価スライド調整も大きなものになるかもしれない。
非課税枠を超えてゲインがある場合には、非課税枠の金額を各資産のゲイン金額に基づいて各資産に按分配布して課税関係を決める。例えば長期と短期のキャピタルゲインを生み出すような資産を双方所有している場合にはこの按分により税負担が異なるだろう。
面白いことにこの非課税枠は一生に一回しか使えないと規定されている。一生のうちにそんなに何回もグリーンカードを取得しては放棄するケースも少ないので実務上の影響は少ないと思われるが、コンセプト的には2回目のグリーンカード放棄時は一回目に放棄時に未使用だった非課税枠(もし残っていれば)のみが使用可能となる。
*税務簿価の調整
Mark-to-Market規定に基づきゲイン・損失が認識された場合には、各資産のその後の税務簿価が調整される。すなわち、ゲインが認識された場合にはその分の簿価が上がり、損失が認識された場合には簿価が減額される。二重課税、二重損失取りを避けるために当然の処理である。ただし、この簿価の調整はグリーンカード放棄後にも米国での課税関係が残る資産に関してのみ意味があることになる。したがって、米国不動産の簿価調整は重要だが(米国不動産は非居住者になってから売却しても通常は米国の申告所得を生み出す)、株式等の動産に係る簿価調整は、その後に本当に株式を売却しても米国課税所得とならないため意味がない。
*Inbound Step-Up規定
Mark-to-Marketにて計算されるゲイン・損失は通常のキャピタルゲイン同様に「みなし売却の時価」マイナス「取得コスト(プラスその後の税務上の調整があれば調整後)」という算式で計算される。しかしグリーンカードを放棄する者が持つ資産のうち、米国の居住者になった時点で既に含み益を持っていた資産に対する課税としては、グリーンカード放棄時点に存在する含み益まるまるを課税対象とするというのは、Exit Chargeの考え方から行くと若干やり過ぎではないかとも思える。
そのようなケースに対応するために、グリーンカード放棄時のMark-to-Market適用の目的のみ関しては、最初に居住者となった時点での時価を取得コストと考えてもよろしいという規定(Inbound Step-Up)が設けられている。この規定は各資産毎の選択適用が可能である。
例えば、12年前に500で買った株式が10年前に始めて米国居住者になった時点では800の時価だったとする。グリーンカード放棄時にこの株式の時価が2,000だったとするとMark-to-Marketに基づくみなしゲインは2,000マイナス800の1,200となる。これは10年前に米国居住者になる直前にこの株式を売却していればその時点でのゲイン800マイナス500の300が米国で課税されていなかったことを考えるとInbound Step-Upは論理的である。ただ、もしグリーンカード放棄時に実際にこの株式を売却したとすると認識が必要となったゲインは2,000マイナス500で1,500まるまるだったことを考えるとこのInbound Step-Up規定は良心的なものだ。
このInbound Step-Up規定は米国不動産には適用されない。例えば、上の例の株式を米国不動産に置き換えると、実際に売却していても、Mark-to-Marketで課税されていても、ゲインは2,000マイナス500の1,500となる。これは米国不動産がFIRPTA規定でほぼ常に非居住者にとっても申告所得を生み出すことを考えると賢明な規定であるといえる。すなわち、仮に10年前に米国居住者になる直前に米国不動産を売却したとしてもその時点でのゲイン300は米国で課税されていたからだ。この点、他の資産と取り扱いが異なるのは理解できる。
次回のポスティングではMark-to-Marketに基づくゲインに対する税金支払いの繰延選択等に関して話を続ける。
*非課税枠
Mark-to-Marketに基づき認識されるネット・ゲインには$600Kの非課税枠が設けられている。この非課税枠は物価スライドされ、2009年の金額は$626Kだ。この物価スライド調整を単純に逆算すると2008年から2009年の物価上昇率は4.3%だったということができる。デフレ懸念がある中、結構な物価上昇率だなという印象がある。ちなみに連銀の政策は適度なインフレを誘導するというもののようだが、ドル紙幣を余りにすり過ぎるとインフレが進み、将来の物価スライド調整も大きなものになるかもしれない。
非課税枠を超えてゲインがある場合には、非課税枠の金額を各資産のゲイン金額に基づいて各資産に按分配布して課税関係を決める。例えば長期と短期のキャピタルゲインを生み出すような資産を双方所有している場合にはこの按分により税負担が異なるだろう。
面白いことにこの非課税枠は一生に一回しか使えないと規定されている。一生のうちにそんなに何回もグリーンカードを取得しては放棄するケースも少ないので実務上の影響は少ないと思われるが、コンセプト的には2回目のグリーンカード放棄時は一回目に放棄時に未使用だった非課税枠(もし残っていれば)のみが使用可能となる。
*税務簿価の調整
Mark-to-Market規定に基づきゲイン・損失が認識された場合には、各資産のその後の税務簿価が調整される。すなわち、ゲインが認識された場合にはその分の簿価が上がり、損失が認識された場合には簿価が減額される。二重課税、二重損失取りを避けるために当然の処理である。ただし、この簿価の調整はグリーンカード放棄後にも米国での課税関係が残る資産に関してのみ意味があることになる。したがって、米国不動産の簿価調整は重要だが(米国不動産は非居住者になってから売却しても通常は米国の申告所得を生み出す)、株式等の動産に係る簿価調整は、その後に本当に株式を売却しても米国課税所得とならないため意味がない。
*Inbound Step-Up規定
Mark-to-Marketにて計算されるゲイン・損失は通常のキャピタルゲイン同様に「みなし売却の時価」マイナス「取得コスト(プラスその後の税務上の調整があれば調整後)」という算式で計算される。しかしグリーンカードを放棄する者が持つ資産のうち、米国の居住者になった時点で既に含み益を持っていた資産に対する課税としては、グリーンカード放棄時点に存在する含み益まるまるを課税対象とするというのは、Exit Chargeの考え方から行くと若干やり過ぎではないかとも思える。
そのようなケースに対応するために、グリーンカード放棄時のMark-to-Market適用の目的のみ関しては、最初に居住者となった時点での時価を取得コストと考えてもよろしいという規定(Inbound Step-Up)が設けられている。この規定は各資産毎の選択適用が可能である。
例えば、12年前に500で買った株式が10年前に始めて米国居住者になった時点では800の時価だったとする。グリーンカード放棄時にこの株式の時価が2,000だったとするとMark-to-Marketに基づくみなしゲインは2,000マイナス800の1,200となる。これは10年前に米国居住者になる直前にこの株式を売却していればその時点でのゲイン800マイナス500の300が米国で課税されていなかったことを考えるとInbound Step-Upは論理的である。ただ、もしグリーンカード放棄時に実際にこの株式を売却したとすると認識が必要となったゲインは2,000マイナス500で1,500まるまるだったことを考えるとこのInbound Step-Up規定は良心的なものだ。
このInbound Step-Up規定は米国不動産には適用されない。例えば、上の例の株式を米国不動産に置き換えると、実際に売却していても、Mark-to-Marketで課税されていても、ゲインは2,000マイナス500の1,500となる。これは米国不動産がFIRPTA規定でほぼ常に非居住者にとっても申告所得を生み出すことを考えると賢明な規定であるといえる。すなわち、仮に10年前に米国居住者になる直前に米国不動産を売却したとしてもその時点でのゲイン300は米国で課税されていたからだ。この点、他の資産と取り扱いが異なるのは理解できる。
次回のポスティングではMark-to-Marketに基づくゲインに対する税金支払いの繰延選択等に関して話を続ける。
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