リスクとは?
リスクといっても人によって思い浮かべるイメージはさまざまでしょう。金利の変動リスク、元本割れリスク、インフレーションリスクなど投資にまつわるリスクはさまざまなものがあります。ポートフォリオを組む理由はリスクを減らすためですから、まずはリスクとはどんなものなのか、どのような性質があるのかを理解しましょう。CDと株の例
例としてCD(定期預金)と、ある企業A社の株を考えてみましょう。5年満期で年利5%のCDの場合、1年目から5年目まで、常に利回りは5%です。毎年5%だから平均利回り(Average Return, Annualized Rateなどと言います)も5%です。A社の株は1年目から5年目まで、下記の表のように利回りが上がったり下がったりしましたが、同じように約5%の利回りでした。CD | A社株 | |
---|---|---|
1年目 | 5% | 6% |
2年目 | 5% | -3% |
3年目 | 5% | 13% |
4年目 | 5% | 7% |
5年目 | 5% | 3% |
平均利回り | 5.00% | 5.07% |
A社株は毎年、利回りが大きく変動しているにも関わらず、5年間の平均利回り*1はほぼ同じである事に注目してください。さて、ここで6年目の利回りを考えてみます。CDを1年更新すると、今までと同じ5%の利率だとしましょう。株は利回りは予測できませんが、A社の経営状態は過去5年間とそれほど違わないとします。あなたならどちらに投資しますか? おそらく多くの人はCDにするのではないでしょうか?どちらも平均5%の利回りなら、確実に5%もらえるCDの方が、平均は5%であっても変動が大きい株より安心だからです。別の視点から見ると、A社株は、今までの平均は5%であっても、来年はどうなるのか分からないのです。この分からない、つまり将来が希望通りにならないかもしれない状態が、リスクの正体です。
リスクの測り方
上記のように投資家*2が希望する結果と違う結果になる確率がリスクといえます。では、どのようにリスクを数字として表すのでしょうか? CDの場合、毎年必ず5%の利率でしたから、金利の変動はありませんでした。A社株は平均は約5%だったものの、-3%から最大で+13%まで大きく変動しました。言い換えれば5%プラス/マイナス8%だったと言えます。この+-に振れる度合を標準偏差(Standard Deviation*3)といい、リスクを表す度合として使用します。 リスクを計れるようになると、投資対象がどのくらいリスクがあるのか、比べられるようになります。例えばB社株は上記のA社株と同じように平均利回りは約5%だったとします。しかし標準偏差(記号σで表されます)が3%だったとしましょう。すると、利回りは5%プラス/マイナス3%の幅で振れるという事になり*4、A社よりも利回りが安定している事になります。上記のCDの場合は利率の変動が0なのでσ=0となり、利率リスクはない事になります*5。リスクフリーの投資
リスクが全くない、つまり決まった利回りが確実にもらえる投資をリスクフリー(Risk Free)と言います。リスクフリーである投資先(Asset)として一番良く使われるのはTreasury Bill(1年以下の米国債)です。アメリカという最高格付けの国の国債で、過去に債務不履行を起こした事がなく(デフォルトリスクはないとして扱われる)、1年以下という期間ですから、インフレーションの変動もそれほど気にしなくて構いません。 実用上はほぼリスクフリーになるものとしてTreasury Bill 以外にCD(Certificate of Deposit = 定期預金)とCP(Commercial Paper)があります。CDは銀行が倒産した場合は元本は$100,000までFDICで保証されていますが、利息は保証されていません。CPはわずかならがデフォルトリスクがあります。しかし、どちらもリスクの度合としては非常に低いものになっていますので、普通のポートフォリオの中ではリスクフリーとして扱っても構わないでしょう。 Treasury Bill, CD, CPの3つの投資先は主にMoney Market Fundの投資先になっているので、Money Market Fundはリスクが非常に低い投資先といわれているのです。自分のポートフォリオにリスクフリーの投資先を入れる場合はT-BillやCDだけでなく、出し入れが自由なMoney Market Fundも使うといいでしょう。リスクと利回り
今度はもう少し現実に近い例を考えてみましょう。CDはリスクが非常に低いので利率も低くなっています。株式はリスクはあるものの長期的に見れば高い利回りになります。ここでC社株を考えてみましょう。C社の株の平均利回りは11%ですが、リスクはプラスマイナス22%だとします。酷い年には11-22=-11%、良い年には11+22=33%の利回りになるとします。さて、あなたならどちらに投資しますか?
バランスの取り方
さて、5%のCDとC社株と、どちらにすれば良いでしょう?例えばあなたの投資目標が、年間8%の利回りだったとします。CDでは5%ですから少なすぎ、C社株だけではリスクが多すぎて不安です。そこで、資金の半分をCDに、半分をC社株に投資することにしましょう。このとき、全体の利回りは 全体の利回り = CDの利回り x 50% + C社株の利回り x 50% で計算されるので、年間8%の利回りになります。もちろん、この数字は平均であって、C社株がこれから1年間どのような利回りになるか予想はつきません。しかし、長期的に見れば8%の利回りになると期待できます。