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Mutual Fundの概要

アメリカでは日本よりも投資環境が進んでいます。理由は
  • 金融業界の規制緩和が進み、普通の人でも投資しやすい環境になった
  • 401kやIRAのように、「投資」のための投資ではなく、老後の資金作りという目的がはっきりした投資が普及した
  • 90年代の好況で投資市場にお金が流れブームになった。
アメリカが普通の人でも投資をしやすいのは、1)小額で始められる、2)情報が豊富に得られる、3)投資商品が豊富で歴史がある、などの理由です。日本でも規制緩和が進んでいますが、今でも株を1株単位で買うのは難しく、ミニ株で100株、普通の株は1000株ではないでしょうか? *1さらにアメリカではMutual Fund(投資信託)の種類が豊富で、しかも手数料が日本で普及しているものよりも低くなっています。このMutual Fundはこれから投資をやってみよう、という人が始めやすい投資対象です。

Diversifyとは?

投資にはリスクがつきものです。ところが、1つの投資先だけではリスクがあるが、複数の投資先に分散して投資すれば(統計的には)リスクを減らせることが分かっています。Diversify(分散投資 *2 )とは複数の投資先に資金を分散して、リスクを減らすことです。例えば100社の株に投資していた場合、 1社くらい倒産しても、投資額すべてが消えてしまうことはありません。また、100社がそれぞれ違う値動きをすれば、数社の株が下がっても、 他の株が上がれば全体としてみればなだらかな値動きになります。 Index(例えばDaw Jones や S&P500など)は、何社もの株価の値動きを平均したものと言えますが、1つの株を見るのでなく、市場全体で考えるのが Diversify と言えるでしょう。

Mutual Fund とは?

Diversifyでリスクを減らせると分かったので、それでは実際に投資するときにはどうしたら良いでしょう?100社(あるいは500社でも1000社でも)の株を自分で買うのも方法ですが、手数料や手間隙を考えたら大変ですよね。 そういった手間を省いてくれるのがMutual Fundです。Mutual Fund というのは、さまざまな投資対象を証券会社などが1つのパッケージとしてまとめて販売するものです。例えば、100社の株に投資したいと思っても、個人ではなかなかできません。それなりの資金も必要ですし、何百社もの財務状況を評価して目的に合う100社を選ぶとなると至難の業です!Mutual Fund では Fund Managerがそういった仕事を引き受け、Fundの目標に合致する投資先を見つけ、資金を集めて投資します。多数の人(や組織)がまとめて投資するので売買手数料が(相対的に)節約できます。Fundの種類にもよりますが、こういった手数料すべてを合わせても投資額の1%以下のMutual Fundが多数存在します。このように、自分で個々に株を買うと大変なところを、まとめてやってくれて、しかもDiversifyができるのがMutual Fundです。 Mutual Fundはさまざまな人からお金を集めて、そのお金で投資対象を買います。投資対象はさまざまな為、Fund全体をShare(口数)に分けて販売します。Fund全体の資金を口数で割ったものがそのFundのPrice(1口当たりの値段。基準価格)になります。Fundは株などに投資するので、その株価が動けばFundのPriceも当然動くことになります。普通、Mutual Fundの取引は、その日の株取引が終わったときの価格で行われます。

Mutual Fundの種類

Mutual Fund には大きく分けて次の3種類があります。
  • Money Market Fund
  • Stock Fund
  • Bond Fund
また、上記の3種類を組み合わせたFund(TotalとかBalanced Fundとか呼ばれる)があります。

Money Market Fund

Money Market Fundは短期で安全な投資対象に絞ったFundです。企業や銀行などの間で発行される債券などに投資しています。特徴としてはFundの1口当たりの価格が常に$1に保たれることでしょう。この特徴のため、ほとんどSavings Account と同じような感覚で使うことができます。Money Market Fundの利益はDividend(配当金)という形で毎月、自分の口座に振り込まれます(これもSavings と同じ感覚)。良いMoney Market Fundを選べば、普通の銀行のCD並みの利率になります。実際、CDが投資対象になっている場合もあります。CDと違うのは、預入れ期間が決まっておらず、いつでも預け入れ/引出しが自由です。また、利率は毎日変動しますから、非常に高い利率のCDがあれば、特定の期間に限ればCDの方が有利になる場合もあるでしょう。私はSavingsの代わりとしてMoney Market Fundを捉えています。地元の銀行に預けておきたい額(いつでも引き出せるようにするため)を超えた分はすべてMoney Market Fundに預けています。多くのMoney Market FundはCheck Writing (小切手)、Wire Transfer(電信送金) 、Direct Deposit (雇用主からの給与の自動振込み)など、便利な機能があります。

Stock Fund

Stock Fund はその名の通り、株式に投資するFundです。株式と言ってもさまざまなタイプに分けられ、それに応じてStock Fund もいくつかのタイプに分けられます。Index Fund はその名の通りS&P500などのIndexと同じ株に投資するFundです。Indexとまったく同じ値動きなので、分かりやすいFundと言えるでしょう。 Value Fund はある程度安定した企業に投資し、Dividends(配当金)が利益の中心になるFundです。Dividendsは税法上、Ordinary Income Tax が掛かります。それとは逆に株価そのものの上昇を主に狙うGrowth Fund というのがあります。ハイテク株などはこの部類で、配当金は出さないけど、株価が上がるから儲かる、という仕組みです。Growth Fund は2000年まではいい成績が多かったのですが、それ以降はひどいことになっているFundが多いですね。いずれのFundでも、Capital Gains はOridnalry Income Taxではなく、Capital Gainとして課税されます。 その他に Industry Specific Fund(特定業界に投資する)やInternational Fund(外国株)、Aggressive Fundなどのタイプがあります。Mutual Fund の目的は、複数の業界に一度に投資してリスクを減らすためですから、特定の目的があるとき以外はこの手のFundはあまり選択肢になりません。

Bond Fund

債券に投資するFundを総称してBond Fund と言います。Treasury(国債)、Municipal(地方債)、Corporate(社債) Fund など投資するBondの種類で分かれている他、Index Fund、State Bond Fund(特定の州のBondのみに投資する)などがあります。Bondはまた、短期、中期、長期に分けられ、同じTreasury Bond Fund でも、どのくらいの期間の国債に投資するかが分かれます(一般に長期になるほど投機性が高くなる)。Bond Fundの特徴はTax Free(非課税)のFundがあることでしょう。Bondの種類によりFederal Tax(連邦税)が掛からないものと、FederaとState Tax(州税)の両方とも非課税になるものがあります。State Tax Exempt(州税が非課税)になるには、自分の住んでいる州のBondである必要があるので、このタイプの Bond Fund は州別になっています *3 。気を付けなければいけないのは、非課税だからと言って得になるとは限らないことです。非課税のBondはそれだけ魅力があるわけですから、価格は高く(利回りが低く)なります。例えば課税されるタイプのBondが5%の利回りで、非課税のBondが4%だった場合、自分の所得税率が15%の人は課税されても5%のBondの方が得になります*4。ですから、自分の税率で実質利回り(税引き後利回り)を計算して比べる必要があります。

その他のFund

その他のタイプのFundとしてはPrecious Metal(貴金属)、 Social Fund(環境にやさしい企業だけに投資する?)、REIT(不動産)などがあります。さらにStock、Bond、Money Marketを1つにしたFund(Balanced Fund、Total Fundなどと呼ばれる)もあります。これはMutual Fundに投資するMutual Fundで、例えばStock Fundを5割、Bond Fundを3割、Money Market Fundを2割と言うように違うタイプのFundを混ぜています。

Mutual Fundは安全か?

Diversifyとリスク分散

Mutual Fundに投資する理由は、1.株など投資を良く知らないので、専門家に任せたい、2.Diversifyするのに自分では大変だからまとめてやってもらえる、3.401kなどのTax Shelter(税金対策)、などになります。特にDiversifyという目的は大切で、例えば「ハイテク業界ファンド」などはまったくリスク分散になりません。複数のまったく違う業界の株に投資するからリスク分散になるのであって、特定業界に投資するFundはこれと逆になってしまいます。ただし、はっきりとした目的があるときは特定のFundも意味があるでしょう。例えばアメリカのFundだけでは心配なので、リスク分散の意味で海外に投資しているFund(International Fund、Emerging Fundなど)を持っておきたい場合などです。ただし、海外への投資は株価だけでなくCountry Rick(国自体のリスク)やExchange Rate Risk(為替リスク)などが伴います。 Diversifyすると言う事はリスクを分散して、少しでも安全に運用する一つの方法です。

元本保証

Mutual Fundは元本の保証はありません。もし、株価が急降下してしまえば、Mutual Fundの価格も一気に下がります。実際、2000年以降2003年頃まで、株式市場全体の下落傾向が続き、多くのMutual Fundが値下がりしました。せっかくDiversifyしても、1つの業界でなくほとんどの業界が値下がりする場面では、まったく歯が立たないわけです。ただし、2001年あたりは株価はBond Fundはかなり良い利回りでしたから、Stock Fundだけでなく、Bond Fundも組み合わせれば、Diversifyの範囲は広がります(それでも、同時安になってしまえばダメですが)。そういった意味で投資家としての自己責任が要求されることを留意する必要があるでしょう。
*1:日本でも端株として取引単位以下で売買されることがあるようですが、配当金の再投資をした場合などに限られるようです。
*2:これは私が勝手につけた意訳です。diversifyという単語そのものは動詞ですのでご注意を!
*3: すべての州にTax Exempt Bond があるとは限らないようです。
*4:5%x(1-0.15)=4.25%が実質利回り。