メインコンテンツに移動

投資の種類

投資と言うと普通は株や債券などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?こういった種類の投資は証券会社が扱っていて、宣伝もしているので「証券=投資」というイメージがあるかと思います。しかし、そういった Paper Assets = 証券 だけでは、これからの時代は十分ではありません。Paper Assets を理解し、さらにNon-Paper Assetsをポートフォリオに追加することで、より広範囲に投資したり、自分の得意な分野で効率よく、資金運用ができるでしょう。

証券の種類

まずは Paper Assets の種類を簡単におさらいしましょう。証券には大きく分けて2つの種類があります。1つは株式に代表される、会社などの組織の一部を保有するタイプです。株を買えば、株式に応じた割合でその会社の一部が自分のものになるわけです。もう1つは債券(国債や社債)です。英語ではIOU (I owe youの発音から)と言うこともありますが、その意味の通り、誰かにお金を貸してその人が Owe(返済義務を負う)ことにより、運用益を得る仕組みです。 証券を発行することは発行元の組織(政府や企業)にとって資金調達の手段です。組織を運営していくために必要なお金を一般の人から集める手段なのです。資金調達の手段であると言うことは Paper Assetsがもつ大きな特徴です。

株式

株は会社が資金を集めるために発行する証券で、株を買った人は株主になります。株主は会社の一部を所有しており、会社の経営に参加することができます。株式総会などで株数に応じて投票権があり、また配当金も株数に応じて分配されます。日本ではその他にも株主優待券などが発行される場合があります*1。 会社の経営にもかかわる株ですが、一般の人はそこまで考えることはなく、株価の値上がりと配当金を期待する、と言うことになるでしょう。しかし、株が会社の所有権の一部であって、株式会社が有限責任を実現するための方法であることは意識したほうがいいでしょう。株主は会社の経営を経営陣に任せ、もし会社がうまく行かなくなっても自分の投資した額しか損はしない=有限責任である、と言うことです*2。有限責任は純粋な投資をするためにはありがたいことですが、もし倒産や解散など会社を清算するときには、優先順位が最低に位置づけられます。従業員や債権者がお金を回収した後でないと自分が投資したお金は戻ってこないということです。普通は倒産したら債務のほうが多くなるので、株主にはお金は戻ってこないでしょう。 株はそういった会社経営のリスクを負う代わりに、会社が成功したときは配当金を受け取ることでリターンを得ます。また、会社が成功すると言うことは株価も高くなりますから、株を売ることでAppreciation(値上がり益)を得ることもできます。配当金も株価の値上がりも会社の成功次第であらかじめ決まっていないことも特徴です。成功次第では何倍にもなる場合があるわけです。

債券

IOUとも呼ばれる債券はBond、Notesなどいくつかの形態(と呼び方)があります。いずれの場合も、国や企業などがお金を借り、一定期間ごとに中間利息を払い(短期の場合は中間利息はない)、償還期限(Maturity Date)になったら、借りたお金を全部返す、というものです。債券発行の際に償還期限や利率は決まり、企業などの成功の度合いに応じて変わる、と言うことはありません*3。 企業が発行する社債の場合は、会社を清算するときの順位は株式よりも上です。会社を清算するようなことになれば元本すべてが返ってこないことも多いでしょうが、それでも株よりは回収できる可能性は高くなります。 債券の特徴としては、発行したときに買い償還まで保有するのなら、購入時点で将来の受取額が決まる、と言うことです。あるいは発行済みの債券を買う場合でも、償還まで保有していれば受取額は固定です。逆に購入後、市場で売却する場合はその時の時価で売ることになります。 債券の値段はその発行元の信用度合いと、市中金利で決まります。企業が発行元の場合、その企業が成功しているかどうかは直接債券価格に反映されません*4。その時の金利が債券価格に大きく左右されるので、株式とは違う原理で値段が上下します。また、国が発行する債券は信用度が高いとされていて、一般にリスクフリーと考えます*5

Mutual Fund

Mutual Fund は日本語では投資信託と呼ばれ、投資家から資金を集めて1つのFund(=基金)を作り、それを運用し、運用益を投資家に分配する、と言うものです。運用先は株式や債券が主で、間接的に証券に投資していることになります。Mutual Fundは個人では資金が少ない場合でも、たくさんの人(や組織)からお金を集めることで効率よく投資することができるようになります。 Mutual Fundは間接的に証券に投資していることになるので、その特徴やリスクは証券そのものと似ています(詳しくは後述)。名前が違っても Paper Assets であることに変わりありません。

Non-paper Assets

投資は証券以外にもさまざまな種類があります。ところが証券でない投資はあまり注目されません。特にアメリカと比べると日本人はそういう傾向があると思われます。「リスクが大きい」「管理が面倒である」「よく分からない」といった理由で証券以外の投資は敬遠されがちです。しかし、ポートフォリオの中にこういった投資を組み合わせることで、リスクを分散し、また将来のリターンを大きくする可能性のある投資ができるようになります。 アメリカで証券以外の投資が活発なのは、経済基盤の違いによると思われます。例えば不動産で言えば、全体の80%が中古であり、また、個人で他の人に貸すことも一般的に行われています。また、自営業を営んでいて、その事業をそのものを売買することも日本よりも活発に行われています。投資とはResource(何らかの原資、お金とは限らない)を運用し、それを膨らませ、大きくなった分を利益として回収する、という経済行動です。このResourceやそれを膨らませる手段がが証券だけではないことを理解すれば、自分にフィットした運用先が見つかるかもしれません。

不動産投資

アメリカでNon-Paper Assetsで一般的なのはなんと言っても不動産でしょう。自分で買った家を買い換えるとき、前の家を売ってしまわずに人に貸して利益を得る、ということは多くのアメリカ人が比較的簡単にできる不動産投資として注目しています。また、最初から投資目的で不動産を購入することも一般的です。そういった目的のためにローンを組むことも日本に比べれば容易ですし、不動産管理のノウハウを持った管理会社に日々のメンテナンスを任せることもできます。 不動産投資の特徴は、Paper Assets と違い、利益を得る方法が多岐にわたる、と言うことが挙げられます。例えば株の場合は配当金と値上がり益が利益を得る方法ですが、不動産の場合、家賃収入、値上がり益、節税効果、担保としての運用などで直接、または間接的に利益を得ることができます。また、不動産は証券と違い、資金調達の手段で発行するものではありません。住宅を建てたり商業ビルを建てるのは、人が住み、商業を営む、という直接目的のためですから、投資した資金の実態がはっきり見えます。 もうひとつの大きな特徴は、不動産の値段は固定されていない、と言うことです。証券の場合、同じ株ならどの株券でも同じ値段です。株券が違ってもその価値は他の株券と変わりません。ところが、不動産の場合は一軒一軒、その価値が違います。隣の家であっても、間取りや管理状態によって大きく値段が違うこともあります。また、値段はあって無いようなもので、交渉次第で変わります。株を証券会社と交渉して安く買う、ということはできませんが、不動産は交渉しないで買うことはあり得ないのです。

Small Business

SmallでなくてもBig Businessでも構わないのですが、アメリカでは投資対象としてBusiness(企業、自営業、営業権など)を捉える事があります。投資として大きな会社が新興企業を買うのは新聞にも載りますし、個人が投資として、例えばレストランを買う、ということもあります。ここでSmall Businessとして考えるのは、一般の人が莫大な資金がなくても投資可能であるからです。 レストラン、クリーニング屋、配管工など、地元に密着した商売をしている人から、丸ごとその商売を買うことは、Paper Assetsではできないタイプの投資になります。投資家として経営は他の人に任せることもできれば、積極的に日々の活動に関わることもできます。リターンとして考えられるのは金銭的なものから、顧客ベース、地元での信頼/信用、人とのつながりなど、お金で買えないものまで含まれます。

なぜNon-paper Assetsに投資するのか

人によって理由はさまざまだと思いますが、Non-paper Assetsに投資することにより、Paper Assetsでは得られないものが得られるのは確かです。金銭的に言えば、Paper Assetsよりも高いリターンを望める場合もあるでしょう。また、例えば今年2002年のように、株式市場が苦しんでいるときでも、不動産価格は地域により値上がりしています。つまり、違うタイプの Asset Class に投資することで、1つの市場では得られない利益を得ることができるのです。不動産やSmall Businessなどは株と違い、資産の価値を自分で高めることもできます。住宅なら改築/増築してより価値のある家にしたり、レストランならおいしいメニューを提供することで多くのお客さんが来てくれる様になります。自分で投資先の価値を高められるのは、Non-paper Assetの大きな特徴でしょう。 もう1つ、Non-paper Assets の魅力として私が考えているのは、小さな投資であっても、それがビジネスとしてのすべての要素を含んでいることがあげられます。例えば人に貸すことを前提にローンを組んで家を買ったとしましょう。すると会社経営を行うのと同じような要素を勉強できます。毎月の出納管理、借入額の返済、税金、保険、テナント募集(どんなビジネスでもお客さんあってこそ)、リース契約、利益の計算、突発事項への対処などなど。こういったことを通して、Cash Flow、Balance Sheet、Marketing などビジネスのさまざまな要素を勉強できます。これらの本質を理解すればさらに大きな投資でも自信を持って進められるようになるでしょう。

自分への投資

私は自分自身に対する投資も忘れてはならないと思ってます。私はソフトウェアエンジニア(これが本職)として、プロフェッショナルとして仕事をしていくうえで、新しい技術を身につけたり、違った視点を持つために、時間とお金を投資しています。これは収入を上げるためでもあり、自分が納得できる仕事をしたい、と言う自己満足のためでもあります。そして、投資や資産運用そのものを勉強すると言う投資もあります。 いずれも、時間とお金をかけて投資することで、自分から生まれる価値が、将来大きくなって返ってくると思っています。
*1:株主に対するこういった現物支給はアメリカでは一般的でないと思います。
*2:逆に無限責任とは、会社がうまく行かなくなって借金が増えたら個人の資産を使ってでも返さなくてはならないことになります。
*3:転換社債など、株への転換が可能なものもあるので、あくまでも普通の債券の場合は、ということです。
*4:その企業の信用度合いとして間接的に影響することはあります。
*5:アメリカでも日本でも信じられないくらいの借金があるわけで、これをリスクフリーと呼ぶかどうかは議論がありますが。。。