Money Market Fund
Mutual Fundで資産運用を始める場合、まずはMoney Market Fundに一旦資金を入れるのが便利でしょう。Money Market Fundは銀行の Saving と同じような感覚で預け入れ、引出しが自由です。元本保証は無いものの、普通の銀行より1~2%くらい利率が高く、余剰資金を入れておくのに適しています。Money Market Fund Accountを開けば、そこから他のFundへの資金移動が簡単になるので、次のFundへのステップと考えれば良いでしょう。
選び方のポイント
- Expense Ratio / Yeild
- Type
- Minimum Investment
- Features
Money Market Fundを選ぶに当たって一番気になるのはやはり利率です。Money Market Fundは短期の債券と言う狭い範囲でしか投資しませんから、どんなにがんばっても、Fund毎にそれほど利回りに差がつくわけではありません。ではどこで利回りに差が付くかというと、すばり Expense Ratio です。Expense Ratio とは運用資金の何%が経費としてFund会社(あるいはFund Manager)に支払われるか、ということです。このExpense Ratio が低ければ低いほど、投資家への支払い分が多く残るわけです。そこで、Money Market Fundを見るときは、Expense Ratioをまず確認してください。このExpense Ratio を見るだけで、0.5%くらいの差があることが分かるでしょう。
次に考える事は、Tax Exempt(非課税)かTaxable(課税)かの違いです。州のMunicipal Bonds(地方債)に投資しているFundはTax Exemptになります(自分が住んでる州のFundの場合)。税金がかからない分、利回りは低いので、Taxableと比べるときは自分の税率を考えて、税引き後の実質利回りで比べます。注意点としてはTax Exempt Fund(Tax-Advantagedなどとも呼ばれる)といっても、課税される場合があることです。Fundは色々な投資対象に投資するので、全てが非課税の投資先で無い場合もあります。普通は自分のTax Bracket が高い場合に Tax Exempt を選ぶと有利になります。
利回りが良いFund見つかったとしても、Initial Minimum Investment(最低初期投資額)に見合う現金が無いと投資できません。どの投資会社も、大口の顧客には利回りが良いFundを別に用意していて、全く同じ名前のFundでも利回りが良くなっています。$100,000以上投資する余裕のある人はこういったFundを探して見るといいかもしれません
*1。また、Fund会社によってInitial Minimum Investment の額は違いますし、同じ会社でもFundの種類によって違う場合もあります。利回りがいいものはそれなりの初期投資が必要なものもありますので、確認しましょう。また、口座を開いた後、最低いくら、口座に保持しなければいけないかという額(Minimum BalanceとかLow Balanceなどと言う)も確認しましょう。その額を下回ると口座維持費を取られます。
便利な機能は必要?
Money Market Fundには銀行のCheckingと同じような感覚で小切手が切れるようになってたり、電信扱いで送金できたり、場合によってはATMカードまで発行してくれる場合があります。これらの機能は便利な反面、気楽にお金を引き出しやすい、という要素でもあります。Money Market Fundにお金を移すのは運用するためであって使うためではありません。ですから、「お金を使うのに便利な機能」は無いほうがいい位です。入金しやすく出しにくい、だけど非常時には出せない事はない、というぐらいが理想ではないでしょうか。私の場合は、具体的には、小切手は最低額が高いもの(例えば$250以上の金額で無いと小切手が切れない)、送金は不要、ATMカードも不要、ただし入金しやすいように、電信の入金は受け付けるものを選びました。さらに選択すれば毎月の自動積み立てもできるといいでしょう。
Stock Fund
なぜStock Fundに投資するのか
Stock Fundに投資する理由はなんでしょう?いつでも現金化できる投資であれば、Money Marketが向いてますし、できるだけ元本割れのリスクを減らしたいなら、国債が良いでしょう。株、もしくはStock Fundに敢えて投資する理由は、リスクを取ってもいいから、ハイリターンを狙うため、ということになります。Stock Fundは Mutual Fundとはいえ、Money MarketやBond Fund
*2に比べれば、価格の動きは激しく、一旦損をしたら元本を取り戻すのに何年も掛かるかもしれません
*3。長期的に見ればアメリカの株価は常に右肩上がり、しかもインフレ率を越えています。しかし、このトレンドが今後も続く保証は全くありません。日本を見てみれば、いくらMutual Fundで株式全体に投資しても、ダメなものはダメ、という状況もあります。
しかし、それでも私はポートフォリオの中にStock Fund(もしくは株式)を組み入れるべき、と考えています。その理由は2つあります。1つは、Dollar Cost Averaging(ドルコスト平均法)などの手法を使って、短期的なトレンドを平均化し、長期的なトレンドを味方につけることができるからです。短期的に見れば損をすることがあっても、コツコツ、長期的に続ける事で、株式市場の値上がりの恩恵を受ける事ができます。もう1つの理由は、株式市場に
投資しないリスクもある、ということです。投資しなければ「機会損失」のリスクがある、と考えるわけです。何十年かのスパンで考えて、「株式に投資しておけば良かった。今ごろ$xxxくらいになってたはずなのに」なんて思いたくないですよね。
長期投資としての Stock Fund
それでは具体的にどのStock Fundを選んだらいいでしょうか?もしStock Fundに投資したことがなければ、次のような特徴のFundを選ぶといいでしょう。
- No Load Fundであること
- Expense Ratio が低い
- 保有株数が多い
- Turnover Ratioが低い
詳しくは下記の
No Load Fundで述べますが、必ずNo Load Fund(販売報酬を払わなくて良い)にしましょう。Load はFundを買ったとき(Front-End)、売るとき(Back-End)、あるいは保有期間中(12b-1)に取られるタイプがありますが、いずれの場合も利回りがその分悪くなります。No Load Fund ならこれらの費用がかかりません。
Expense Ratio、つまりFundを管理するための費用が少ないFundがいいのは自明ですね。経費は利回りから自動的に引かれます。この費用が少なければ少ないほど、自分の取り分が多くなります。Expense Ratio はどんなに高いものでも1%まで、できれば0.60%以下のFundがいいでしょう。
1つのFundを買っただけで何百社もの株を持っているのと同じ事になるのがMutual Fundです。保有数が多いほうが、Diversificationの効果は大きくなります。ですから、保有している株数が最低でも数百はあるFundにしましょう。S&P 500を指標とするFundなら500社の株を、Wilshire 5000なら3000社以上の株
*4を買ったのと同じ事になります。個別株を買うのと比べたら、Diversifyを実現するのにこんなに楽な方法はありません。保有している株数が少ないとリスクを分散する事ができません。
Turnover Rateが低いFundを選ぶ目的は税金の抑制効果です。株を売ると、Capital Gain/Lossが発生します。Gainが発生した場合には、それに対して税金(Capital Gain Tax)が掛かります。このCapital Gain TaxはMutual Fundそのものを売らなかったとしても、Fundが持っている株を売ってGainが発生した場合に、個人が支払わなければなりません。自分では長期で投資しているつもりでも、Fundが頻繁に株を売り買いしていれば、それは短期的に違う株に次から次へと乗り換えるのと同じ事になります
*5。1年間でFundの保有株をどのくらい入れ替えたかをTurnover Rate(回転率)で表します
*6。Turnover Rateが低い、つまり株の入れ替えが少ないければ、税金を払う必要が少なく、長期的に再投資をした際の複利効果が高くなるなります。
Bond Fund
Stock Fundに投資する目的は長期的に投資してハイリターンを狙う、と言うものでした。では、Bond Fundに投資する目的はどういったものでしょうか?Bond Fund は比較的リスクが少なく、長期債/短期債をうまく選ぶことで、段階的にリスク/リターンの割合を調整できます。非課税のFundもあり、連邦税(所得税)や州税の課税率に応じて節税目的で使うこともできます。つまり、Bond FundはStock Fundでは実現しにくい、
資金計画の調整役と言えます。
Bond Fund の種類
Bond Fund は投資するBondの種類でそのままグループ分けされます。次のような特徴でグループ分けされます。
- Issuer(債券発行元)
- Term (期間)
- Grading(格付け)
Issuer(債券発行元)
Issuerは主に国(Federal, Treasuryなどの名前がつくFund)、地方自治体(Municipalや州の名前がつく)、および企業(Corpration)に分かれます。国が発行する国債は一般に最もリスクが少ないBondとされ、利回りもその分低くなっています
*7。T-Bill, Note, Bond に投資します。利回りの一部は州税が非課税になる場合もあります。Municipal Bondは地方債で、州やCounty(郡)が発行します。通常、自分が住んでいる州のBondは連邦税、州税ともに非課税になるので、州ごとにFundが分かれています。例えばマサチューセッツ州の地方債に投資するFundはMA Tax-Exempt Bond Fundなどという名前になります。自分が住んでいる州のFundであれば、非課税になります。Corporate Fund は企業が発行する債券に投資します。
この他に上記のIssuersを組み合わせたIndex Fundもあります。また、Corporate Fundという名前でも100%、企業債に投資するわけではなく、Treasuryにも投資している場合があります。その他のIssuerとしてFederal Agency(Treasuryでない債券)やGovernment National Mortgage Association (GNMA)の発行する債券に投資するFundもあります。
発行元によって、それぞれのFundの特徴が決まります。国債であれば、安全(と言われている)な運用を、地方債は非課税が魅力、企業債は格付け(Grading, Bond Rating)によって安全なものから、リスクがあるがハイリターンを期待するFund (High Yield = Junk Bond)まであります。
Term (期間)
Bond Fundは投資する債券の償還期限によってShort-Term(短期)、Intermediate(中期)、Long-Term(長期)に分かれます。短期であればBond自体の価格の上下が少なく、利回りは少ないですが、元本割れリスクも少なくなります。長期になればなるほど、そのときの市場動向次第でBond自体の価格が大きく上下し、Bond Fundの価格もそれに合わせて上下します
*8。
期間とリスク/利回りの関係 | Short-Term | Intermediate | Long-Term |
---|
リスク | 低 | 中 | 高 |
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利回り | 低 | 中 | 高 |
---|
Bond自体の価格は金利が下がると上がり、金利が上がると下がります。金利と逆の値動きをするわけです。そういったBondに投資しているBond Fundも同様な値動きになります。短期間であればBondが発行された時点の金利と、現在の金利の格差が少なく、値動きは小さくなります。ですから、短期のBondはリスクが少ないのです。逆に長期のBondであれば、金利が将来にわたって上下するリスクがあり、それにつれてBond価格も上下します。その分、リスクが増えるわけです。
Grading(格付け)
Bondは格付け機関(有名なのは
Moody's Investors Serviceなど)で格付けされています。この格付けはその債券の利息がきちんと支払われるかだけでなく、元本は戻ってくるか、という信用度をあらわします。Bond(やBond Fund)を見るときはついついその「利回り= Return
on Investment」に気を取られますが、Default(債務不履行)になって損をしないように「元本そのものが返ってくる= Return
of Investment」も重要です。元本が返ってこなければ利回りを気にしても仕方ありません。普通はStockよりもある程度、安心して投資できる(かも知れない)という期待の元にBondやBond Fundを選ぶ場合が多いと思いますので、ここで元本割れリスクのある、格付けの低いBondに投資する際は注意が必要です。
Bond Fund のほとんどは、格付けが上位の優良債券に投資しています。しかし、Fundの中には、ハイリターンを狙って格付けがそれほど良くないBondに積極的に投資するものもあります。大抵はFundの名前に「High Yield」などのハイリターンを狙っていることを示す言葉がついています。High Yield と言えば聞こえは良いですが、Junk Bond とも呼ばれる格付けの低いBondに投資するFundですから注意が必要です。自分がどんなFundにどのような目的で投資しているか、しっかり確認してください。Fundがどういった格付けのBondに投資しているかはProspectus(目論見書)やウェブサイトで確認できます。
その他のFund
上記の3種類以外に特定市場に投資するタイプのFundがあります。ごく狭い範囲の市場や、特定の業種に限って投資しますから、そのFundだけを見ればMutual Fundが得意とするところの
Diversifyから外れてしまいます。しかし、StockやBond Fundでは投資できない業種をカバーできるので、他のFundと合わせて持つことで、
ポートフォリオ全体としてDiversifyを実現するためには役に立ちます。そういったFundをご紹介しましょう。
不動産関連
不動産に関連するFundにはREIT FundやGNMA Fundがあります。Real Estate Investment Trusts = REIT(リートと発音)は、アパート、貸しオフィス、ショッピングモールなど賃貸物件を保有し、そこから家賃収入、リース収入、キャピタルゲインなどで利益を得ます。REIT Fund はいくつものREITを保有しDiversifyを実現します。REIT Fund は不動産自体を保有する手続き上の煩わしさがまったくなく、最も簡単に不動産に投資する方法です。
REIT Fund は不動産へ投資しますから、その値動きは、株式やBond市場と違う動きになります。近年
*9の株やBond市場の低迷とは対照的にREIT Fund は不動産市場の活況を反映して高いリターンを実現しています。Diversifyするために株やBondと合わせるといいでしょう。
GNMA Fund や Home Finance Fundなどは広義には債券への投資と考えられます。例えばGovernment National Mortgage Association = GNMA (Ginnie Mae = ジニィメイと発音)は政府系の住宅ローンへの投資です。ローンの発行元はお金を貸したあと、すぐにお金を回収するためにローンそのものを債券化して売りに出します。こういった債券化されたローンに投資するFundも融資先が不動産ですので、StockやBondと違う値動きになります。GNMAなどの機関から個人が債券を買うにはまとまったお金(最低3万ドル)が必要ですが、Mutual Fundとしてなら小額から投資することが可能です。
貴金属
Precious Metals、つまり金、銀、プラチナ、ダイアモンドなどに関連するFundです。貴金属市場はその需要と供給で値段が大きく変動し、投機的な要素が強いのが特徴です。金だけに限っていえば10年前後値段が下がりつづけた後、最近になって高騰し、これらに投資するFundも大きく値段を上げています。他の市場との連動性がないのでDiversifyはできますが、そのVolatility(上下動の激しさ)のため、予測することも難しく、堅実な投資には向いていないでしょう。
貴金属のMutual Fund は貴金属そのものに投資するだけでなく、関連する企業に広く投資します。企業の株式を購入しますから、Stock Fund の特性も部分的にもっています。そのため、Turnover Ratio などStock Fund と同じ指標に注意する必要があります。
Fund会社の選び方
もしすでに証券会社に口座があるなら、Mutual Fundもその証券会社から買えます。自社のFundだけでなく、大抵の証券会社は他の会社のFundも買えるようになっています。またFundの運営会社から直接買う方法もあります。大手のFund会社は証券会社でもあり、株や債券の売買もできますから、(必要があれば)その会社だけでPaper Assetsへの投資が全てできます。これからFund会社を選ぶなら、次の基準で選ぶと良いでしょう。
No Load Fund
Mutual Fund にはLoad FundとNo Load Fundがあります。Load(=Commission)は日本では「販売報酬」などと言われ、そのFundを売ったセールスパーソンへの
ご褒美です。LoadはFundに投資した額からすぐに引かれるもの(Front-End Load)、引き出すときに引かれるもの(Back-End Load)、運用中に引かれていくもの(12b-1 Fee)があります。これらのLoadのいずれも、運用成績(=利回り)とは
全く関係なく取られていきます。「Financial Advisor」などの肩書きを持つ人がその人の投資目標などに合わせてアドバイスを提供し、最適なFundを選んでくれる、という建前です。そのアドバイス料がLoadと言うわけです。
No Load FundはLoadを全く取りません。購入するときもお金を引き出すときもLoad、つまり売ったセールスパーソンへの報酬はありません。その代わりNo Load FundはLoad Fundのようなアドバイス(実際にはセールストークですが)をする人はいません。自分でFund会社のWebサイトや雑誌などからどのFundが良いか調べて、自分で選びます。自分で選んで自分で買うので、販売報酬は必要ないのです。
No Load Fundの中にはFundに不利になるような売買をできるだけさせないために、条件を満たしていないときは手数料を取るものがあります。これらの手数料は運営経費をまかなうためのものです。よくある例は投資を始めてから一定期間(半年~5年間)経たずに引き出す場合は手数料を取る場合です。長期で運用するならこういった手数料があるFundを選ぶのも良いでしょう。Fundに不利になる売買をする人が減るので自分の利回りが良くなります。また、短期で引き出す可能性があるならこういった手数料のないものを選ぶと良いでしょう。
それではアドバイスを受けてLoad Fundを買うのと、自分で調べてNo Load Fundを買うのと、どちらが良いでしょう?答えはずばり
No Load Fund です。
Load Fund を買う意味は全くありません。理由はいくつかあります。Loadを取るか取らないか、というのはMutual Fundの運用利回りと全く関係ありません。Loadを払ったからと言って将来の利回りがよくなることはないのです。またLoadを取るFundの場合、売る側の原理でアドバイスをするので、自分たちに本当に最適なFundを選んでくれるとは限りません(利害の衝突 = Conflict of interest)。相手はあくまで「セールス」で売っているので、いくら購入する人の将来にとって良いものであっても手数料が入らないFundを売るようなことはしません。さらに、これからの時代は、こういったアドバイスが必要であってはいけません。自分の判断で人に頼らずに金融商品を選べるようになる必要があります。そのため、Mutual Fundの基本程度は理解していないと損をしてしまうのです。
大手のMutual Fundを選ぶ
Mutual Fund は多くの人からお金を集めてまとめて投資する事によって経費を低く抑え、効率的な運用ができます。このため、Fundのサイズが大きくないとその効果がなかなか出ません。FundのサイズはNet Asset(時価総額)で表されます。$100 Million以上のFundなら理想的でしょう。
Fundに投資する際は、1つのBalanced Fund(株と債券を合わせたFund)か、いくつかのFundを組み合わせてAsset Allcationを実現します。また、節税のために自分の住んでいる州の Municipal Bonds に投資するFundがあると便利な場合もあるでしょう。株式はIndex Fund一つで足りるとしても、ある程度は柔軟に自分のポートフォリオを組めると何かと便利です。つまり、それなりのFundのバラエティがある会社がいいでしょう。
上記の条件を満たす会社であり、またFund毎の注意点(Expense RatioやTurnoverなど)を満たすFundとなると、必然的に大手のMutual Fund会社になります。大手のMutual Fund会社は自社のFundだけでなく、他の会社のFund、個別株、債券も扱っています(必ずしも必要ないですが)。また、オンライン取引、自動積み立てなどのサービスも充実しています。
いくつかの大手Mutual Fund会社へのリンクを示します。これらの会社以外でもよい会社はあると思いますので、自分でそれなりにリサーチ/比較して見てください。