株市場全体で見ると、Dividend Yield(配当利回り)のレベルには、その時点から将来にかけて見た株の長期ターンの風見鶏のような部分がある。もちろん、ごく大まかな目安でしかないが、一般にDividend Yieldのレベルが高い時は将来的に高いリターンが期待され、低い時には、あまり大したリターンは期待できない・・・というのが歴史的パターン。
このEconomist誌のグラフは(元記事はここ)、1926年から2000年まで、各年のDividend Yieldを高いものから低いものまで5つのブロックに分けて、それぞれの年から10年間の株の年間平均実質リターンがどれぐらいだったかを見せている。確かに、Dividend Yieldと株リターンの間には、厳密ではなくても大まかな相関関係があるのが分かる。
それもそのはず、ロンドン・ビジネス・スクールの教授達(Dimson, Marsh, Stauton)のデータ分析よると、1900~2011年の米国株の実質年平均リターンは6.17%、そのほとんどはDividend Yield(4.26%)とDividend Growth(1.37%)から来ているという。Dividendに関係の無い株価の動きは、年0.56%の貢献しかない。
金融ニュースは株価の上下に焦点を当てるが、株市場の長期的リターンに確実な足跡を残すのは配当とその成長ということ。
今、米国株の長期的将来を考える中で気掛かりなのは、現在のDividend Yieldが歴史的に見て非常に低いこと。歴史的中央値が4.3%だったのに比べると、現在のDividend Yield 1.94%(2012年8月28日現在)はその半分以下。
このチャートでS&P 500のDividend Yieldの歴史的変遷を見ることが出来るが、このDividend Yieldは実は1990年代の後半辺りから前代未聞の低ゾーンに陥ったまま今に到る。Dotcomバブルのピーク2000年8月に記録された1.11%という歴史的最低値よりは多少ましになったものの、まだまだ低い。
(Dividend Yieldが歴史的平均値に回帰するかというと、これも様々な説がある。それも、配当が上がって平均回帰するならよいけど、株価が下がって平均回帰する可能性は、考えるだけでも胃がキリキリと痛み出す。だからといって「株はもう駄目」と予言するつもりもないし、「株を売りましょう」とか呼びかけるつもりは毛頭無い。株相場の予測なんてものは、どうがんばっても水物なのだ。)
というわけで、現時点のDividend Yieldのレベルを歴史的パターンに照らし合わせて見る限りでは、アメリカの株リターンの長期的将来はあまり明るくない。少なくとも、80年代から90年代のように株価がググっと伸びてリタイアメント・ポートオーリオを救済してくれるといったシナリオはあまり期待できないかも。
この手の統計は数字に騙されないようにするのが難しいですが、
Nobu 2012/08/29(水) - 15:30この手の統計は数字に騙されないようにするのが難しいですが、この記事は面白いですね。平均の利回りなどもDividendを再投資した前提になっていることが多くて、判断が難しいです。それでも、今の状況からするとアメリカ株式が冬の時代に入って今後の利回りが見込めない、というのはすごく説得力があります(そんな気がします)。
>Nobuさん Nobuさんも、米国株の将来の利回りには楽
ポピー 2012/08/29(水) - 21:12>Nobuさん
Nobuさんも、米国株の将来の利回りには楽観的ではないんですね。
そうそう、データ構成やデータ・スパン、平均の計算方法なんかで、出てくる値も大きく変わったりするんですよね。
ロンドン・ビジネス・スクールのデータは、配当再投資が前提です。エコノミスト誌のデータもおそらくそうじゃないかと思います。
今頃になって気付いたんですが、日本人の方だと、バブル後の日経の低迷を見ているから、色々理屈をこねるまでも無く、米国株低利回りの時代というのも想像しやすい・受け入れ易いのかもしれませんね。
確かに日本を見てたから、アメリカもそうなってもおかしくない
Nobu 2012/08/30(木) - 14:06確かに日本を見てたから、アメリカもそうなってもおかしくない、と思える(そういう考えを受け入れられる)のかもしれません。
「日本みたいに・・・」と言っただけでも、「アメリカは日本と
ポピー 2012/08/31(金) - 00:26「日本みたいに・・・」と言っただけでも、「アメリカは日本とは違う!」と防御姿勢になりなすいアメリカ人とは、ずいぶん違いますよね。
へえ~!90年代からそんな状況だったんですね。。。 今のア
Chee 2012/09/01(土) - 20:26へえ~!90年代からそんな状況だったんですね。。。
今のアメリカ、どうしても日本と重なって見えてしまいます。
時々思うのですが、日本のバブル後って、あれでも結構うまい軟着陸だったのかな?って。バーナンキさんもその辺は詳しいでしょうし。。。なんか同じ展開になる気がしてなりません。
金利を上げるに上げられない状態になる。
物価はインフレなのに、量も質も落ちていき、なんとなく暮らせてしまう。
世界は均質化していくと同時に、文化的にはつまらなくなっていく。
その中で、なぜかITだけがやたらと発展するけれど、これもそのうち価格崩壊していく。
なんだかんだ言って、都市部に富が集まりやすい環境は変わらず。
でも、儲かる株は儲かる。いつも通り。で、やっぱりそんなのにうまく投資するのは難しい。
って感じでしょうか?
あと予想しようがないのは、通貨の影響ですかね?
中国との関係があと何十年も同じと思えない。。。
最近、もう先のこと考えるのやめちゃってます。><
>Cheeさん 90年代後半から、株相場が上がりそうでなか
ポピー 2012/09/04(火) - 07:52>Cheeさん
90年代後半から、株相場が上がりそうでなかなか上がりきらないのは、Dividend Yieldが追いついていないからという人もいるようですね。
バーナンキ議長は、記者会見の度に日本との比較に付いてつっこまれてますよね。日本のバブル崩壊後に日銀が金融緩和政策を徹底しなかったと彼は批判的な意見を言っていたので、余計風当たりが強いようです。
アメリカのバブル崩壊後は、日銀の立場にはもっと同情できるけど、アメリカでは連銀の徹底した金融緩和はデフレ・スパイラルを防いだから、日本とは違う・・・というのがバーナンキ議長の意見みたいです。
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